海での風景撮影テクニック|齋藤朱門
はじめに
今回は海での風景の撮影方法と必要な機材について紹介したいと思います。
海と一言で言っても、国内にはさまざまな地形の海岸や気候がありますので、撮り方は千差万別だと思います。また、広く撮影地として知られてないような海岸を発見し、個性ある海景写真を撮ることも楽しみの一つですね。
海での風景撮影
沖縄県・宮古島の海岸で撮影した1枚。朝日のオレンジ色の光に染まる砂浜と雲が印象的でした。広角レンズで撮影することで空と海のダイナミックさを強調しています。
こちらも宮古島の海岸で撮影。波が岩にぶつかり砕ける様子が特徴的だったので、シャッタースピードを変えながら、砕ける波の動きを捉えられる瞬間を狙って撮りました。
特徴的な奇岩がある海岸での撮影も絵になるので、海撮影の醍醐味の一つだと思います。
夕日が沈んだ後、暗くなった空に浮かぶ三日月が印象的でした。
光害の影響を受けにくい南の空で天の川を撮るのも面白いと思います。これは宮古島の海で天の川撮影中に月が昇り始めて来た瞬間を撮った1枚です。月の光によって星は徐々に消えていきました。
岸壁に囲まれた入江からのぞく天の川を撮影。入り江のような海岸では地形を生かした撮影を楽しむことができます。
九十九里海岸にて、早朝に撮影。穏やかな海岸では、ビーチに空の色が映り込み美しい情景を作り出してくれます。
夕日で黄金色に輝く海面が綺麗だったので、望遠レンズで切り取ってみた1枚。望遠レンズを使うことで、普段とは少し違った海の写真も撮ることが出来ます。
撮影テクニック
海での撮影時に一番ポイントとなるのが、構図とシャッタースピードです。海岸には美しい砂浜、岩礁、奇岩などと特徴的な被写体があるので、これらをどう配置した構図とするかは重要なポイントであり、かなり難しい部分だと思います。
また、波の動きをイメージ通りに表現するためにはシャッタースピードが重要となってきます。
構図
構図はオーソドックスなパターンを基本としつつ、撮りたいイメージに合わせて工夫を凝らすことでオリジナルの個性ある写真にすることが出来ます。
海面に映り込んだ空が印象的なシーンだったため、空の反射を強調するために上下のシンメトリーの構図で撮っています。
面白い地形の海岸での撮影だったため、地形の作り出すラインと波が引く様を手前の低い位置から広角レンズで縦構図撮影しています。自然が作り出すラインを意識し、視線を手前から奥に惹きつけるようなイメージで撮影するとこのような写真になります。
シャッタースピードとタイミング
激しい波が特徴的なシーンでは、ダイナミックな波の動きを捉えるためにシャッタータイミングとともに、シャッタースピードも大事な要素となります。また、NDフィルターを使って長秒撮影を行うことで、肉眼では見られない写真ならではの表現を行うことも可能です。
手前の岩に当たり、弾ける水しぶきが朝日に照らされて輝く瞬間が美しいと感じ、その瞬間を狙ってシャッターを切っています。シャッタースピードは短すぎると、ややつまらなくなりがちなので、少しだけ長い1/5秒としています。
この2枚は全く同じ場所でシャッタースピードを変えて撮っています。上は0.8秒とすることで波のうねりを意識して撮影。下はNDフィルターも併用することで柔らかくシルキーなイメージとなるようにしています。
必要な機材
海での風景写真撮影で必要な機材としては、基本的に他のシーンと同様にカメラ・レンズ・三脚があれば撮影できますが、各種フィルターを活用すると更に作品の幅が広がります。特に、輝度差を抑えるためのGNDフィルターや長秒撮影のためのNDフィルター、濡れた岩の反射を抑え、海面の反射を調整するためのCPLフィルター等があると良いでしょう。
また、シャッターレリーズを使うと、シャッタータイミングを合わせる場合や、バルブ撮影を行う際に便利です。
波・海水に注意
海で撮影する時は潮の満ち引きに注意が必要です。安全な場所で撮影しているつもりでも、撮影に夢中になっている間にいつの間にかどんどん満ちてきてしまうことや、突然予期しない大きな波が来る場合もあります。常に安全に注意して撮影するようにしましょう。また、予期せぬ波によって、カメラやレンズに海水がかかってしまうと故障の原因になりますのでご注意を。
三脚はどうしても海水に入れることになると思いますが、その場合はなるべく一番下の足を伸ばし、三脚内に海水が侵入しないようにすると良いです。また、海での撮影後には海水を洗い流すなどのメンテナンスを行うと良いでしょう。
さいごに
今回は筆者なりの海での風景撮影方法をお伝えしました。海もあまり季節と関係なくいつでも撮影することができますし、まだ誰にも知られていないスポットも沢山あるので、自分で絶景スポットを探す楽しみもあると思います。
海で撮影する機会があれば、是非この記事の内容を参考にしていただけると嬉しいです。
■写真家:齋藤朱門
宮城県出身。都内在住。2013年カリフォルニアにて、あるランドスケープフォトグラファーとの出会いをきっかけにカメラを手に取り活動を始める。海外での活動中に目にした作品の臨場感の素晴らしさに刺激を受け、自らがその場にいるかのような臨場感を出す撮影手法や現像技術の重要性を感じ、独学で風景写真を学ぶ。カメラ誌や書籍での執筆、Web等を通じて自身で学んだ撮影方法やRAW現像テクニックを公開中。
齋藤朱門さんの撮影テクニックの連載記事はこちら
・丘や山での撮影テクニック|齋藤朱門
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・星景写真の撮影テクニックと機材|齋藤朱門
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・滝・渓流での撮影テクニック|齋藤朱門
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