修理人たぐちの徒然日記コラム・ギャラリー
2009.04.01
どうしても直したいと外部生の入院です。
上カバーを外しますと、戻しバネの掛かりが外れています。巻き上げカムの組み込み位置もずれていました。
擬皮を剥がし貼り板を分離します。4本のネジを外しますと、鏡筒部が取り付けられたままシャッター部が分離できます。
シャッターが作動しない原因は、遊び人のネジでした。
ドイツにも遊び人のネジが居るようです。
減速ガバナに悪さしていた遊び人のネジは、鏡筒を止めているネジでした。
巻き上げレバーが戻る際に上カバーに直接当たらないようクッションがあるのです。所が欠落していました。代わりの部品が無いものかと捜しました。
ありました。ミノルタハイマチック7にクッションが取り付けられているのです。
早速流用することにしました。
クッションの径が太いのでヤスリで削り、径を合わせて取り付けました。 本来は黒ですが、白のクッションがアクセントになります。
依頼者「修理を御願いしたいのですが。。。」
小生「一階奥にてお預かりしております。」
依頼者「でも、修理を御願いします。」と繰り返すのでした。
小生「拝見します。」
やおら小箱から取り出しましたカメラは、ローライ35Bでした。
そして、話し始めたのです。
母が亡くなりましてから、母が良く自分の写真を撮ってくれたことを思い出しました。
そして、遺品の中に母が使っておりましたカメラが無いかと捜しました。
ようやく見つかったのです。でも故障しています。是非とも直して使い続けたいのです。
語る言葉に母に対する思いと、感傷が混在しています。
このカメラは、亡き母に代わる母の温もりを息子さんに伝えようとしています。
禿げたレリーズ釦部の塗装は、使い込んだお母様の指の残像でしょうか。
幼き頃、抱きしめてくれた母の優しさでしょうか。
息子さんがレリーズに人差し指を掛けた時、お母様の人差し指を包み込む感触がするものと思います。
日本橋店中古売場 田口由明
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