修理人たぐちの徒然日記コラム・ギャラリー
2009.01.15
入院患者の中に面白そうなカメラを見つけた。テッサー付で初対面だが気分転換に挑戦をしてみました。
座金を外せば本体とシャッターとに分離する。
前・後玉、Cリングを外す。秒時環にシャッターの製造元か?製品名か?CLUDOの刻印がある。
面相は、コンパーシャッターの亜種であろうか?本家との加工精度に大きな違いが見られ、戦後間もなくの製造のようだが、東西の技術差が始まったと言えよう。
分解をしながらシャッターセットせずの原因を探れば、レリーズレバーの動きが緩慢であった。何とレリーズレバー軸が酸素と仲良しになり、酷い錆である。
之では、動きが緩慢になるのは仕方がない。
薬品で錆を落とした後、研磨剤で磨いたのです。勿論、相手方のレリーズレバーの軸穴も錆落としの措置をします。オイルを注せば快適な動きをする。
レリーズレバーに咬合する係止レバーも良い動きになり、シャッターセット環としっかり握手をしました。
不具合箇所の修理が終わったが、レリーズしただけでは巻き上げが出来ない。
次の巻き上げの為にリセットされないのである。
何とかならないかと会話が始まる。
35mmフィルム仕様なのでフィルムを入れるが、空送り出来ない。
何とも不思議な仕様です。外観をくるくる回しながら検証するが分からない。
ではと、巻き上げノブの隣にある釦を押してみる。な~んとリセットされるじゃありませんか。
撮影後、フィルムを巻き戻すには、巻き上げノブを引き出し内部の咬合を外すようです。
そして、リセット釦がR釦を兼用しているのです。この釦を押しながら巻き戻します。
では、撮影の作法は、と言いますとシャッタースピードと絞りを決め、目測値でヘリコイドを動かします。
撮影レンズと、視野が離れておりますから、目測値をヘリコイドと同じように視野調整盤も合わせます。
そして、やおらレリーズして撮影をします。
何と作法が必要な写真機なのでしょうか?
今では私語となりました撮影技師の世界ですね!
時を刻む長さに今昔はありませんが、ゆっくりと流れていた時代も在ったのです。
当時の方が、秒間何コマ撮れると自慢する光景を見たら卒倒すると思います。
日本橋店中古売場 田口由明
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