「ピント」をマスターしよう
カメラはオートフォーカス(AF)の時代になり、誰でもピントの合った写真が撮れるようになりました。しかし、アマチュアの方が撮影した写真をプロのカメラマンに見ていただくと、「昔のアマチュアの写真と比べるとピントが甘くなった」という意見が多く聞かれます。その原因はは、「ズームレンズが多用されるようになったため、手ブレが増えた」「AFではそれなりの写真が簡単に撮れるので、レンズの特性やピントに注意を払う方が少なくなった」ためと考えられます。 ただ単にピントを合わせるだけなら固定焦点のパンフォーカスカメラ(背景も含めた画面全体にピントが合うように設計されたカメラのことで、使い捨てカメラなどがそうです)で十分なのですが、もう一歩ステップアップするためには、たとえば目的の被写体に重点的にピントを合わせて背景をボカし、主人公を際立たせるといった、ピントの操作も覚えておいた方がいいでしょう。
「被写界深度」を理解する
AFカメラを手近な被写体に向けてファインダーを覗くと、被写体の前後ではピントが合っているのですが、背景の遠いところとレンズ寄りの手前がボケているのがわかります。このピントが合っている範囲のことを「被写界深度」と言います。この秘写界深度の範囲は主に次の三つの条件で変化します。
1 f値=雑誌の特集ページなどに掲載されている写真のキャプションを見てください。撮影者のコメントの後に使用したレンズの名前が記載されていて、その後にf○○とあります。この数値がf値で、一般に「絞り」と呼ばれています。この数値が大きくなるほど被写界深度は深くなります(被写界深度の範囲が広がることを「深くなる」と言い、逆に狭くなることを「浅くなる」と言います)。AFカメラの場合、AE(絞り優先)モードでf値を操作することができます。
2 レンズの種類=絞りの数値が同じでも、たとえば28mmといった広角レンズを使用した場合と、180mmなどの望遠レンズを使用した場合では被写界深度が変化します(本文中の表を参照してください)。広角になると被写界深度は深くなり、望遠になれば浅くなります。
3 撮影距離=カメラから被写体までの距離が短いほど被写界深度は浅くなります。つまり被写体を大きく写そうと近づけば近づくほど、ピントの合う範囲は狭くなり、被写体のどこにピントを合わせるかが問題になってくるわけです。
被写界深度が以上の3点で変化するということは、この3点を利用すれば被写界深度を操作することができるわけです。この被写界深度の操作により、単に「ピントが合っている写真」から、手前のものをボカして奥行を表現したり、被写界深度を極端に浅くして手前も背景もボカし、被写体の存在感を表現するなど、「ピントの良い写真」を写すことができるようになるわけです。
ピント合わせのポイント
一眼レフ使用者を対象に、ピントを合わせるコツを具体例を挙げて紹介します。これらはあくまでも基本なので、これを参考に、自分なりに工夫してみてください。 風景=広がりのある景色を撮影するには広角レンズが向いていますが、広角レンズは被写体から少し離れるとパンフォーカスになるので、手ブレさえ気をつければ問題はありません。また、AFにしたままだとレンズを向けた対象に焦点がセットされてしまい、パンフォーカスにならない場合があるので、マニュアルにして撮影した方が無難です。
ポートレート=基本的には絞りを操作して被写界深度を浅くし、背景をボカして撮影します。アップの場合、通常は目にピントを合わせます。横顔を撮影する場合は手前の方の目に合わせます。 花の撮影=接写での撮影では、どこにどれだけの範囲でピントを合わせるかが、そのまま撮影者の感性表現となるため、一般論として正しいピントの合わせ方を特定することはできません。被写界深度は後ろの方が深くなる傾向があるため、どちらかと言えば手前にピントを合わせた方が無難でしょう。
スナップ撮影=被写界深度の深い広角レンズを使用し、特に祭など、動きの激しい対象のシャッターチャンスを狙う場合は、マニュアルにしてパンフォーカス(被写界深度を最大に合わせます)にした方が、とっさの場合に迷わずに済みます。
AF撮影時の注意点
AFモードで撮影する場合、通常はファインダーの中央にあるものにピントが合うように設計されているため、そのままシャッターを押すと中央に重点を置いた構図となりがちで、作品としては単調になってしまいます。時にはピントロック機構を使ってピントの位置を中央からずらし、変化のある構図にもチャレンジしてみてください。
また、たとえば動物園で檻の中の動物を撮影する場合、AF撮影だと手前の網にピントが合ってしまいます。こうした場合はマニュアルに切り替えて被写界深度を調整するか、あるいは思い切って網に近づき、網をボカしてしまうと良いでしょう。
© KITAMURA Co., Ltd. All Rights Reserved.
|