冬の風景撮影とテクニック|齋藤朱門
はじめに
今回は冬の時期の風景撮影と必要な機材について紹介したいと思います。冬の時期は雪や氷、霧氷や樹氷とそれまでとは全く異なる表情の風景に出会えますので、個人的には一年の中で一番面白いと感じる季節です。気温が低いので、外での撮影は過酷ではありますが、そんな寒さも忘れるほどに撮影に夢中になることがありますね。
冬の風景
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■撮影環境:マニュアル露出・28mm・F8・ISO100・1/50秒
青森の八甲田周辺で撮影した1枚。突然の大雪に見舞われ、吹雪で荒れた天候でしたが、通りかかった森の中で印象的なシーンに出会えました。
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■撮影環境:マニュアル露出・81mm・F14・ISO100・1/800秒
裏磐梯の凍結した湖面に、降り積もった雪によって広大な雪原ができていました。冬の裏磐梯は雪が多いことでも有名です。天候も変わりやすく、この時は一瞬だけ雲の隙間から差し込んだ太陽の光に照らされる雪原を撮ることができました。
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■撮影環境:マニュアル露出・49mm・F4・ISO100・1/40秒
降りしきる雪によって霧に包れたような雰囲気の森を撮ってみました。雪によって森の表情も普段とは全然異なるのが面白いですね。
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■撮影環境:マニュアル露出・35mm・F13・ISO100・1/50秒
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■撮影環境:マニュアル露出・28mm・F13・ISO100・1/30秒
この2枚は北アルプスの西穂山荘の近くで撮影しました。冬山登山はしっかりとした装備が必要で、撮影機材を持っていくのも一苦労ですが、その苦労に十分見合う風景に出会うことができると思います。
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■撮影環境:マニュアル露出・14mm・F6.3・ISO100・1/1250秒
凍結した湖面の上で散策しながら撮った1枚。普段は見ることが出来ない氷などを切り取って撮影するのも面白いですね。
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■撮影環境:マニュアル露出・68mm・F8・ISO100・1/250秒
同じように、こちらは凍った川の近くで見つけた氷の結晶を撮ってみました。このように風景写真とは異なりますが、足元にある様々な氷の結晶をクローズアップ撮影してみると撮影の幅が更に広がり、より冬の撮影を楽しめると思います。
アイスバブル
ある特別な条件が必要ですが、冬の凍った湖面ではこのようなアイスバブルと呼ばれる現象を撮影することができます。
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■撮影環境:マニュアル露出・14mm・F11・ISO100・1/125秒
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■撮影環境:マニュアル露出・13mm・F13・ISO100・1/500秒
アイスバブルはカナダにあるアブラハム湖が有名なので、ご存じの方もいるかもしれませんね。
実はこの2枚のアイスバブルの写真は、2019年に北海道の糠平湖で撮影したものです。 アイスバブルは湖の中で発生したガスが凍った湖の中に閉じ込められたものですが、通常は湖面が雪に覆われてしまっていることや、綺麗な透明な氷にならないと見ることができないので貴重な瞬間だったと思います。 以前、アブラハム湖でもアイスバブルを撮影したことがありましたが、北海道の糠平湖のアイスバブルはその時よりも広範囲にアイスバブルが広がっていました。
北海道では雪が少ない年に稀にアイスバブルが大量に見ることができるようですので、機会があれば是非、北海道を訪れてみてください。
撮影テクニック
冬でも基本的に風景撮影の方法自体は普段と大きく変わりませんが、いくつか冬ならではのシチュエーションに使える簡単なテクニックがあるので、ご紹介します。
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■撮影環境:マニュアル露出・100mm・F6.3・ISO100・1/20秒(ストロボ使用)
降りしきる雪を幻想的に撮影する場合は、なるべく絞りを開放に近い状態にし、クリップオンストロボなどで手前の雪を照らしてあげると、前ボケでこのように手前に降る雪を大きく撮ることができます。
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■撮影環境:マニュアル露出・400mm・F13・ISO100・1/40秒
遠くの霧氷や樹氷の木々を望遠レンズで切り取る場合のテクニック、というよりは注意点ですが、超望遠レンズの場合、三脚を使っていても微風でのレンズ振動の影響が大きいため、なかなかシャープな写真を撮ることが難しい場合があります。 そのような時は望遠レンズ用のレンズサポートを使って、レンズとカメラ全体を支え、なるべく振動を抑えると良いでしょう。また、レリーズシャッターを使用することで、カメラに触れずにシャッターを切ることも忘れずに。
必要な機材
マイナス10°C以下の寒冷地での動作が保証されてないカメラの場合は、カメラジャケットでカメラの冷えを抑えることも重要です。ただ、最近のカメラではカメラジャケットなしでも平気な場合が多いように思います。 また、カメラによっては寒いところでのバッテリーの保ちが悪い場合もあるので、そのような場合は予備バッテリーも多めに持っておくと良いでしょう。USB接続のモバイルバッテリーに対応している場合は大容量のUSBモバイルバッテリーを持っておくと安心です。
また、湿度が高い等で、結露してしまうようなシチュエーションの場合はレンズヒーターをレンズに巻きつけておくと、結露防止に役立ちます。 万が一、うっかりすぐに温かい車内や室内に冷えたレンズを持ち込んでしまう等で、レンズの内部が結露した場合は、ジップロックに防湿剤を入れて物にレンズを入れておくと比較的早く結露を取ることができます。
マイナス10°C以下の環境での撮影は防寒着も重要になってきます。特に明け方や夜中などに長時間撮影を行う場合は、冷え込みますのでご注意を。 最近はUSB電源のヒーター内蔵のジャケット等も増えてきているので、ヒーター内蔵の防寒着を活用するのも良いと思います。
さいごに
今回は筆者なりの冬の時期の風景撮影方法をお伝えしました。 冬は寒いので、つい撮影が億劫になりがちですが、雪景色や霧氷・樹氷等、冬にしか見れない風景もあり、撮影のチャンスが多い時期だと思います。 撮影に出かける際には、しっかりと防寒装備と撮影機材を準備して行きましょう。また、この記事の内容を参考にしていただけると嬉しいです。
■写真家:齋藤朱門
宮城県出身。都内在住。2013年カリフォルニアにて、あるランドスケープフォトグラファーとの出会いをきっかけにカメラを手に取り活動を始める。海外での活動中に目にした作品の臨場感の素晴らしさに刺激を受け、自らがその場にいるかのような臨場感を出す撮影手法や現像技術の重要性を感じ、独学で風景写真を学ぶ。カメラ誌や書籍での執筆、Web等を通じて自身で学んだ撮影方法やRAW現像テクニックを公開中。
齋藤朱門さんの撮影テクニック連載記事はこちら
・丘や山での撮影テクニック|齋藤朱門
https://www.kitamura.jp/shasha/article/483573391/
・星景写真の撮影テクニックと機材|齋藤朱門
https://www.kitamura.jp/shasha/article/483154709/
・滝・渓流での撮影テクニック|齋藤朱門
https://www.kitamura.jp/shasha/article/482531059/
・海での風景撮影テクニック|齋藤朱門
https://www.kitamura.jp/shasha/article/484586478/
・望遠ズームレンズで切り取る風景撮影の楽しみ方|齋藤朱門
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