＊＊＊　豪快な祭の代表　大原はだか祭　＊＊＊
黒潮が踊る海の街　千葉県大原町

祭りと言えば「きっぷのよさ」が売り物ですが、その代表的な祭を挙げるならば、その筆頭に千葉県大原町で9月23～24日に行われる“はだか祭”がくるのではないでしょうか。太平洋の黒潮がぶつかる海岸で、荒波の中での神輿が揉み合う姿は勇壮そのものです。
この祭は 160年前の天保年間の絵馬に、このはだか祭が描かれていますので、それ以前に祭礼のしきたり、組織ができていたことがうかがわれます。江戸時代の当時は、これといった娯楽もなく住民にとっては、年一回の最大の楽しみとなっていたといわれています。また、漁師、農業ともに忙しく住民の気持ちもバラバラであったところから、意思の疎通をはかる上で、集団行動となるこの祭が重要な役割を果たしたきたともいわれています。その裏付けとして、神輿渡御が無事に終わると早飛脚で大多喜城主に伝令があったと書き残されているそうです。

18基の神輿が波打ち際で揉み合う

さらに第2次大戦中、祭騒ぎどころではないのでは……と、氏子が警察に自粛を申し入れたところ「士気を鼓舞するのによい、大いに活発にやろうでないか」と、ハッパをかけられたエピソードも残っています。こうした歴史的背景からか、地元の住民の肩の入れようも尋常ではありません。昔から「何を質に入れても祭の支度だけはととのえる」といわれており、現在でも同じような話があります。私事ですが、知り合いのある部長さんに「重役会議があっても、この二日間は風邪を引くことになっています」と、聞かされたことがあります。
祭は23日の10時に、大原地区の神輿10基が親神である鹿島神社に参集します。法楽施行後の午後に大原漁港に向かいます。大原近隣の地区からも同様にして神輿8基が向かい、その漁港で18基が集結します。五穀豊穣大漁祈願をした後、午後3時頃から三大見どころのメインとなる「汐ふみ」行事に移ります。漁港のすぐ横にある砂浜の大原海岸で、重い神輿が飛び跳ねるほど振り回されます。数基が揉み合う様は、勇壮で豪快そのものです。歓声と波打つ潮の音が入り交じり、見学者にも強烈な印象を与えます。
ここでのカメラマンは勇を持して、海のなかに入っての撮影となりますから、防水対策は万全でなければなりません。

哀調ただよう大別れ式の唄

汐ふみ後、商店街を唄い踊り、揉み合いながら大原小学校に向かいますが、これが見所の第二です。祭一色に町が塗りつぶされます。小学校の校庭に入った神輿は、力の限り駆け巡ります。この様も戦国時代の戦場を思わせます。神輿を投げ上げ、受け止めるところはまた見ものです。
提灯に明かりが入る頃になると、この喧騒が一変して哀調に変わります。「若けもんども、別れがつらい、会うて別れがなけりゃよい」と別れを惜しむ唄が流れて大別れ式になります。第三の見どころです。大別れ式は午後6時30分頃で終わり、その後、神輿は帰路となりますが、再度、町中を午後10時頃まで練り歩きます。
24日は午後3時頃、大原八幡神社に参集して自由渡御を行い、その後は23日と同様に大別れ式が行われます。（写真：大原町提供）
［交通アクセス］
東京駅から外房線 特急で1時間30分　大原駅下車
直通の快速もあり（但し本数が少ない）　千葉駅で乗り換えも可
［問合せ］
大原町観光協会　0470-62-1111