修理人たぐちの徒然日記コラム・ギャラリー
2007.09.10
「ご不要のカメラをお売り下さい」なる広告を新聞に掲載をした。
高齢なご婦人が、近所の方に付き添われ「広告を見ました。巣鴨よりタクシーで来ましたのよ」と話し始めました。
ご主人を亡くされてから思い出あるカメラを処分できず、押入に仕舞いぱなしでした。
ご主人との思い出を撮り続けたカメラを処分するのは忍びなかったようです。
大阪千里での万国博覧会は「全てのパビリオンを見たのですよ」、夫婦の楽しかった思い出話を聞かされ「そう言えば、お店の商品の配達も頼まれました」と笑顔で話されました。
今は閉店した池袋店で購入し、広告を見て「きむら」へ託そうがご婦人の決断でした。
「その時の店長は岡田さんでした。元気にしてますか?」
思わぬ同僚の名前に「岡田は退職しました。
今週末、趣味の蕎麦打ちの件で岡田さんと会います。」
「ご尊顔を撮らせてください」と撮影致しました。
お持ち頂いたカメラは状態が悪く、絞り不良やカビが生えておりました。
そして、「きむら」で購入頂き「きむら」に託すことを決断したご婦人の気持ちと蕎麦友である岡田さんが販売したカメラが私の手元に来たのも巡り合わせであり、他社に依頼するなどとんでもない。
自身の手で何とか蘇らせたいと誓いました。
手入れが終わり、ご夫婦思い出のペンFTが蘇りました。綺麗な勇姿ですね!技術者冥利につきます。
岡田さんには事の顛末を話、ご婦人の画像と連絡先を渡しました。
その後、当時の店のメンバーの集合写真を含む、彼の近況を報告した手紙を送ったと自宅にメールが届いておりました。
私の修理履歴の中に想い出ある出来事を与えて戴いたのと「きむら」に託されたご婦人の願いに感謝致します。
日本橋店中古売場 田口由明
あなたの大切なお写真の現像・保存・プリントは写真専門店カメラのキタムラにおまかせください。