高画質と手軽さ、
オリンパスの2つの解答。

「C-1400LとC-840Lという2つの高画質デジタルカメラをほぼ同時期に開発されたわけですが、この2つのカメラの開発背景の差を教えていただけますか」と山本はカメラを購入されるお客様の選択基準をたずねた。

「デジタルカメラに画質を追求してゆくとC-1400Lのように、しっかりとしたレンズをつけてズームもつけて、ファインダーも一眼レフにして、というところに行き着きます。私たちは長い経験の中で、ファインダーの大切さを認識しています。できあがった写真はフィルムに写し込まれた結果にすぎないですが、それを撮影するまでのプロセスの中で、いかにシャッターチャンス、あるいはフレーミングを満足させられるかという要因があります。それらのプロセスがあって最高の画質になるのであって、単に光学系をブラッシュアップしても、最終的な画像が必ずしもよくなるとは限らないんです」。C-1400Lはそうした問題に対するオリンパスの、デジタルカメラでの一つの解答だった。

 しかしカメラには携帯性という要素もある。あくまで画質を優先するC-1400Lは光学技術上からも、ある程度の大きさにならざるをえない。また、デジタル写真であろうと、構えて撮るばかりではなく、もっと手軽に撮ってもらいたい。その気軽さ、手軽さを実現したのがC-840Lである。中島氏は「デジタルカメラの可能性は広いし、ユーザー層をもっと広げたい。そのためには気軽に使えるカメラが絶対に必要になります。それがC-840Lなんです。それに対してC-1400Lはあくまで画質、写真にこだわる方のためのカメラです」とCAMEDIAのラインの差を説明する。

ユーザー指向の結果としての
デジタルカメラの進化を目指して。


「結局、オリンパスさんの場合は、その両方に成功しましたね」と山本。「デジタルカメラの場合、他のカメラメーカーさんの商品には、光学機器メーカーさん独自のノウハウが出てないものが多いんです。内部だけならCCDにしても何にしても、家電メーカーさんも対抗してくるじゃないですか。するとカメラメーカーさんの商品も家電メーカーさんの商品も、同列に並んでしまう。そこへいくとオリンパスさんのデジタルカメラには、光学系のカメラメーカーとしてのノウハウがしっかりと活きています」と、山本は他社メーカーとオリンパスの商品の差を売りの現場から指摘する。
カメラのキタムラ 営業部 電子映像・移動体通信担当バイヤー 山本政純

 それに対し中島氏は「技術の流れから商品を造っていくのか、市場や文化という側面から商品を造っていくのか、その差ではないかと思います」とオリンパスの特性を自己分析される。

 デジタルカメラで用いられる技術はカメラというよりも、パソコンやビデオの流れに近い。このため開発、設計はデジタル技術や電子映像技術の技術者が担当することが多いのだという。「私どもの場合、確かに核になっているのはそうした技術者なんですけど、企画に関しては銀塩の分野の人間がやっているんです」と中島氏は言う。

C-840Lの場合、それまで市場に出ていた他社の機種と比べるとボタンの数が少なく、機能的にもかなりの限定を加えている。このことについて中島氏は「デジタルだったらボタンをちょっと付け加えれば、いくらでも機能を加えることができます。しかし、写真というのは一瞬のタイミングを生かさなければならないものですから、その一瞬を外したら価値が半減してしまいます。そのときにボタン操作に手間取ってチャンスを逃したら元も子もない。そこで直接写真を撮ること以外の機能を捨てていったんです」と語る。

 オリンパスが銀塩カメラで見せた、「単に世界最小を目指しているわけではない。使いやすさの追求として小さくしたのだ」という、技術の基の、常にユーザーを見つめ続ける企業ポリシーが、このデジタルカメラの世界にも脈々と受け継がれていることがわかる。

 最後にオリンパスにデジタルカメラの今後の展望をうかがってみた。「オリンパスではデジタルカメラを現在の写真文化に、接ぎ木するような形で発展させていくことは考えていません」と中島氏は語る。写真文化の本流にきちんとしたデジタルカメラの商品を乗せていきたい。単に画素数の競争だけにとどまることのない、総合的な画質の追求。携帯性。デジタルならではの多機能性。そしてオリンパスではもう一つホームプリント、ホームラボの提案を行っている。

 「銀塩の場合はラボに出すしかなかったものが、デジタルカメラの場合は家で、あるいは撮ったその場で手軽にプリントアウトができるんです。そうした提案も、もっとしていきたい。それがデジタルでの新しい写真文化の広がりにつながっていくだろうと考えています」

 最先端のデジタル技術と従来の写真文化の狭間を優雅におよぐオリンパス。しかしその根底を銀塩カメラで培われた確かな経験がしっかりと支えている。