Vol.42 2002 AUTUMN
 
〈アメリカ:ペンシルべニア〉
※東芝テックのカレンダーに使用
起伏と変化に富んだ自然景観、
それが日本の風景の特徴です。

 そんなシュミッド氏に、日本とヨーロッパの自然景観の違いについてたずねてみました。
 「日本の風景の特徴は、小さな集落や村があって、田んぼや畑があり、すぐ近くに山や川がある。それらが一つの絵の中に収まってしまうことではないでしょうか。ヨーロッパと比べると、起伏に富んだ景観なのです。ヨーロッパはもっと平坦ですね」。
 こうした起伏と四季の変化が、日本の表情豊かな自然を育んできたのでしょう。また、シュミッド氏から日本とヨーロッパの写真の違いについて、興味深い指摘を受けました。
 「ヨーロッパでは風景をモチーフにした写真集が少ないのですが、これは単に自然環境の違いというだけでなく、文化の違いではないかと思うのです。ヨーロッパでは古くから人物をモチーフとした絵が描かれてきました。日本のように、風景画が描かれはじめたのは比較的最近のことなのです」。 日本人の風景を愛する感情は、遠い昔から受け継がれてきたものかも知れません。

好きなものを撮り、気に入らないものを捨てる。それが自分のスタイルの近道です。
 そんな世界中に被写体を求めているシュミッド氏に、日本のアマチュアカメラマンに向けて、アドバイスをいただきました。
 「写真を撮るうえで大事なことは発見とひらめきだと思います。街の中にあるゴミや建物の壁など、あらゆるものが、見方を変えて写真として切り取れば、新しい世界の発見につながっていきます。
 形式にこだわらずに自由に、自分が好きなものを撮ってほしいですね。その後で本当に自分が好きなもの、気に入ったものだけを残し、それ以外は思いきって捨ててしまう。そうすることが、自分のスタイルを築きあげていく近道だと思うのです。
 また、最初は模倣からはじめてもいいと思いますが、いくら模倣しても模倣しきれない違いがあると思います。その違いこそがひとり一人の個性だと思うのです。その違う部分を大切にしてほしいと思います」。
 偶然、ひらめき、発見。撮りたいものを撮り、捨てることで自分を見つけていく。それこそがベルンハルドM.シュミッド氏がめざす『写真道』のようです。
 
(上)(下)ドイツの自宅に古くからある本とミシン。
 
〈アルゼンチン:フフイ〉
〈アルゼンチン:サンタクルス〉
PROFILE
Bernhard M. Schmid
ベルンハルド M. シュミッド
1955年ドイツ ウェブリンゲン生まれ。シュトットガルド大学物理学部卒業。在学中より雑誌、出版社の仕事をはじめる。1987年より日本に在住。現在は神奈川県川崎市に在住。
1999年「BeyondtheClouds(中国、雲南)、渋谷」展覧会開催。
ポストカードブック「どこまでも続く道」(ピエ・ブックス)写真集「道のむこう」(ピエ・ブックス)がある。

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