修理人たぐちの徒然日記コラム・ギャラリー
2010.10.18
ペンを愛されておられるお客様に隠居の意向を話しました。其れは大変と自慢のペンW2台をお持ちになりました。この所、隠居の話をするたびに修理依頼を受け、時間が。。。となってしまうのです。先日も、他のお客様がコダック製とコニカC35を急いでお持ちになったばかりです。
漏光防止のモルトが傷んでいますね!モルトは加水分解をおこします。そうしますと空気中の水分を取り込み多湿の状態になるのです。民具に取って劣悪な環境に晒されてしまいます。取り替えておきましょうね。
ファインダーは透明感が身上ですね。所が一台の民具の2枚ある対物レンズが、毛細管現象により接着剤(エポキシ樹脂系接着剤)が侵入しているのです(両赤○部)。
エポキシ樹脂系の溶剤はありません。時を経たけれども接着力は落ちていないと思います。
剥がすのは、非常に危険ですので剥がして清掃するのを諦めました。
エポキシ樹脂系の接着剤は2液混合型です。硬化時間の違う種類があります。
2液を混合したばかりは流動性があり、硬化が始まって角が立つくらいで使用しますと間に浸透するのを防ぐことが出来ます。
此方の固体は、接着剤が対物レンズの間に浸透していません。前面硝子を外し、対物レンズを固定している接着剤を削ぎ落としまして外すことが出来ました。
ズイコーの曇ると言う遺伝子を伝えているのか?ペンWは曇りますね。
ペンDの後玉も曇りますね。透過させますと不鮮明なのが分かります。
前群レンズ部のG1・2レンズ(貼り合わせレンズ)に曇りが出ていました。
酸化セリウムを使いピンセットの重みだけで研磨します。
再度、透過像を撮影しました。当初よりは綺麗に写りました。
個体数の少ない民具ですので日頃の観察が結果の成否を分けます。定期的にレンズの状態を観察して曇りの所見が見られたら修理依頼を致しましょう。放置しますと曇り硝子になってしまいます。
日本橋店 田口由明
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