ヒコーキ撮影テクニック|Vol.2 ~迫力のあるカット~
はじめに
2回目の旅客機専門のヒコーキ撮影テクニックは「迫力系カット」について。1回目の「スポッティングカット」編はこちらです。
ヒコーキ写真を便宜上ジャンル分けしますと、大きく「スポッティングカット」「迫力系カット」「情景カット」の3つに分けることができます。ただし、これらはあくまでもヒコーキ写真を説明するための便宜上の区分け。このように撮らなければならないということは一切ありませんし、四角いキャンパス上に無限の自由があるのが撮影の楽しみですから、これらを基本としつつ自分らしさを追い求めていただければと思います。
迫力のある撮影のコツとやり方
ヒコーキ写真において迫力のあるカットとする場合、やはりまず被写体である機体に「寄る」ということを考えます。自分の足で機体に近づくのも良いですし、望遠レンズを使って遠くから機体を手繰り寄せても構いません。
しかし、警備上の問題などから機体に近づくのは難しい場合が多いので、ヒコーキ撮影においてはおおよそ後者になるでしょう。寄りのカットを撮りたい場合は望遠…できれば超望遠域のレンズがマストになってきます。
難易度はスポッティングカットと同様、駐機している機体〜ゆっくり地上走行している機体〜着陸する機体〜離陸する機体の順。やはり、動きが速くなればなるほど難易度があがりますので、まずは駐機している機体やゆっくり動いている機体から試してみましょう。
スポッティングカットでは機体全体を入れ機体真横で撮ることを意識しましたが、迫力系カットを撮る場合は逆に機体のいち部分を切り取ることを意識します。
まずは自分の思うヒコーキのカッコいい部分に寄って切り取ってみましょう。切り取る場所は様々ですが、ノーズの先端やエンジンの端などキリの良い場所で切るのがオススメ。雲の無い青空や立体感の無い雲など情報量の少ない部分は画角からどんどん除き、できるだけ機体だけでビッチリと画角を埋めるのがポイントです。
オススメの構図は日の丸構図と対角線構図。日の丸構図というと機体を真ん中に入れるだけなので素人の構図というイメージをお持ちの方もいると思いますが、ドッシリとした印象を観た人に与えるため、迫力系カットでは欠かせない構図となります。
対角線構図は、機体の胴体などを線としてとらえ画角の斜めに配置する構図。浮いている機体の真正面や真横を横位置でとらえると上下にアキができがちなので、その部分を機体で埋めるために使うことが多い構図です。
はじめのうちは太陽を自分の背にする晴天順光撮影がオススメとなりますが、慣れてきたら逆光や側光での撮影もオススメ。印象的な光のラインを加えることにより迫力系作品の質が一段と上がります。撮影場所はより機体に近づける場所を考えるのがコツ。
動かない機体やゆっくり動く機体は展望デッキ、着陸機は空港外周の滑走路端のアプローチコース直下、離陸機は滑走路に沿った場所で撮ることが多くなります。
迫力のある撮影を引き出すカメラの設定
カメラの露出設定ですが、はじめのうちはシャッタースピード優先の自動AE(キヤノン社のRF/EFマウントのカメラの場合は「Tv」)。慣れてきたらマニュアルで設定しましょう。
機体の遠近や焦点距離にもよりますが、日中の晴天時であれば、動かない機体は1/250〜、ゆっくり動いている機体なら1/500〜、はやく動いている機体なら1/1000〜程度のシャッタースピードを目安として「このシャッタースピードなら機体をブラさずしっかり止められる」という、自分なりに止められるシャッタースピードを認識しておくのが近道。
絞りは機体の遠近がある場合は2〜3絞り、シャッタースピードに余裕が無い場合は開放とすることも少なくありません。慣れないうちはISOオートでも構いませんが、過度に高感度となってしまうこともあるため、慣れてきたら自分で数値を設定してみましょう。
まずはしっかりと機体を止めることが目的となりますので、シャッタースピードを最優先に考えるのがコツ。機体までの距離や動きに合わせて色々なシャッタースピードの数値を試してみましょう。
フォーカスの設定ですが、動かない機体の場合はワンショットAF、動く機体の場合は追従式のサーボAFを使用。AFエリアは動かない機体の場合は小さなピンポイントエリアでもOKですが、動いている機体の場合は少し大きめのAFエリアがオススメです。
手持ち撮影の場合、動かない機体はカメラをしっかり腕で固定して撮影。動く機体の場合は、機体の動きに合わせてカメラを動かしつつ、シャッターボタンを半押しし機体にAFを合わせ続けながら任意の位置でシャッターボタンを押し込みましょう。
フォーカスを合わせる位置ですが、慣れないうちは胴体の真ん中など、画角の真ん中にフォーカスエリアを設定し撮影しても構いません。しかし、絞りが開放などでは前後がややボヤけてしまうこともありますので、機体が真後ろを向いていたりしない限り、慣れてきたらコクピットウインドウなど機首寄りにフォーカスを合わせるのがオススメとなります。
迫力系カットの醍醐味は動きモノの被写体ならではのダイナミックな表現が可能なところ。ヒコーキならではの「力強さ」や「スピード」を表現するのに適した撮り方です。
晴天順光で撮るのも正攻法で面白いですが、流し撮りと複合して色々とアレンジすることも可能。機体のパーツだけに寄ってみる、ヴェイパーやタッチダウンスモーク、水しぶきなどと複合するのも作品のクオリティを一段と昇華させます。
おすすめの機材
このヒコーキ(旅客機)の迫力系カットにオススメのカメラやレンズですが、スポッティングカットを中心に撮るのと比べますと、性能に優れるカメラやレンズを必要とします。カメラ側の性能で重視したいのが、まずAF性能。こちらに向かってくる機体の撮影も多いため、サーボAFなど追従AFの性能が良好であれば歩留まりも良くなります。
また、連写性能もコマ数が多ければ多いほど有利。時速約300kmで飛ぶ機体をギリギリまで引きつけて撮影…ということが頻繁にあるため、ドンピシャのタイミングとなる一枚の前後のカットも撮影できているにこしたことはありません。手持ち撮影が多く、超望遠域の焦点距離を多く使うため手ブレ補正の性能も問われます。レンズ側の手ブレ補正の段数に加え、ボディ内手ブレ補正などもカメラに装備されていると良いでしょう。
レンズはズームレンズ、単焦点レンズと共に使用されます。前述の通り超望遠域の焦点距離が多用されるため、単焦点レンズの使用も多くなります。ヒコーキ写真においては、ボケ味よりも機体のディテール部分が詳細に解像されているかが重要。そのため、単焦点レンズのヌケの良さや、描写力の高さが威力を発揮します。
レンズ本体が持つ焦点距離を延ばす、エクステンションレンズアダプター(キヤノン社ではエクステンダー)を持っておくと便利。迫力系カットを撮影する際には使用頻度の高いアクセサリーとなります。
おすすめの機材
●オススメカメラはキヤノンのEOS R6とEOS R3
●オススメレンズはキヤノンのRF100-500mmとRF800mm F11
■写真家:A☆50/Akira Igarashi
絶景ヒコーキ写真を求め全国を駆け巡る瞬撮系航空写真家。雑誌、WEB、TVなど各種メディアに出演、作品を提供するかたわら大手航空会社やカメラメーカーなどのオフィシャル撮影を担当。公益社団法人 日本写真家協会会員。
A☆50/Akira Igarashiさんのヒコーキ撮影テクニック記事はこちらから
・ヒコーキ撮影テクニック|Vol.1 ~王道のスポッティングカット~
https://www.kitamura.jp/shasha/article/482855716-20210818/