天候を味方に!条件を生かす撮影法|その1:晴天編
はじめに
風景写真と天候は切っても切り離せないもの。皆さんも天気予報を見たり、勘を働かせたりと苦労しながら撮影地に出向いておられるのではないでしょうか?いつも好条件に恵まれれば言うことなしですが、こればかりは予測通りとはいかず、思惑と外れてがっかりすることもありますよね。
しかし、そもそも自然は人間の思い通りにはならないもの。想定と違っても、その時その時の条件に合わせて撮らせてもらうくらいの気持ちが良いでしょう。そこで今回から複数回にわたって天候条件による撮影の秘訣をお伝えしてまいります。今回は晴れていて日差しがある時についてです。
晴天の光
直射光が降り注ぐ晴天時の光は「硬い光」だと言えます。それだけに光の方向や角度(太陽の高さ)明暗の割合に気を配る必要があります。反射も多いためPLフィルターをしっかりと活用しましょう。
PLフィルターについて詳しくはこちら
■PLフィルターとは?|使い方をマスターして風景写真をレベルアップ!
https://www.kitamura.jp/shasha/article/472240981/
光の向きと角度
被写体に対してカメラを構えた時、太陽を背にすれば順光。太陽に向かうと逆光。太陽が横にあればサイド光。それぞれの中間が半順光、半逆光です。角度は太陽の高さで決まり、早朝や夕方など太陽が低い位置にあるのか?それとも日中、太陽が高い位置にあるのか?また夏と冬では太陽の高さが異なります。
さらに言うなら北海道と沖縄など、地域が大きく離れるほど高さも随分変わりますので、そのあたりも考慮に入れる必要があります。
順光
全体に光が廻り、フラットな画面になります。特に日中の順光では被写体に陰影が付かず立体感が表現できないので、やや印象の弱い写真になりがち。但し、朝夕には鮮烈な直射光が被写体を赤く染め上げてくれます。
上はNGカット。順光での撮影のため色に冴えがなくフラットな印象となってしまいました。下はOKカット。同じ場所で撮影していますが、光の向きを予測、時間帯を変えたことで半逆光となり、陰影と色の鮮やかさを描くことが出来ました。逆光については後に詳しく触れます。
順光だからと言ってダメというわけではありません。陰影がなく立体感に乏しい印象ながらも雲が美しかったので空中心の構図で撮影しました。現状の光を把握しつつ明確な目的を持っていればOKです。
日の出直後の光が霧氷を照らします。朝夕の撮影ではついつい太陽にカメラを向けてしまいますが、時折、後ろや横も見渡してみましょう。
サイド光
陰影がつき立体感描写に優れるサイド光は、私が常に意識している光線状態です。日中、朝夕を問わず活用でき、風景の素晴らしさを自然な様子で伝えたい時にも向いています。特に太陽が低い季節や時間帯では、より立体感が引き立ちます。
春先だと太陽が高めの13時頃でも光の角度がつきます。絶妙な陰影が隠し味となり奥行き感が描写出来ています。
真夏の早朝、右からのサイド光で撮影。太陽の高度が上がってからだと陰影がつきにくく、足跡の印象が弱くなってしまったでしょう。
画面右からの朝日が被写体を照らします。低い光では陰影がよりハッキリと強調されます。
逆光
大きく陰影の付く逆光状態は順光やサイド光に比べて扱いが難しいと言えます。逆光で失敗してしまったという方も多いのではないでしょうか?手強い光線ですが、反面ドラマティックな作品が生まれる可能性も大きいので、積極的に選んでほしい光線状態です。
また、朝日や夕日に向かっての逆光撮影では空と地上との輝度差(明暗差)が特に大きくなるので、空だけを部分的に減光できるハーフNDフィルターを用いるか、持っていない方はカメラの明暗調整機能をうまく活用する必要があります。
※明暗調整機能
「Dレンジオプティマイザー」「オートライティングオプティマイザー」「アクティブDライティング」「諧調機能」「ダイナミックレンジ拡張」等、カメラメーカーによって呼び名が異なります。
芽吹きのみずみずしさが伝わってくるよう。若葉の透明感を逆光で描きました。光を透過しない幹がシルエット気味となることで力強さが表現出来ています。
朝日や夕日は難しい被写体のひとつ。明暗を整えるためにハーフNDフィルターを使用しています。
小鹿の毛並みをラインライトが引き立てます。この時、シャッターのタイミングが早いor遅いと小鹿がスポット光から外れ、背景に溶け込んでしまい失敗作品になってしまいます。判断を誤るとNGカット連発になってしまうのが逆光の難しい所です。
逆光では背景に水滴など光るものがあれば美しい玉ボケとなります。
晴天でありがちな失敗
気持ちの良い晴れた日の撮影ですが、硬い直射光の扱いは案外難しいもの。陰影がハッキリとしてコントラストがつきすぎるだけに「光の読み」を誤ると駄作を連発してしまうことも・・・。特に朝夕や秋冬など太陽が低いと注意が必要です。
上がNGカット。明暗が真っ二つで光のバランスが悪いですね。一方、下のOKカットは、さらに太陽が低くなり、山全体が影に覆われるのを待って撮影したものです。
ただし、空と滝との輝度差が非常に大きくなるので、ハーフNDフィルターとカメラの明暗調整機能を使用して画面全体の明るさのバランスを取っています。
上がNGカット。光の分布が悪く画面の中央付近が暗く落ち込み、たるんで見えます。一方、下のOKカットは光の分布が良い所を狙っているので、木洩れ日のリズム感が表現できています。
こちらはOKカット。スポット光を狙いました。前述2組の写真では明暗の分布が悪いと失敗になってしまうとお伝えしましたが、輝度差が大きいことが悪いわけではありません。光の入る位置が重要なのです。
まとめ
今回は直射光のある晴天条件に関して撮影のポイントをお話して参りましたがいかがでしたか?実際に肉眼ではきれいに見えていても撮ってみると今ひとつ・・・という経験が誰しもあるでしょう。それは「光の読み」が悪かったとも言えます。
常々私が撮影している中で最も意識しているのは、その「光」で被写体を撮っているというよりは「光」を撮っていると言っても過言ではありません。この記事をお読みいただき、これまであまり考えていなかったと感じた方は是非参考にしてくださいね。
最後までお読みいただきありがとうございました。次回もお楽しみに。
■写真家:高橋良典
(公社)日本写真家協会会員・日本風景写真家協会会員・奈良県美術人協会会員・ソニーイメージングプロサポート会員・αアカデミー講師
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