修理人たぐちの徒然日記コラム・ギャラリー
2009.01.08
入院患者の中に面白い写真機を見つけた。
闇夜の動物の目の如く金色に輝くファインダーを冠しているトプコン35Bで1955年製である。面白そうな写真機である。出会った事も触ったことも無い未知の写真機。
座金を外せばシャッターが分離した。
前玉かと思いきや、ネジピッチが荒い。レンズ交換が出来るのか?驚きである。
調べれば8cm f5.6 が用意されており、このレンズが揃っていれば、正に珍品になったに違いない。
シャッターは、ご多分に洩れず持病の羽根油に侵されていた。総分解して、洗浄し、油分の補充をする。手を入れれば小気味よい音色が蘇る。
もう一つ、重大な問題が残されている。ヘリコイドが異常に重いのだ!
グリス交換の必要があるのか?兎も角、分解をしようと被写界深度環を外す。
(赤丸の3本のネジで外れる)
ありゃ~ヘリコイドはサクサク動くでは無いか。
原因は、外した被写界深度環と距離環の滑走面にありました。塗布されたグリスの固着でした。洗浄後、新たにグリスを塗布すれば滑らかな動きをする。
面倒なヘリコイドのグリス交換をしなくて助かった。
軍艦部を外すに当たり、外した部品達。
軍艦部を外すと不思議だった距離目盛り環の謎解きが出来た。
もう一つ距離計を動かす機構が隠れていたのです。
何故なんだろう?そうなんです。8cmの交換レンズ用の距離計だったのです。
正規のヘリコイドを無限位置にして、距離計目盛環で合致調整し、その目盛りを読み取り、8cmレンズに転記してレンズのピントを導くのです。
正規のヘリコイドを使用する時は、望遠用を無限位置(黄色矢印)にしておく。
現代と違い、時がゆっくりと流れる時代の機構が微笑ましい。
チョット前まで写真は芸術であった。今では、其れをゼロとイチが作り出す世の中だ!
岡本太郎が吠えるかも知れない。銀塩は爆発だ。。。そして、機械式は物作りの原点だ!
編集後記
今朝、ブログ記事をアップしようとしましたら、ウインドーにカメラ見当たりません。
同僚に確認をしますと、昨夜販売をしたとの事でした。
手を入れたカメラを求めている方がおられたのは喜びです。
日本橋店中古売場 田口由明
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