スナップで街めぐり。一瞬の情景を愉しもう。Vol.4|清瀬(東京)

富久浩二

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はじめに

写真を撮り始めた場所が近所の清瀬だった。最初はカワセミに惹かれ、家に転がっていたカメラを持ち出して撮ろうと頑張ったが、ホバリングしているところすら一度も撮れずに挫折。そのあと通勤途中に何となく葉っぱばかりを撮っていたが、桜の時期に近所の川沿いに出かけてからというもの地元の素晴らしさに気づき、天気の良い休日は朝からカメラを持って散歩する様になった。やがて近所でのスナップ撮影にのめり込み作品の幅は徐々に広がっていった。

今日はそんな近所の写真から何かを感じてもらえると嬉しく思う。

柳瀬川沿いでの新人消防員の訓練

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■撮影機材:SONY α55 + MINOLTA AF ZOOM 35-105mm
■撮影環境:f/4.5 1/1000秒 ISO100 露出補正-0.3 焦点距離75mm(35mm判換算112mm相当)

日中に被写体迄の距離がこのくらいであれば、極端な設定になっていない限りそう失敗することはない。なので露出を見て問題なさそうだったので、構図の微調整に集中。いい感じで細かい赤が三角で結べたのでバランスが良くなったと思う。水以外すべてが止まっている状態なのであせる事なく丁寧にシャッターを切った。何ともほのぼのとする瞬間が撮れたと思う。 

柳瀬川沿いの土手の上

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■撮影機材:ソニー α77 + ミノルタ AF200/2.8G

満開の時期でも川沿いの団地の人が散歩に来るくらいの桜並木。雨が結構強く降っていたので人はいないだろうけど、面白い写真が撮れたら良いなと思い家を出た。誰もいないと思ったら、長靴を履いたおじいさんが自分の後ろからやってきて土手の上を歩き始めた。

そしてどう撮るか考える。最初から下の反射を考えていたわけではなかったが、望遠レンズを装着したカメラを地面に近づけると予想以上の反射が液晶モニターに見えた。そして人にピントが欲しいので拡大し調整。上下の淡い桜色に包まれたおじいちゃん、傘、白い長靴。複数のキーになるものが追加され普段見慣れない雰囲気の桜の写真となってくれた。 

丸い郵便ポスト

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■撮影機材:ソニー α7 II + Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA
■撮影環境:f/4.5 1/125秒 ISO100 露出補正-0.7 焦点距離55mm

ここは古いポストがあって特にお気に入り場所で、通るときは周囲を見渡して、車、自転車、通りすがりの人など、ここでスナップを撮るのに良い要素が来ないかなと気にしていた。そんな時、竹刀を持った方が現れて素振りを始めた。こんな出来事があるなんてびっくり。

カメラの光軸を人に直接向けると素振りをやめてしまいそうなので、少しずらして、ポストとの中間少し右に。あとは竹刀を振りかぶっているところでシャッターを切った。こんな思いがけない場面でも焦らず構図を作る。単焦点なので壁ぎりぎりまで下がってポストと竹刀を持った方を左右ギリギリに、真ん中に好きな南天の木と青いトタンが揃い、バッチリの構図となった。

赤いカラーコーン立ち並ぶ駐車場

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ここは古い団地の駐車場で、数年前に団地の取り壊しが決まってから駐車場には赤いカラーコーンが立ち並び、面白い光景になっている。そんな中、赤い服を着ている人が現れたので赤い服とカラーコーンの大きさを合わせてシャッターを撮ってみようと思った。

赤い服に光があたり影になり真っ黒になる直前にシャッターを切った。今見返すと、赤い服を着ている人の手前にあるオレンジ色の四角に囲まれている部分の右側のラインも見切れていないことに気がついた。偶然と言うよりは長いこと写真をやっていると無意識にこういったところも調整しているのかな、と感じた。

しだれ桜のある池

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桜の時期は朝と夕方に散歩がてら撮りに出かけるのだが、この日は夕日がとても綺麗だったので、橋を渡る人のシルエット狙いでスタンバイ。メインは桜なのでそちらにピントを合わせていると、突然少女が画面の中に現れた。そこでシルエットを強調したいと思い池に写っている太陽を少女で隠した。そして右側に写りこんでいる人の位置と桜の間で間隔を作るなどのバランスを調整してシャッターを切った。

ピカチュウ電車と女性

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■撮影機材:ソニー RX100V
■撮影環境:f/4 1/6秒 ISO400 露出補正+0.3 焦点距離14mm(35mm判換算37mm相当)

電車を降りたらピカチューの電車と、あきらかにピカチュウ好きの女性が目についた。普段なら電車が水平になるところにささっと移動して撮るところだが、ここは瞬間の方が大事。素早くカメラを取り出し撮影した。微妙に斜めになったが、写真の内容的に構図がどうかというものではないので、これでいいかなと。構図も大事だが瞬間はもっと大事で意識した方がいい。

こぼれたペットボトルの蓋

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■撮影機材:ソニー α7 II + Minolta MC TELE ROKKOR-PF 58mm f1.4

濡れた地面で手前に向かって放射状に蓋が広がって落ちているのを面白く感じて撮影した1枚。真上から撮るか悩んだが、左下の一個をこの位置にすることで広がりを感じる様な構図で捉えることにした。寄りたくなる場面でも、じっくり撮れる場合は引いて全体をよく見る癖をつけてみるといいと思う。

石の橋がある池

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桜の時期、ここではいろんなパターンの写真を撮っているので、ただ人が通るだけでシャッターを切ることはないのだが、ヘルメットを被っているちびっこが池の中を覗き込んでいる場面にでくわしたら話は別。このまま池に落ちてしまわないかとひやひやしながらシャッターを切った。ヘルメットの可愛らしさを出す為にしだれ桜越しにマニュアルフォーカスでヘルメットにピントを合わせた。こんな感じで普段なかなか出くわさない場面でも観察を行い、どのような構図が良いかを見極めることがとても大事なことだと思う。

ハートの桜と赤黄緑

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街を歩いていて常に意識している最高の色の組み合わせは信号機並び。赤黄青(緑)は都心でも珍しい場面なのに、郊外の川沿いでまさかの登場。見つけた場所から少し下がって、このハートの形の桜の木まで戻ってシャッターを切った。カメラをあと40cmぐらい下げて人とその奥にある団地との被りをなくせればもっと良くなったかな~と帰ってきて気が付く。カメラの高さはそれでいいのか?最後の調整で再度確認しなければと思った写真になった。

桜の土手

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満開になる前なので桜としての条件はいまいちだったが、散歩をしている子供達とすれ違うおばあちゃんのほっこりする場面に出会えた。戦後に植林されたソメイヨシノにも高齢化の波が来ていて、清瀬の桜並木も段々と寂しくなっている中、この様に下から見上げて撮れる最後の場所。あと何年撮れるかわからないが、このような写真が撮れてよかったと思う。近所で撮り続けているからこそ出会える場面も多い、朝の散歩のお供にカメラを持ってかけがえのない瞬間を残してみよう。

あとがき

東京の端っこ、清瀬。どうだっただろうか、池袋から準急25分でこんなほっこりできる場所がある。写真を撮り始めてから、ずっと撮り続けている場所で、いい写真が撮れない時の方が多いが、結局のところ気にいっている写真は地元が一番多い気がする。スナップであれば地元でもきっといい場面に出会えると思うのでカメラを持って出かけてみよう。

■写真家:富久浩二
日々の通勤風景を主に、いつも見ている変わりばえのない、しかし二度とやって来ない一瞬の情景を大切にし、ちょこっと人が入った物語りのある写真をテーマのもとに、人びとの優しく楽しい感情が伝わる事を目標に日々撮影している。子供の頃の目線、何と無く懐かしさを感じて貰える様に、ライブビューを使った低い目線、思い切って背伸びをした様な高さからの撮影が特徴的。

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