【フイルムカメラ】小さなボディに大きな魅力が詰まった「ローライ35」
はじめに
今回セレクトしたカメラは、1967年に発売されコンパクトカメラブームを巻き起こした「ローライ35」です。このカメラは筆者が生まれた年に発売されたカメラで、非常に愛着のあるカメラです。もちろん発売年だけでなく、コンパクトなボディに凝縮された機能をまとめあげたデザインは、とても格好いいデザインで、どんなシーンに持ち出しても目を引くカメラです。
普段はコレクションの一つとして眺めたりして楽しんでいるカメラですが、久しぶりにフイルムを装填して持ち出してみました。「ローライ35」は、デジタルでは味わえない不自由さと撮影の際に考えさせられる事が多く、奥深いカメラです。
ローライ35の魅力と特徴
「ローライ35」は24×36mm判でありながらレンズを沈胴式にしたことで小型化に成功し、1967年に発売開始されました。当時流行していた24×18mm(ハーフ)判カメラよりも小さいサイズのボディで「24×36mm判」、「Carl Zeiss」のレンズという事もあって世界中で人気を得ました。
今回紹介する筆者が所有している「ローライ35」は、シンガポール製です。
発売当初はドイツで作られていましたが、コスト削減の為か1970年代に製造拠点をシンガポールに移しています。「ローライ35」はカメラの背部に製造国が刻印されているので、購入する際には簡単に見分ける事ができます。シンガポール製の「ローライ35」はレンズも「Carl Zeiss」の「Tessar 40mm F3.5」から、ローライ製の「Tessar 40mm F3.5」に変更されています。そういった仕様の変更などもあって、中古市場ではドイツ製の「ローライ35」の方が高い価格で取引されています。
「ローライ35」のシリーズは、
「ローライ35」 (レンズはテッサ―、露出計はCdS式)※一部違うレンズが存在します
「ローライB35」(トリオターレンズ、スローシャッターなし、露出計がセレン式)
「ローライC35」(スローシャッターなし・露出計なし)
「ローライ35S」(レンズがソナーの高級モデル)
「ローライ35T」(ゾナー付きが出た後の初代テッサ―レンズのRollei35の名称)
「ローライ35LED」(トリオターレンズ、スローシャッターなし、露出計がSPD式)
「ローライ35SE」(レンズがゾナーで、露出計を指針式からLED式に変更)
「ローライ35TE」(レンズがテッサ―で、露出計を指針式からLED式に変更)
「ローライ35クラシック」(ローライ35Sの復刻版)
など多くのモデルが存在します。
それぞれレンズの種類が違ったり、露出計の仕様が違ったり、スローシャッターが省かれたりしています。自分の好みに合った「ローライ35」を探すのも楽しみの一つですね。
「ローライ35クラシック」の取扱説明書(PDF)が、現在も株式会社ケンコープロフェッショナルイメージングのサイトで見ることができます。
https://www.kenko-pi.co.jp/horseman/manual/Rollei/Rollei35_Manual.pdf
ローライ35の基本スペック
「ローライ35」シンガポール製の基本的なスペックです。
使用フイルム |
35mmフイルム |
画面サイズ |
24mmx36mm |
レンズ |
Tessar 40mm F3.5 |
シャッター速度 |
レンズシャッター B、1/2~1/500秒 |
露出計 |
追針式露出計 |
フイルム感度 |
手動 ASA(ISO)25~1600 |
ピント合わせ |
目測式 |
最短撮影距離 |
0.90m |
ファインダー |
ブライトフレーム式 |
ファインダー内表示 |
撮影範囲枠 |
電源 |
PX625、MR-9(H-D) |
発売年 |
1967年 |
「ローライ35」で使用する電池は水銀電池「PX625」で、現在は生産中止になっている電池です。使用するにはサイズ互換のアルカリ電池や変換アダプターなどを使用します。その際には電圧1.35Vのモノを使用します。1.5Vのモノを使用すると露出計の精度は正しく出ません。
「ローライ35」の電池に関しては露出計に使用するものなので、電池がない状態でも露出計が作動しないだけで撮影する事は可能です。
カメラ上部から見て、左側のダイヤルがシャッター速度の設定。右側が絞りの設定。真ん中のレンズの先端部でピント調整(目測:0.9m~6m・∞)。
ローライ35で潮来・佐原・房総のむらをツーリングスナップ撮影
小さな「ローライ35」をポケットに入れて、愛車のCT125で潮来・佐原方面をツーリングしながら撮影を楽しんでみました。
撮影に出たタイミングで、「ローライ35」の露出計が動かなくなり多少焦りましたが、そういったトラブルも古いカメラを楽しむ一環なので、日頃の撮影イメージを頼りにシャッター速度と露出を決めながら撮影を楽しんでみました。
結果は少し露出オーバーのものがありましたが、概ね適正露出で取れた感じです。ラティチュードの広いカラーネガのおかげで、まあ100点満中80点ぐらいの及第点は取れたと思います(笑)
露出の方はなんとかなるものの、少し手こずったのは目測による距離の設定です。風景などを撮るシーンで距離の目測を6m以上無限大に設定する場合は、まったく問題ないのですが、距離が1m~6mぐらいの間の被写体を撮影する場合の距離決めが、慣れないと難しいかもしれません。
下の写真のようにピントが合ってないパターンが数カットありました。目測で合わせるピントリングの動きが非常に軽いので、撮影時に常に気にしておかないと不用意に動いてしまいます。無限遠で撮影していたと思っていたのに、ピントリングが動いてピンぼけ写真になっていたものもありました。
まとめ
50年以上も前のカメラなのに、古さを感じさせないデザイン。「ローライ35」は持っているだけでも写真に対するモチベーションをアップさせてくれるカメラで、撮影すれば感性が磨かれ、忘れていた感覚を取り戻してくれるカメラ。
慌てずゆっくりと時間の経過を楽しみながら被写体を観察してシャッターを切る。失敗してもそれも楽しい、デジタルでは味わえない不自由さを楽しむカメラです。「ローライ35」の小さなボディはバッグに忍ばせておいてもそれほど苦にならないサイズ。いつでも持ち歩きたい素敵なフイルムカメラです。
■写真家:坂井田富三
写真小売業会で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。 撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ、ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
その他のフィルムカメラ記事はこちら
・ペンタックスフイルムカメラの最高峰・フラッグシップ機「PENTAX LX」
https://www.kitamura.jp/shasha/article/487092087/
・京セラ CONTAX T2 レビュー|高級コンパクトフイルムカメラの先駆者
https://www.kitamura.jp/shasha/article/487880282/