修理人たぐちの徒然日記コラム・ギャラリー
2010.10.26
古ニッコールのバヨネット環を固定しているネジは見えない。それ故か?分解方法を聞かれることも少なくない。
先ず、絞り値環にある絞り値カム作動軸ネジ(赤○部)を外します。
絞り値環はネジ切りがしてあり、反時計方向にひたすら回すと分離します。
分離しますとヘリコイド部とバヨネット環を固定する6本のネジが現れます。(画像では2本しか見えていません)
バヨネット環とヘリコイド部の咬合精度はインカの石組みにも似ているのです。
過酷な使用環境にも耐えるバヨネット環の質実剛健な仕様は設計者の意気込みが伝わってきます。後日、Aiシステムになった時に仕様が災いして改造が出来ませんでした。
小生は、これで良かったと思っています。古伊万里の藍染め付けが色絵に塗り替えられたらシャレになりませんよね。
被写界深度環を止めている3本ネジを外します。
ヘリコイド直進キーを止めているネジ(赤○部)が見えてきましたね!
拘りでしょうか?ネジ頭に塗装までしてあります。
ヘリコイド直進キーがはずれましたからヘリコイドを分解していきます。
この時代、個体毎に無限位置の罫書きがしてあります。無限位置の観察をしておきます。
注意として無限制限板は外しません。
ヘリコイド直進キーを外した事で無限位置より多少送り込む事が出来ます。
送り込まれて停止した所が終端位置です。この事により組み込み時の外ヘリコイドと中ヘリコイドの位置関係が分かりますね。
最短位置の制限は距離環側にあります。
次に無限制限板を外していませんから、内ヘリコイドの罫書き線が中ヘリコイドから抜ける位置を確認して分離をします。
ヘリコイドが3点に分離されました。汚れましたグリスを洗浄致します。
組み立てますと手放すのが惜しくなりました。このまま手元に置いておきたい。
何時までも店に飾っておきたい。そんな気落ちになります。
それとも製造元で買い取り、永久保存してくれませんかね~ぇ。
と、申しますのも弊社のシステムは非情なのです。
早くWebに公開しろと。。。無機質な警告を発するのです
手塩に掛けた民具を手放すのは、娘を嫁に出す心境です。
本当に隠居を前にして良い民具に出会えました。
日本橋店 田口由明
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