修理人たぐちの徒然日記コラム・ギャラリー
2010.07.20
レンズカビと手を入れられるのを待っていましたレチナII型です。
詳しく検査すれば、レンズシャッターの持病である油分の出潤が見られ、ヘリコイドが回転しないのです。グリス交換の必要がありそうです。
シャッター部を外します。レチナの前部収納時の作法として、無限位置にしませんと収納出来ません。無理をしますと距離計連動レバーを変形させてしまいます。
必ず収納時は無限位置にします。距離環(黄色○)を無限位置にしますと、前部収納のロック釦が押せるように凹みがあるのです。
ヘリコイドの分解に移ることにします。中央填め込み画像の距離計連動キーを外します。
距離計連動キーを外す際に、強く押しますと距離計連動板の変形に繋がりますから注意します。距離計連動板を止めている2本のネジを取りますと距離計連動板が外れます。
距離環は4本のネジで固定してあります。
ヘリコイドを分解したときにレンズピントの調整方法を良く聞かれます。
一つの考え方として、分解前に距離計にズレが無いかを確認します、ズレがある時は無限合致を調整しておきます。
距離環とヘリコイドに罫書きを入れておきます。そうして於いて組み込み無限合致にズレが起きなければ正しく組まれた証となります。
押さえ板の6本のネジを外します。
ヘリコイドが外れました。古いグリスの洗浄をするわけですが、内外のヘリコイドを分離しますと組み込みに難を残します。大方は、回転を滑らかになるよう複数の線条が切られています。組み込みは、外した線条の位置で組まなければなりません。両者を平行にして、両者の線条を一致させなければなりません。慣れませんと線条の入り口を傷めてしまうのです。其れを避けるために両者が抜ける寸前で止めて線条を溶剤で洗浄します。何回か繰り返せば古いグリスを洗い流せます。
新しいグリスを塗布し、前後に送り出しをすればグリスが平均して塗布されます。
本体側のヘリコイド収納室に直進キーが取り付けられています。
直進キーの働きは、ヘリコイドの回転運動を前後の運動に変換する役目をしています。
収納室の汚れたグリスを拭き取ります。
前の画像で外しました内ヘリコイドの裏側の直進キーに咬合します溝に落とし込めば良いのです。
新たなヘリコイドグリスは(株)バルビス社が扱っていますPOWER GREEN L GREASE を選択しました。程良い粘性をしたグリスは、分離しずらい特性を持ち油分の湿潤の持病を持ちますレンズシャッターには有り難いと言えましょう。(チョッピリ高価です)
シャッター機構部も分解して湿潤した油分を洗浄します。
シャッター後室は、分離したヘリコイドグリスの湿潤の影響を受けます。
絞り羽根に油分の湿潤を受けますと、絞り羽根の重なった部分に毛細管現象で忍び入ります。忍び入りました油分は、お互いの絞り羽根を表面張力により、お互いの羽根が張り付き動きを阻害します。
そして、絞り羽根に取り付けてあります2ケ所のダボに過重な力が掛かります。最悪の場合は、ダボが過重に負けて取れてしまいます。万事休すですね!
それと、プリセット絞りを組み込むのは面倒でありますが、良い民具を残すためにも手入れを疎かにしませんように。。。
日本橋店 田口由明
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