修理人たぐちの徒然日記コラム・ギャラリー
2010.06.04
朝から指名電話が鳴るのです。その中の一本は、正に緊急を告げた電話でした。
懇意にしておりますお客様から「○○です。レンズを水に落としてしまいました。製造元に駆け込みましたが、修理後の精度保証が出来ないと断られてしまいました。」何とかマニアルだけでも使用できないかと、悲痛な会話でした。兎も角、見せて下さいと来店を勧めてのER入院となりました。「どうせ断られたのだから壊しても良いよ!!之から旅行に行ってくるから」と店を後にしてしまいました。一年前に日本橋店でお買上いただきましたレンズです。
緊急を要しますので、同僚に協力を願い集中して取り込むことになりました。
とは言う物、何処から分解するのやら。。。こんな高額なレンズを分解したことはありません。分解の手順の情報も持ち合わせていないのです。
何とか前玉を外すことが出来ました。レンズ前側の浸水が酷いようです。
尚も奥に進もうと前玉保持環をゆっくりと持ち上げたのです。
勢いよく外しましたらフレキシブル基板を切断するところでした。(クワバラ・クワバラ)
ハンダを外し、距離検知環を外します。摺動SWと距離検知基板を清掃します。
一見したところ腐食が見られませんでした。
これ以上、奥に進むのにためらいがあります。
けれども奥のレンズに水性のクモリが見受けられます。浸水の程度は前側より軽度と判断しました。出来るだけ早く水分を取り除かなくてはなりません。
行きつけの散髪屋に向かいます。依頼主も同じ散髪屋を利用しています。
「おかあちゃん。大変だよ!○○さんが水にレンズを落としたのでドライヤー貸して」と頼み込みます。快く貸して頂き、熱風で水分を素早く取り除きます。熱を加えることで酸化してしまう時間を短くします。
一部、 コーティングに汚濁が残りましたが、使用には差し支え無いようです。
動くのか~ぁ。心配です。カメラに取り付けましたが動きません。
同僚に動かないや~ぁ。どれどれ、SWがMになっているよ!
カメラ側のSWをAFに切り替えますと動きました。気が動転していたのです。同僚がテスト撮影し画像を確認します。大丈夫。ピントが来ているよ。
安堵の瞬間です。傷心の旅行から帰りましたら、笑顔が楽しみです。
日本橋店中古売場 田口由明
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