修理人たぐちの徒然日記コラム・ギャラリー
2011.03.04
カメラケースが外れないと安易に引き受けてきたのですが、とんでもない事になりました。
奥歯を噛みしめンチで回したのです。お~っ。少しまわったぞ!急に軽くなりましたから外れた物と思っちゃいました。所がギッチョンねじ切れてしまったのです。
外れたカメラケースと底カバーに腐食の跡がありありです。
電池室には悪名高き水銀電池が入っておりました。周辺には緑青も見受けられます。
それにしては、電池室の状態が酷くないのです。染み出た電解液はカメラケースの布に吸収されたのか?其れにしては布がアルカリ性の電解液に侵されていないのです。そうなると、水が原因かと思いますが、分析しないと判らないのです。
底カバーを外してみますとアルミ特有の白色の錆です。まさかの坂で更科蕎麦を打つ訳には行かない。ボール盤があれば簡単ですが、叶わないのです。思い直して気長に攻めるかとピンバイスに2mmのドリルを取り付け、手動で2箇所の穴を開けます。開けた穴同士にマイナスドライバーを鏨代わりにして繋げます。ねじ切りました止めネジが中空になりましたよね!尚も周辺から穴に向かい削ぎ落として行きました。
苦闘してどれ程時間が経過しましたでしょうか!!最後の残骸を取り去ることが出来ました。更科粉の様な白い粉は、水分により酸化して水酸化アルミニュームAl(OH)3ができたのです。素人的解釈ですが、(OH)3が結合した分、体積が大きくなったと思うのです。
普段は目に見えない水素と酸素がねじ切れた原因と解釈します。
調べていますと、正しくは分子量が大きくなったのが正しいようです。
Alの分子量が27。Oが16。Hが1ですから、27+(1+16)*3=78と計算できるようです。何と白い錆は分子量で約2.88倍です。驚いちゃいました。
安堵して裏蓋をあけますと、忘れられたフィルムが入っていました。
フィルムを忘れてはいけませんね!撮影して頂けないとDPEが発生せず大変な状況なのですよ。其れは兎も角、湿気でフィルムの乳剤に含まれている化学物質によりレール面に腐食を起こしています。
腐食は錆ですから、手の指でなぞりますとザラッとします。之ではフィルムに傷が付いてしまいます。中には砂入り消しゴムで擦る方もいるようですが、レール面に深い傷を付けちゃいます。
シャター幕が剥き出しで剣呑ですが、セロテープで塗装面を保護するように貼ります。
錆取り剤を塗り暫く放置して柔らかくします。竹箸の先端を斜めにします。水に溶いた酸化セリウムを付けて平行に研磨をします。
綺麗に仕上がり、フィルムに傷が付くことも無くなりました。
最後にカメラケースに収納した場合、床下浸水に気を付けましょう。
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