プロ写真家に聞くイルミネーション撮影のコツ|デジタルカメラ編
はじめに
ホリデーシーズンが近づいて街がイルミネーションで煌めいてきました。美しい夕暮れ時はそのキラキラとしたシーンをしっかりとデジタルカメラで収めたいもの。うまく写せるかちょっと不安なあなたに、かんたんなコツをこっそりと伝授します。どれもカンタンなことなので、今日からステキなイルミネーション写真が撮れること間違いなし。手ブレと明るさに注意をして撮影を楽しみましょう!
イルミネーション撮影に必要なアイテム
ここでは私が携帯しているイルミネーション撮影に必要なアイテムをご紹介していきます。
カメラとレンズ
レンズ交換ができるデジタル一眼レフやミラーレス一眼カメラがいいでしょう。理由は、レンズを交換してさまざまな画角でイルミネーション撮影を楽しめるからです。最近発売された機種は高感度にも強く、夜景を撮るのにオススメです。今回はニコンのAPS-Cミラーレス一眼「ニコン Z 50」を使用しました。軽量コンパクトなだけでなく画質にも優れ、初心者から上級者まで納得して使える性能を持っています。
レンズはダブルズームキットの「NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR」と「NIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VR」をメインに使用しました。この2本でフルサイズ換算24~375mm相当までカバーできるので心強いです。どんな被写体でも撮れると言ってもいいでしょう。またレンズの手ぶれ補正機能もよく効きます。
また、明るい単焦点レンズもオススメです。50mmから85mm程度のF1.8クラスがあると明るさの調整やボケの具合など、撮影の幅も広がり万全の体制で挑めます。
十分に充電したバッテリーと、使用カメラでフォーマットしたメモリーカードを入れて撮影に臨みましょう。
三脚
撮影するスポットにもよりますが三脚があると役立ちます。携行と設置が便利なトラベラータイプのものと、小さなスペースにも立てられるポケットタイプのものが便利ですよ。使用する機材の重さに合わせた耐荷重性能があるものがオススメです。
三脚使用時はレリーズがあれば便利ですが「セルフタイマー」を使えば必須というわけではありません。カメラによってはスマートフォンとワイヤレスで接続でき、アプリからリモートでシャッターを切ることが可能な機種もあるのでそれを使ってもいいでしょう。「ニコン Z 50」の場合は「SnapBridge」というスマホアプリで便利に使えます。
なお三脚は場所によっては使用が禁止されていることもあるので、事前に情報を収集して撮影に赴きましょう。また混雑する場所では通行の障害になるので使用をやめた方がいいでしょう。
撮影のコツ
撮影に必要なアイテムをお伝えしたところで、実際に撮影のコツをお教えいたします。
手ブレに注意する
イルミネーションは日が落ちて暗くなる時間に点灯されます。場所にもよりますが、だいたい16時〜17時頃に点灯開始することが多いようです。太陽が西の空に沈み、青かった空があっという間に暗く塗り替えられる時間帯です。
となると一番気をつけなくていけないのは「手ブレ」です。使用する機材が「ボディ内手ぶれ補正機能」や「レンズ内手ぶれ補正機能」を搭載していればひとまずは安心ですが油断は禁物です!
手持ちで撮影する時はしっかりとカメラをホールドすることが求められます。カメラにファインダーがある場合は接眼部と構える右手、そしてレンズに添える左手との3点支持を心がけましょう。両脇を締め、肩幅と同じくらいに足を開き、力を入れすぎないようにリラックスしつつ被写体を狙うのがコツです。壁や電柱があればそれを利用して寄りかかるとより安定します。
ファインダーがなく、ディスプレイを見るタイプのカメラはストラップをうまく利用しましょう。首にストラップをかけて両手を伸ばしたときに、ちょうどピンと張ってテンションがかかるような長さに調節するのです。こうするとカメラがフラフラせずに安定します。ぜひ試してみてください。
いずれの場合も撮影時には優しくシャッターを切ることです。慌てたり強くシャッターボタンを押し込んだりすると手ブレの原因となりますので注意しましょう。
感度を上げる
手ブレの原因はシャッタースピードを上げると解決できます。そのためにはISO感度を上げてみましょう。使用レンズによって異なりますが、シャッタースピードがだいたい3桁以上になるように設定すれば安心です。1/125秒以上になるようしてみましょう。ISO感度オートに設定している場合は、撮影モードをシャッタースピード優先オートにし、1/125秒〜にシャッタースピードをセットしましょう。あとはカメラが自動的にISO感度を調整してくれます。
自分でISO感度を設定する場合はあまり高くしないように気をつけましょう。カメラによって高感度特性が異なりますが、ISO800〜ISO3200くらいまでがノイズ感も少なくいい仕上がりになると思います。
マジックアワーを狙う
空に青みが残ったイルミネーションは美しく感じます。とっぷりと日が暮れる前に撮影するのがコツです
イルミネーションを撮る時間は日没から少し時間が経ったくらいがベストです。なぜなら空にまだ青みが残っている方が美しく感じませんか?真っ暗な空よりもやや青みがかった空の方が印象的になります。なので撮影場所には日没より前の明るい時間に到着してロケハンをして備えるのがオススメです。暗くなり始めたら撮影のスタートです!
なおイルミネーションの背景に空が入らないようなシチュエーションだと、日が暮れた時間帯でも問題ありません。
アングルを変える
ステキなイルミネーションがあったらさまざまな角度から撮影してみましょう。正面だけでなく横から斜めからと自分の立ち位置を変えてみることをオススメします。ズームレンズを使っている場合は、ワイド端とテレ端を使うのはもちろん、中間域も使ってバリエーションを撮影しましょう。
一番のオススメはローアングルとハイングルです。高さの変化を付けることによって写真の印象がガラリと変わるからです。同じ撮影位置でも立ったままとしゃがんで撮るのとではだいぶ写真のインパクトが違います。
また、イルミネーションをビルや高台などから狙える場所があったら望遠レンズを持って行ってみましょう。思いもよらないカットが撮れるかもしれませんよ。
輝くツリーを真正面から捉えました。NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VRで37mm相当の画角です。三脚を使って1/2秒というスローシャッターを切って歩いている人物をブラして撮りました
同じ位置から50mmのテレ端までズームしました。同時にカメラを上方に向けて空を大きく入れて開放感を演出。日没直後とあって空に青さが残っています。先ほどのカットとだいぶ印象が変わりましたね
次は同じツリーを見下ろせる高台に移動しました。レンズは望遠ズームレンズのNIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VRにチェンジ。望遠の圧縮感が出て雰囲気がかなり変化した写真になりました。地面に左右のイルミネーションが反射して美しく光っていますね。このようにズーム位置、アングルを変えると見え方がガラリと変わるので、自分なりの撮影ポイントを見つけると楽しくなりますよ
玉ボケを作る
カメラ任せのプログラムオートでの撮影でも近ごろのカメラはイルミネーションを美しく撮影できます。しかし絞り優先オートに撮影モードを設定してレンズの絞りを開けるとボケの効果を楽しんで撮ることができますよ。俗に言う「玉ボケ」を味わうことができます。
どのようにするかというと、レンズの絞り値(F値)を数字の少ないようにセッティングするとキレイな玉ボケを撮影できるのです。この場合、明るい単焦点レンズを使うとより効果がわかりやすいカットになります。オススメは50mmや85mmのF1.8より明るいレンズです。お値段もサイズも手頃なのでカメラのキタムラで探してみるのもいいでしょう。
ピントの合った位置の後方に点光源が入るように構図をとると丸いボケが引き立ちます。また点光源の数や色、フレーム内の位置を調整することによって印象が大きく変わってくるので、被写体に近づくなどして構図を調整してベストな一枚を目指しましょう。
キラキラと輝く玉ボケを表現するためにニコン Z 50に明るい単焦点レンズNIKKOR Z 50mm f/1.8 Sを装着しました。絞りを開放のF1.8にセットして、立木のイルミネーションにポントを合わせたところ、背景のLEDが大きく美しく玉ボケになってくれました。このようなカットは大口径の優秀なレンズの描写がモノをいいます
先ほどは絞りF1.8開放でしたが、今度はF5.6に絞ってシャッターを切りました。背景に見えるLEDの玉ボケが小さく写っていますが、絞ったためシャープで小粒な様子に撮れています。立木のイルミネーションもピントが深くなってより精細に写っていることがわかるでしょう。
このように絞りを操作することによって玉ボケの大きさや被写体のクッキリ感を演出することができます。自分なりに気に入る写りになるように絞りをいろいろ変えて撮ってみるといいでしょう
露出補正をする
カメラ任せで撮ってもまず失敗はないと思いますが、たまに「もう少し明るかったらなあ」とか「もうちょっと暗い雰囲気だった」と思うケースもあるでしょう。
そのようなときは「露出補正」をかけてみましょう。露出補正とは簡単に言うと明るさの調節です。カメラによって操作方法が異なってきますが、基本的には露出補正をメニューで選択してダイヤルでコントロールするのが一般的です。
撮影時に操作で迷わないように取扱説明書を熟読することや、スマートフォンにメーカーが配布しているマニュアルをダウンロードしておくことをオススメします。
ショッピングセンターのクリスマスイルミネーションをカメラの指示通りに撮ったカットです。思ったより明るい印象に撮れました
露出補正をプラス2/3段かけてみました。すると色味もグッと明るくなり、背景も浮かび上がってきました
今度はマイナス2/3段の露出補正をかけました。イルミネーションの色が引き立ち、背景はより沈んでいます。みなさんはどの明るさがお好みでしょうか?どのくらいの補正をかけるかはフォトグラファーの感性次第です
多重露光
カメラによっては「多重露光」機能が搭載されています。これは1枚の写真に指定した回数分シャッターを切って合成できる機能です。輝くイルミネーションをいくつも合成して煌びやかな写真に仕上げることが可能です。ここではニコン Z 50の機能を使って2枚のカットを1枚に合成してみました。明るくファンタジックな写真に仕上がりました
1回目のシャッターはイルミネーションにピントを合わせて切りました。2枚目はピントをマニュアルで大きく外し、最短撮影距離までずらしてからシャッターを切りました。するとピントが合ったシャープな像とキレイにボケたカットが1枚に同居し、色彩豊かでメロウな写真となりました。合成するカットはフォトグラファーが任意に設定できるので、アイディア次第で楽しいカットが撮れるようになっています
デジタルカメラの設定を変える
使用しているカメラの設定を変えることでも仕上がりを変えることが可能です。例えばホワイトバランスを自動ではなく「昼光(デイライト)」や「室内灯(タングステン)」などに変更すると色味がガラリと変わりますし、「フォギー」や「ソフト」などのフィルター効果を出せる機能を持つカメラならそれらを使うことによって、光学フィルターをかけたような効果を簡単に演出できます。
またRAWという形式で撮影しておくと、カメラメーカー純正の現像ソフトなどでさまざまなパラメーターをパソコンで自在に変更可能になります。メモリーカードの容量を消費してしまいますが、自宅でじっくりと作品に仕上げることができるのでオススメです。
それでは暖かい装備で風邪を引かないようにイルミネーション撮影をエンジョイしてください!