流し撮りのやり方とポイント|全日本モトクロス選手権で解説
はじめに
熊本県菊池郡にあるHSR九州で開催された「’19 全日本モトクロス選手権」の第7戦を撮影してきました。カラフルなモトクロスバイクが悪路のコースで土を舞いあげながら激しく駆け抜ける姿は、迫力があってとても絵になる被写体です。今回は、その迫力ある走行シーンをスピード感溢れる表現にする 為に、流し撮りを中心に撮ってみました。
流し撮りとは
流し撮りはシャッター速度を遅くして、被写体が 動きに合わせてカメラを振りながら撮影し、背景をブラして被写体のみを止めて写す方法です。被写体のスピードやレンズの焦点距離によって遅めのシャッター速度を設定して撮影するのですが、被写体をしっかり止めて写すのは非常に難しい技術です。反復練習を繰り返し、被写体に合わせて身体・カメラを振って連写で撮影すると被写体を止めた写真を撮れる確率が上がります。
バイク のレースの中でもモトクロスバイクのレースの 流し撮りは 難しいカテゴリーです。舗装されたサーキットを走るロードレースの場合は、バイクが上下にぶれことは少なく流し撮りを比較的撮りやすいのですが、モトクロスのコースは未舗装の悪路でバイクも激しく上下にも動くので、被写体のブレが大きくなり流し撮りの難易度は飛躍的に上がります。
■撮影環境:シャッター速度1/50秒 絞りF7.1 ISO200 焦点距離200mm
機材・設定のポイント
カメラのオートフォーカスの設定は、動く被写体を狙うのでコンティニュアンスAFモードを使用します。シャッター優先モードを使用して流し撮りに対応できるシャッター速度を設定します。筆者が流し撮りをする時のシャッター速度の目安は、いつも1/60秒を基準にして撮影を始めます。撮影しながら確認を繰り返し、1/60で上手く被写体を止め切れてない場合には少しシャッター速度をあげて撮影。また逆にもっと低速のシャッター速度で対応出来そ
うな場合は、少しずつシャッター速度を落として撮影を繰り返しますカメラやレンズで通常の手ブレ補正モードがオンの場合、流し撮りをブレと感知しておかしなブレになってしまう場合があります。
流し撮りをする場合は手ブレ補正のモードを2の設定にします。通常の手ブレ補正モード1の場合は縦方向・横方向に対して手ブレ補正効果を発揮しますが、モード2の場合はタテ位置のみを手ブレ補正する機能になっています。手ブレ補正機能がついているカメラやレンズをお持ちの方は、ぜひモードの切り替えを確認してみてください。また撮影が終わったら、通常の手ブレ補正モードに戻す事を忘れないように!
天気の良い日の撮影で流し撮りをするのであれば、ISO感度を下げたり 、絞りを絞ってもスローシャッターに対応ができない場合も発生します。そういった場合には、入射する光の量を減らすことができるNDフィルターを用意しましょう。
NDフィルターには、ND4(光量が1/4に)・ND8(光量が1/8)・ND16(光量が1/16に)といろいろなタイプがあります。ND8ぐらいはいつも準備しておくとよいかもしれません。
便利なアイテム
ちなみに筆者は、いつもMARUMIの「CREATION VARI ND」を持つようにしています。この「CREATION VARI ND」フィルターは、フィルター装着後に前枠を回転させる事で、ND2.5~ND500相当まで減光効果を調節できる可変式のNDフィルターです。これ1枚で光の量を調整できるのでとっても便利なアイテムです。
もう一つモトクロスレース撮影であると便利なアイテムはレインカバーです。
レインカバーといっても濡れる訳ではなく、モトクロスレースの会場は砂埃などが舞い上がる激しい環境での撮影になる場合が多いのです。砂埃対策として簡易的なレインカバーを用意しておくとカメラやレンズを砂埃から守ることができます。
撮影のポイント
モトクロスレース撮影の1番おすすめのポイントはスタート直後です。
スタートからのストレートが集団で迫力のある写真が撮れるポイントになります。モトクロスレースも他のレースと同様に周回を重ねると集団がばらけ、複数台が絡んだシーンを撮ることが難しくなってきます。スタート直後であれば、まとまった数のマシンが第1コーナーに向かって進んでいく迫力あるシーンの撮影が可能です。
■撮影環境:シャッター速度1/60秒 絞りF9 ISO200 焦点距離200mm
スタート直後の集団の流し撮りは、それぞれのマシンのスピードが違うためにマシンのブレ具合もまちまちになって、スピード感の変化が楽しめる作品になります。上の写真であれば、フロントタイヤのブロックパターンの見え方がそれぞれ違い、スピードの違いも表現することができています。
■撮影環境:シャッター速度1/60秒 絞りF11 ISO400 焦点距離200mm
集団の横並びシーンを撮れるのはスタート直後のみ。この撮影チャンスは逃さないようにレースのタイムスケジュールを確認しながら、撮影ポジションを確保します。望遠レンズを使って流し撮りをする場合は、自分の左右をよく確認しましょう。カメラを振ることで隣にぶつかる事のないように注意が必要です。
■撮影環境:シャッター速度1/60秒 絞りF10 ISO400 焦点距離207mm
スタートの集団シーンが撮れたら、撮影ポジションを移動して違うシーンを狙っていきます。
■撮影環境:シャッター速度1/30秒 絞りF10 ISO100 焦点距離400mm
■撮影環境:シャッター速度1/60秒 絞りF14 ISO800 焦点距離600mm
ここからは流し撮りではありませんが、高速のシャッター速度でも動きを表現できるパターンも紹介します。下の写真はコブをジャンプしているタイミングですが、シャッター速度を1/800秒にして撮影しています。このくらいのシャッター速度であれば、高速で回転しているタイヤだけをブラして撮影することができます。
■撮影環境:シャッター速度1/800秒 絞りF6.3 ISO1600 焦点距離 600mm
■撮影環境:シャッター速度1/250秒 絞りF6.3 ISO800 焦点距離600mm
コブのジャンプからの着地のタイミングは、泥を跳ね上げて迫力のある写真が撮れるポイントになります。タテ位置で撮影する場合は、タテ位置グリップがあれば撮影もしやすくなりますし、バッテリーを2本入れておけるので長時間の撮影でも安心です。
まとめ
なかなか見る事が少ないモトクロスレースですが、迫力もあって素敵な写真が撮れること間違いなしです。予選から撮影して、撮影ポイントをしっかりと把握して、決勝レースに臨みましょう!ポイントは1周目ですよ!それから最後にスタートのタイミングとは別に、1周目の大きなジャンプをするところは狙いたいポイントです。一つのフレーム内にたくさんのモトクロスバイクがジャンプするシーンを撮ることができます。この場合、シャッター速度をできるだけ速くして、シャッター速度はできるだけ早い設定で 連写撮影する事をおすすめします。
■撮影環境:シャッター速度1/1000秒 絞りF7.1 ISO800 焦点距離300mm