種清豊のフォトコラムコラム・ギャラリー
2012.05.11【Vol.063】
カメラのファインダーの話をするとき、よく話題に出てくるのが視野率の話です。98%、100%といった表記で書かれているカメラのファインダースペックで、ファインダーで見えている像と実際に写した画像の範囲の差を示したもので、当然100%のほうがスペック的には上位になります。カメラを買って初めの頃、撮影を始めたばかりではあまり気にならないかもしれませんが、そこに気づくということは撮影時にファインダーを隅々まで確認しているということにつながるでしょう。
そしてそのファインダーを隅々まで確認するということにもつながるスペックがあります。ファインダーのアイポイントというものです。
全視野観察可能でかつ接眼レンズからもっとも離れた位置をそのカメラのアイポイントと通常呼んでいるのですが、要するにファインダーの周囲が暗くケラレることなく見渡せる眼の位置のことと考えてください。メーカーにより基準となる表記の仕方がまちまちではありますが、一般的にはファインダー接眼レンズから何mmといった表記がなされています。接眼レンズからの距離ですので、アイポイントが長い、短いという言い方をします。
何をもってして長いか短いか判断するかは定まっていませんが、たとえばアイポイント15mmの場合、裸眼の方であれば楽にファインダーが見渡せたものが、眼鏡使用者だと周囲が少しケラレて見えるということになり、この場合メガネ使用者にとってはアイポイントが短いということになります。もちろん眼を接眼部に押し付けるようにして周囲に眼を動かせば観察することは可能ですが、長時間の撮影では疲れてしまいます。あくまで、全視野見渡せる接眼レンズからの距離をアイポイントと呼んでいるということです。
だったらアイポイントを初めから長く取っておけばOKかというとそうではないようです。アイポイントを短くすればするほどファインダーに眼を押し付けなければならず、疲れて見にくくなる一方、アイポイントが長いと離れた位置でもファインダー全体が見渡せますが、ファインダー倍率が低くなってしまいます。倍率とはファインダーで見えているものの大きさの事です。
最近のデジタル一眼レフカメラであればファインダー接眼部も広くて見やすくなり、フィルムの一眼レフに比べかなりアイポイントが長く取られているので(20mm前後)、メガネ使用者でも比較的楽にファインダーを見ることができるようになりました。
以上が簡単なアイポイントの説明です。普段何気なくのぞいているファインダーでも細かく見ていくとそれぞれに性能差があることがわかると思います。中でも視野率はもっともポピュラーなファインダースペックであるのに対しアイポイントはマイナーなスペックといえるかもしれません。見たままを写すことができる一眼レフである以上、視野率は大変重要なスペックです。当然100%であってほしいというのが多くのユーザーの望みでしょう。ただ、一方でファインダーを快適に見れるかどうかを左右するという点においてはアイポイントも視野率と並び重要なスペックともいえるでしょう。