それに対し中島氏は「技術の流れから商品を造っていくのか、市場や文化という側面から商品を造っていくのか、その差ではないかと思います」とオリンパスの特性を自己分析される。
デジタルカメラで用いられる技術はカメラというよりも、パソコンやビデオの流れに近い。このため開発、設計はデジタル技術や電子映像技術の技術者が担当することが多いのだという。「私どもの場合、確かに核になっているのはそうした技術者なんですけど、企画に関しては銀塩の分野の人間がやっているんです」と中島氏は言う。
C-840Lの場合、それまで市場に出ていた他社の機種と比べるとボタンの数が少なく、機能的にもかなりの限定を加えている。このことについて中島氏は「デジタルだったらボタンをちょっと付け加えれば、いくらでも機能を加えることができます。しかし、写真というのは一瞬のタイミングを生かさなければならないものですから、その一瞬を外したら価値が半減してしまいます。そのときにボタン操作に手間取ってチャンスを逃したら元も子もない。そこで直接写真を撮ること以外の機能を捨てていったんです」と語る。
オリンパスが銀塩カメラで見せた、「単に世界最小を目指しているわけではない。使いやすさの追求として小さくしたのだ」という、技術の基の、常にユーザーを見つめ続ける企業ポリシーが、このデジタルカメラの世界にも脈々と受け継がれていることがわかる。
最後にオリンパスにデジタルカメラの今後の展望をうかがってみた。「オリンパスではデジタルカメラを現在の写真文化に、接ぎ木するような形で発展させていくことは考えていません」と中島氏は語る。写真文化の本流にきちんとしたデジタルカメラの商品を乗せていきたい。単に画素数の競争だけにとどまることのない、総合的な画質の追求。携帯性。デジタルならではの多機能性。そしてオリンパスではもう一つホームプリント、ホームラボの提案を行っている。
「銀塩の場合はラボに出すしかなかったものが、デジタルカメラの場合は家で、あるいは撮ったその場で手軽にプリントアウトができるんです。そうした提案も、もっとしていきたい。それがデジタルでの新しい写真文化の広がりにつながっていくだろうと考えています」
最先端のデジタル技術と従来の写真文化の狭間を優雅におよぐオリンパス。しかしその根底を銀塩カメラで培われた確かな経験がしっかりと支えている。 |