物撮りのコツ|自然光とレフだけでカメラをブツ撮りする
物撮りのコツ解説
以前の記事「物撮りのやり方|写真家が教える物撮り初心者のカメラテク3つ!」で、ニコンのフルサイズミラーレス一眼カメラ「Z 6」とスピードライトを使った、カンタンなブツ撮りの方法をお伝えしましたが、今回はより手軽な「自然光」を使った撮影方法についてお伝えしたいと思います。
スマホでも出来る物撮りの撮影方法はこちらの記事から
自然光の「太陽」で撮る
一番身近な「光源」、それは太陽です。いわゆる「自然光」ですが、とても明るくて力強く、しかも「無料」で使えます。さらに電球やライトとは違って地球上のどこでも利用可能であるため、非常に頼もしい「光源」と言えるでしょう。今回はこの「自然光」を利用したカンタンなブツ撮りを紹介していきます。被写体は一番身近なカメラとレンズにしましょう。
ひとつ気をつけなければいけない点があります。それは「太陽」は動くもので、ホワイトバランス(色合い)が常に変化し続けている、ということです。季節によって日が昇るのも沈むのも時間が違いますし、朝方や夕方は大きく色味が変化していきます。多くのカットを撮影する場合、手際よくシャッターを切っていかないと太陽が動いてしまって、カットによって影の出方や色合いが変化してしまうと言うことになりかねません。また、日なたで撮影していたのに日影になってしまったりと言うこともありえます。
その一方で、例えばその夕方の淡い色合いを活かしたり、あえて真夏のギラギラ感を利用した演出をすることも可能なのです。撮影する季節と時間帯、そして撮影場所は熟考する必要があります。基本的には撮影時間はお昼前後の時間帯に撮影するのがオススメです。
ホワイトバランスはどうする?
太陽光で撮影するので、カメラのホワイトバランス設定は「デイライト(もしくは「太陽」などメーカーによって呼称が異なります)」が基本です。ホワイトバランスをセットすることによって、色合いを固定しての撮影が可能です。
室内で撮影する場合、部屋の壁の色や天井の色が影響して「色かぶり」してしまうことがあります。そのような場合はホワイトバランスを「オート」に設定するか、マニュアルでホワイトバランスを取って設定しましょう。
おすすめのカメラはフルサイズミラーレス「LUMIX S5」
今回の使用カメラは、パナソニックのフルサイズミラーレス一眼カメラ「LUMIX S5」。バリアングル液晶を搭載しているので、三脚にカメラを据え付けた場合でもフレーミングをラクに行うことができます。また、フルサイズセンサーの伸びやかでディテール豊かな写りと、ノイズが少なく高感度にも強いのでさまざまな環境光下で一定の仕上がりが期待できます。
レンズはシグマの「SIGMA 105mm F2.8 DG DN MACRO | Art」をチョイスしました。このレンズは切れ味が鋭く、絞り開放からとてもシャープな像を結んでくれます。105mmというワーキングディスタンスもカメラ撮影にピッタリで、フォルムを崩さずにストレートに被写体を捉えることが可能な素晴らしいレンズです。最短撮影距離は29.5cmとなっています。
実際に窓辺で撮影
というわけで一番手軽な自然光、太陽を利用してカメラを撮影してみましょう。窓辺に台を設置して白いバック紙を敷きます。これは台に合わせるのがセオリーですが、できればA3サイズより大きなものを推奨します。なぜなら被写体が大きくなってくると写り込む背景もある程度スペースが必要になってくるので、小さいものより大きなものがいいからです。
バック紙の中央に被写体となるカメラを置きます。今回は「SIGMA fp」と「SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary」のセットを起用しました。
するとどうでしょう。カメラ部分にサッシの影がドーンと落ちてしまっています。これではダメですね。と言っても台を他に設置するスペースはありません。さてどうしましょうか。
そこでレースのカーテンを閉めてみました。光が弱まってコントラストも和らぎましたね。やや影が気になりますが、「室内でのカメラカット」という感じで悪くありません。しかしオークションやフリマサイトに出す写真の場合は、これでは商品がよく分かりません。
そこで「ディフューザー」の出番です。ディフューザーとは光をやわらげる道具で、簡単に言ってしまえばトレーシングペーパーのように光をソフトに透過するものとなります。これで太陽光を拡散してフラットな光を作ってあげるのです。マンフロット社の「ラストライト ハロコンパクト ディフューザー 82cm」を使用して仕上がりは柔らかなイメージとなりました。
カメラの持つ金属の質感をもうちょっと出したい場合は「レフ」でそれを演出してみましょう。表がホワイト、裏がシルバーのマンフロット社「ラストライト ハロコンパクト リフレクター82cm シルバー/ ホワイト」を使ってみます。シルバーの面で太陽光をキラリと被写体に向けて反射してみます。
するとどうでしょう、レンズ鏡筒にキリリとしたハイライトが入り、カメラの上面もクッキリと見違えるようになりました。このように「ディフューザー」と「レフ」とで「光を和らげる」ことと「光を導く」ことによって、家の窓辺でも手数をかけることなくカメラの撮影ができました。
上記と同じように、往年の名機「ニコン F3P」に迫ってみました。これはボクが報道機関にいた時代に愛用していたカメラです。このカットは窓辺からの太陽光のみの撮影なので、やや逆光気味になっています。
画面左サイドから先ほどのレフを入れてみました。ホワイト面を使ってみましたが、チタン製のペンタプリズム部、シャッターダイヤル部、モータードライブ「MD-4」のシャッターボタン周りの輪郭がピシッとしましたね。
今度は背面のファインダー接眼部周辺を撮ってみましょう。このカットは窓辺に置いただけのカットです。今見てもこのニコン「F3」シリーズはカッコいいですね。新宿にある「北村写真機店」ではコンディションのいい個体が入荷している場合があります。興味がある方はぜひお店までどうぞ!
ここではレフのシルバー面を使って、強めに光を当ててみました。ちょっとずつ「F3P」を移動させて、光とフォルムが一番マッチするところを探して撮ってみました。ネーミングのテープが30年の時を超えてクッキリと浮かび上がりました。
撮影時には絞りも変えてみましょう。写真の印象が大きく変わってきます。これは「F3P」の銘板部にフォーカスして、「SIGMA 105mm F2.8 DG DN MACRO | Art」の絞り開放「F2.8」で撮ったカットです。なかなか雰囲気のあるものになりましたが、もうちょっと「MD-4」をクッキリと出したくなりました。
今度は「SIGMA 105mm F2.8 DG DN MACRO | Art」の絞りを「F8」に設定。3段分絞り込んだので「MD-4」のグリップはもちろん、銘板部全体にピントが来たので「F3P」の雰囲気もグンと伝わってくるカットになりました。
今回使ったディフューザーとレフです。マンフロット社の「ラストライト ハロコンパクト」シリーズです。今後ブランドがマンフロットに統合されていくようですが、世界中のフォトグラファーに愛用されている照明関係の人気あるブランドの製品となります。写真左が「ディフューザー」、右が「レフ」となります。
この製品は折り畳み式で、キャンプで使うテントのように折り畳まれたポールを円形に展開し、そのポールにディフューザーやレフの生地をフックで引っかけて張るスタイルです。ポール結合部には三脚穴もあるので、雲台やライトスタンドに設置可能です。一人での撮影でも光をコントロールすることができます。
折り畳むとペットボトル代のコンパクトさ。小さめの折りたたみ傘くらいでしょうか。カラビナも付属しているので、カメラバッグにひっかけることもできます。軽くかさばらないので気軽に持ち歩くことも可能ですし、家での収納場所にも困りません。ディフューザーとレフの両方を携行するのも楽チンです。
このように日中の窓辺でも、自然光とディフューザーとレフを使ってブツ撮りを楽しむことが可能です。「光を和らげる」ことと「光を導く」ことによって、カンタンにブツ撮りを楽しんでみてください。
■写真家:三井公一
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、Web、ストックフォト、ムービー、執筆、セミナーなどで活躍中。有限会社サスラウ 代表。