花にも主役わき役を作ると思惑に近い写真ができる
プロの人でも「花の撮影は難しい」といいます。これは花を見た時の感動が『写真に現し難い』からで「素晴らしい」と思って写真にしても、雰囲気や色が大きく異なる場合が多いことは皆さん経験済みでしょう。美しいものを美しく撮るのが花の撮影であって、それだけに難しいといえるのです。一般的に、テーマを持って撮影すると、見た目と写真の格差が少なくなるといわれています。例えば〔寂を感じさせる落花を撮りたい〕などの場合ですが、但し、テーマに沿ったテクニックがあってのことですね。今回はこのテーマ抜きで花の撮影ポイントを……。
(写真上:花を引き立たせるためにバックをぼかす。絞り優先f5.6)
(写真下:幹の細い花は風にも注意。絞り優先f8)
花は最盛期直前がきれい
そこでまず、一般的に花の撮影に向いている時とはどんな時かといいますと、
1.第1に挙げられるのが「きれいな時期に撮る」ことです。花は8分咲きから最盛期の直前が、一番美しい色を出します。この時期を外した写真はやはり「なんとなく色あせた」感じが写真に出てしまいます。
2.ピーカン(快晴の昼間)時は避けた方が無難です。だいたい花は太陽に向かって咲いているものです。そんな時に花にレンズを向けても平面的や影の汚い写真になりがちです。薄曇りや曇天の拡散光の方がフィルムの発色も良いので、こうした天候の時を狙いたい。
3.背景が汚いと、きれいな花もつまらないものにもなる傾向があります。バックいかんで花も活きてきます。
以上の3点にまず配慮します。
わき役はボカスか遠めにする
ところで「花を撮って思いどおりにいったことがない」カメラマンも意外と多いようですが、この最大の理由は構図に問題があるようです。ポートレートでは主役が明確ですが、花では「きれいさを丸ごと撮ろう」とパンフォーカス(画面全体にピントがきている)で撮影するケースが多いために、主役がボケてしまっていることが多くあります。そこで同じ花が並んでいても主役とわき役を決めて撮ると、かなり思惑どおりになるハズです。主役わき役を撮る方法としては、遠近感を持たせたり、わき役をボカしたりします。(写真右:わき役をボカス。絞り優先f4)
思い切って周囲をカットするとスッキリした構図に
次いで写真が花でゴチャゴチャしてまっている例も多いですね。プロの人でも「花を撮る時にトリミングをし過ぎたことがない」と言っています。そこで単純にフレームの四隅に注意を置いて、余計なものが入らないようにします。これを心掛けるだけでもかなりスッキリした構図が得られます。思い切って周囲をカットしてみる意識を持つようにするのも花の撮影ポイントのひとつと言えます。花の撮影では、構図が知らない間に左右・前後が対称(シンメトリーといいます)になりがちです。無論、シンメトリーが悪いというのではありません。「花だけはいつも絵にならない」と言う人は脱シンメトリーを図っては見るのも手です。
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ゴチャゴチャの感じ | 周囲をカット |
ソフトフォーカスもおもしろい
一方、花にはソフトフォーカス撮影も有効な手段です。ある写真家は「人が花を見る時は、真理を追求するようには見ていない。みんな、心が和んでいるか、ボサーッと見ている。そんな頭で見ている花をシャープに撮るよりソフトを効かした方が有効的だ」と、語っていました。『なるほど』と思われる方も多いのではないでしょうか。ソフトフォーカスを効かす方法としてはソフトレンズ、ソフトフィルターがあります。中にはパンティストッキングをレンズに輪ゴムで止めてもあるようです。いずれにしても、ピントだけは正確にとらなければ、ボケボケになります。F値を絞り込むとソフト効果が弱くなります。
以上の内、ひとつでも実行してきれいな写真にチャレンジしてみて下さい。
写真提供=板倉 有士郎
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