■光がゆっくりと描き出す味わい
そして撮影。ピンホールカメラの場合、フィルムの装填は一眼レフカメラほど簡単にはできません。富士フイルムから発売されているクイック・ロードや、インスタント写真のホルダーを使わない限り、ほとんど一発勝負で、一眼レフのような気軽さはありません。また、露光時間は自分で決めなければなりません。1秒以下の露光時間が画像に大きく影響する高速シャッターとは違い、長時間露光ですので、それほどシビアになることもありませんが、天候の具合、フィルムの感度などを考えあわせたうえで、算出します。
ピンホールカメラによる撮影の醍醐味は、この数秒の露光時間を、光がフィルムに画像を描きだしてゆく時間として、撮影者が実体験できることでしょう。そして出来上がった写真には、パーンフォーカスであるにもかかわらず、柔らかみがあるのです。それはレンズを使って光を機械的に急激に増幅し、描きだした写真とはひと味異なる柔らかみです。光がじっくりと時間をかけて描き出したからこそ、穏やかな柔らかさが生まれてくるのです。
皆さんも是非一度、このカメラの原点でもある、不思議なピンホールカメラで撮影を体験してみてはいかがでしょうか。コンパクトカメラや一眼レフカメラでは体験することのできない、それでいて写真を愛好する者なら、誰もがもっとも大切にしなければならない、光との語り合いを、また光を通じた被写体との語り合いを、体験することができることと思います。 |