スナップで街めぐり。一瞬の情景を愉しもう。Vol.5|銀座
はじめに
都心でのスナップは朝早めに撮ることが多いが、銀座の場合は時間をそれほど気にせず昼間に撮ることも多くある。その理由として道幅や歩道が広いので他の街と比べると人の密度が低くなることや、超高層ビルが少ないので昼間でも歩道に日が差すことがある。夕方の光も捨てがたいが、日中の光が強くなる時間帯の銀座も見逃せない。今回はそんな銀座をどう考えながら撮っているのか紹介したい。
水谷橋公園
銀座以外ではなかなか見ることがない建物の4階屋上にある新しくできた公園。遊具も特になく屋上にあること以外は特徴もない公園だが、水玉模様のガラスの塀が特徴的で太陽の光が当たるとこの模様を生かした面白い写真を撮る事ができる。ここで大事なのは手前の丸をぼかしてしまうと特徴が薄くなってしまうのでF8~F16辺りまで絞ることだ。こうする事で沢山の丸をしっかり丸く、道路の人もくっきり写すことが出来る。あとは道路のダイヤと止まれの位置で構図を微調整。主題の三人を目立たせるため、先のごちゃごちゃした景色は写さないようにレンズを下に向けて写し止めた。
二丁目、建設中の東急プラザ
工事現場のブルーシートが好きでよく撮っているのだが、迫力のあるこの大きさ、雨で模様ができていたのと、警備の2人が暇そうにしているのが気になりシャッターチャンスを伺っていた。そこに和服の方が歩いてきたのでバランスを考えてシャッターを切った。このように大きく建物を入れるときは水平、垂直をかなり気にしている。あとは人の間隔と足の開き具合。この4人が少しでも意味がある所で写し止めたいと考えている。
一丁目、黄色いタクシーと自転車
ここまでの色の組み合わせを気にしているわけではなかったのだが、すべての黄色が偶然そろった。色を気にして撮る事はもちろん多いのだが、この時は、この50と50の間を自転車が駆け抜けたらかっこいい写真になるかなと思っていた。そこに自転車が来たのでシャッターを切ろうとした時、あ、リュックも黄色である事に気づいた。ラッキーだなと思って、写真を見返すと更に二台のタクシーも黄色で嬉しかった。
二丁目裏通り
青いラインのトラックが気になっていたところに、正面から青いシャツの運転手がやってきた。青い線に近づいてシャッターを切ってみると流星っぽくなり、お気に入りの1枚になった。超広角のマニュアルフォーカスのレンズは距離計を30cm以上にしてF8当たりにしていればピントを気にせず瞬間を狙えるのでシャッターチャンスにめっぽう強い。なので超広角レンズを装着した小型カメラをサブ機として持ち歩くことをオススメする。
数寄屋橋交差点
特に撮るような場面でもなかったのだが、女性が突然傘をくるくる回しはじめ、これは!と思いカメラの設定をシャッター優先の1/20秒に変更し、回っているのがわかる様に撮ってみた。こんな感じで街で突然現れる出来事を普通に絞り優先で撮っていては表現ができないなと思った時は、撮影モードをシャッタースピード優先にすることをオススメする。人間、車、電車でも1/20秒辺りにすると面白い絵になる事が多い。傘が丸いので画面の真ん中にもっていっても面白い絵になったと思うが、傘のラインと、交差点のラインを合わせることができたので写真に深みが出たかなと思う。
東急プラザ
有名な撮影スポットでどう撮っても同じようになってしまう場合、一歩下がってみることをオススメする。ガラスにくっつくとそのレンズの画角だけで広さを調整しずらくなるが、下がってみると見えてくるものは意外と多い。この場合は左下に姉妹が現れて、右手をガラスに。どんな場所でも一つ物語を探してみる。難しいけれど何かを見つけた時の写真は記憶に残ってくれる。
八重洲通
銀座から少し離れてしまうが、八重洲通にあったフードコート。カラーコーンが重ねて置いてあるのは特に珍しくもないが、これだけ違う色でカラフルに重ねてあるのは初めて見たので、面白く撮れないか色々と悩んでみる。三角のコーンの形が分かると引かないといけなくなるので、沢山の色の重なりが見える下の部分を超広角レンズを装着したカメラで寄ってみた。真ん中にオレンジの服の人を入れようとすると右側の空間に入れるものはほぼ決まってしまうが、真っ青な空と草の緑を少しでも入れることによって右側とのバランスを取った。
水谷橋公園 カーブミラーに赤い傘
1枚目の写真と同じ場所から向きを変えて撮影した。カーブミラーに赤い傘の人が映り込むタイミングを狙ってシャッターを切った。赤い傘の人だけでも十分いい場面だが、そこに常にプラス1を探す癖をつけると印象的な写真になる事が多い。これはいきなり気づいて撮れた訳ではなく、その前の観察から始まっている。ちらりと目に入った気になるものを次にどう繋げるかを考えて撮影するのがスナップの醍醐味だと思う。
一丁目裏通り
この場所は、この通りを歩いていた時に見つけた訳ではなく、離れた所からビルの壁に複雑な光が見え、近づいてみたら道路にまでいい光が差し込んでいた。この場面で大事だと思うことは超広角レンズを装着したカメラをできるだけ高い位置に持って行き、レンズの光軸を少し下に傾けること。こうする事で道路にある点々の光を沢山取り込めるのと、奥行き感を出すことが出来る。また少し斜めにすることで広がり感を強調した。後ろから来る人を正面に通って貰うために真ん中で構えず端に避けて誘導。道路のダイヤマークと重ねる事によって人の形が引き立ち、想像以上の絵になってくれた。
和光のショーウィンドウ
銀座で一番いい場所にある有名なショーウィンドウ、数か月に一回の入れ替えの日にたまたま通りかかった。扇風機だけがスポットライトが当たり真ん中で回っているシュールな状況。寄って撮ると状況が分かりにくくなるので、引いてガラスの中に反射している銀座の街が分かるくらいの露出で撮ってみた。こんな風にまず、些細な事でも面白いって思うことが大事だと思う。そしてそれをどう面白く表現していくか。寄って行くと選択肢が減る気がするので自分はまず引いた状態から、どこまでを入れるのが良いかを考えるようにしている。
あとがき
銀座のスナップはどうだっただろうか。今回は有名どころは少なめで自分が歩いて見つけた場所をメインに紹介した。歩道も広く観光客も多いので比較的スナップは撮りやすいが、個性を出すとなると一気に難しくなる場所でもある。普段皆が歩いていない場所、少し俯瞰ができる場所などを捜し歩いていくことから始めると、自分だけの写真が撮れる確率がぐっと上がると思う。
■写真家:富久浩二
日々の通勤風景を主に、いつも見ている変わりばえのない、しかし二度とやって来ない一瞬の情景を大切にし、ちょこっと人が入った物語りのある写真をテーマのもとに、人びとの優しく楽しい感情が伝わる事を目標に日々撮影している。子供の頃の目線、何と無く懐かしさを感じて貰える様に、ライブビューを使った低い目線、思い切って背伸びをした様な高さからの撮影が特徴的。