修理人たぐちの徒然日記コラム・ギャラリー
2011.02.04
巻き戻しノブに部品の欠落が見えるが、名も無し、製造国の表記もない。KODACHROME・EKTACHROMEに対する露出換算表から東ドイツ製か?とレンズのTeriononを頼りに検索したのです。名がSURER WESOTMAT 35と判明。製造元は大成光機である、純国産民具であった。
今度は、大成光機を手がかりに調べると、戦前、冨士光学の名でウェルミー6を製造していたとありました。色々な経緯を経て現在は、コニカミノルタ電子株式会社でコニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)が100%の株式を保有している。
ヘリコイドは動かない。シャターは切れない。巻き上げレバーは動くが、スプロケットは回らないと、グリスがストライキを起こしている状態です。初物投手に弱い球団が在りましたね!この、初顔合わせの民具は、如何直すのでしょうね!
取り敢えず、シャターが作動しない原因から調べることにしました。其れには前群レンズを外さなくてはなりません。ヘリコイド作動歯車を外し、両サイドにあります4本ネジを外しますと、被写界深度カバーが外れました。
ヘリコイド作動環は、側面の3本のセットネジで止めてある。
前群レンズには距離計と連動するカムが取り付けてあり、側面からセットネジで取り付けられているが、カムを分離してはいけない。ヘリコイドにグリスの固着がある場合は、ヘヤードライヤーで暖めると、良い結果に繋がる事あり。当該民具は、幸いにも無限位置にすることが出来たし、何度か修理をしたみたいで複数の罫書き痕が残っている。
それらの罫書き痕を目印に利用する。シャター秒時環を1/10(実線部)にすれば距離計カムの最大幅が落ち込む延長線上(点線部)にあるBが目印となる。ヘリコイドの線条は複数刻まれている事が多いからして、更に時計方向に回転させれば終端位置となり、組み込み位置の情報となる。
ヘリコイド部・押さえ盤・秒時カム盤と外すと、制御機構部が露出する。
竹串の先端でシャター羽根を突くと油分の湿潤で固着していた羽根が動き出し、主原因が判明することになる。どの道、シャターを下ろさなければならないのか?と考えると気が重い。よくよく観察すると(1)から(3)が貫通ネジの様に思われる。少し緩めると制御機構部が動いた。ならばと、シンクロ端子を外し、3本のネジを抜き去った。
分離された制御機構部である。簡易に制御機構部が分離できる仕様は素晴らしい。
レンズシャターの持病を考慮した設計者だったのでしょう!
絞り部が本体側においてけ掘りになっている。
シャター羽根の組み込み順です。羽根は組み込まれていた順に戻すのが良い。
この時代の民具は、加工精度に難点が生じている事あり。羽根支点ネジも取り付けられていた場所に戻す事が肝要だ。油分を洗浄して、羽根開閉環溝に二硫化モリブデン粉を塗布してあげる。
機構部を組み立てると、童謡「むすんでひらいて」を歌い出しました。
残る本体部分にも多々、油分の固着が見られます。時間を掛けて、左脳を活発化して挑戦することにします。
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