修理人たぐちの徒然日記コラム・ギャラリー
2007.10.09
通りの向かい側のビルの一階に行きつけの床屋がある。
店主は、昭和42年全日本理容競技選手権大会優勝の経歴を持つ。
町に床屋は数数あれど、之ほどの腕を持つ方に髪を刈って貰う機会に会うのは難しい。
「男は床屋」だで「松井式すかし刈り」が謳い文句である。
店主の髪は少なくなり、自身の髪で宣伝できないと破顔で語ってくれた。
そんな店主は、オッ~と言う趣味を持っている。
作品は工芸品とも言える出来映えでただただ感嘆するのみである。
山に入り、自らの目で厳選したカヤから作った「鮎タモ」は、使うのを躊躇する出来映えであり、更に籐で文様を浮き上がらせた懲りようである。
他に、川を移動の際に囮鮎を入れる通筒と桃の種のお守りがある。
(訳あってお見せできないので足を運んで貰いたい。)
オッ~、と鮎釣り道具のミニチュア版迄作ってしまった。
ここまで来ると病気である。病は治るが、この病は治らない。
手作り耳かきは十八番で、素材は、すす竹が一番との事。仕上げには紙ヤスリ100番から始め最後は1200番で整える。
掻き皿が内側になっているのは、繊細な耳穴を傷つけないよう素材の柔らかさを生かした作りになっている。
道を究めるまで愛妻の耳をどれ程掻いたかは知るよしもない。
商品の短冊は、常連客が意気に感じ手作りしてくれた物で、店主が愛されているのを物語っている。
願わくば、膝枕でと思うのは私だけだろうか?
日本橋店中古売場 田口由明
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