スナップで街めぐり。一瞬の情景を愉しもう。Vol.8|上野

富久浩二

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はじめに

 東京駅から東側は古い町並みの名残りがありスナップを撮っていて楽しい場所が多い。そんな中一番最初に思い浮かぶのがここ上野だ。歩いてみると他の街と年齢層が明らかに違い、すれ違うのはお年寄りと子ずれの親子割合が多く若者が少ないように感じ、何だか不思議な空間に思える。駅周りは工事も終わって綺麗になっているが、上野公園側は昔の面影もある。今回はそんな上野周辺をどう撮ってみたのか紹介したいと思う。

国立西洋美術館前

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■撮影機材:ソニー α7R III + Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS

 今年の3月くらいまで上野駅公園口を出ると右手に真っすぐ工事中の白い壁が200mぐらい続いていた。普段この手の白い壁を見てもそそられないのだが、この場所は道幅が広く離れて撮ることができるので、何か面白い画が撮れるかもと思い、まずは距離をとって観察してみた。太陽の位置が丁度良かったようで、白い壁には太陽の陽が当たり人はシルエットになっていた。そこで影絵みたいな写真が撮れるかなと思い撮影のスタンバイをした。こんな感じで人が7、8人画面の中に入る時はとにかく人の間隔を意識して被らないようにする。あとシルエットが三角になる人が入ると、とても良い絵になってくれると思う。
(今は工事終わっているが新しい柵もなかなか良い感じになっている。)

公園の噴水

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■撮影機材:ソニー NEX-5R + LAOWA 9mm F2.8 Zero-D

 白いシャツの子供が3人、噴水脇を行ったり来たりしていた。噴水が激しく高い時は全く気にもしていなかったのだが、少し弱まった時にシャツと同じ大きさになる事に気付いた。また当時噴水が2、3台故障して隙間が空いていたので子供達が出来る限り、その隙間に入ったタイミングでシャッターを切ろうと思い撮影した。一人だとそうでもないが3人となると奇跡のように感じる。

公園口、ロータリー前(1)

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■撮影機材:ソニー α7R III + Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS

 オレンジ色のアウターを着た親子が後ろから来て私を追い抜いていった。普段は服の色が同じというだけでは反応しないが、この時はペダル無しの自転車に乗る子供が気になり興味を持った。周りの同じ色を探してみると、自転車下の点字ブロック、コーナーにある4つの矢印、右下にある3つのポールの色が一致した。この写真で見てほしいところは右下ギリギリのポールの黄色い部分だったりする。ここまで気を使って構図を作っている感がでてくれるから(笑)。

噴水周りの花壇

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■撮影機材:ソニー α7R III + Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS

 上野公園にはこんな感じでのんびりとベンチに座っている人が沢山いる。チューリップと奥のベンチに座っている人物のアウターの色が黄色で同色だったので、ちょっとひねってユニークな写真を狙ってみることにした。レンズ望遠端の70mmで花と人物が同じ大きさになるように調整して撮影。この写真は花、人物のどちらがぼけても面白さが半減してしまうのでf/20まで絞って撮影した。

公園口、ロータリー前(2)

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■撮影機材:ソニー α7R III + Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS

 ロータリーの手前にあまり見かけない道路標識があった。普通に見るとひし形になるのだが、面白くする為にカメラを右に45度傾けてみた。買い物袋の黄色、左上の男性の黄色と三つそろったところでシャッターを切った。たまには角度で遊んでみると作品の幅が広がると思う。

文化会館横の銅像下

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■撮影機材:ソニー α7R III + Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS

 黒い大理石の反射はよく使うのだが、ここはかなりの好条件。雨の中白い壁の手前の人の往来が多くあったので、色付きの傘の人が通るのを待つ。白い壁の上の方まで写ると不思議な感じが薄れるのでギリギリを切り取り、下の大理石に写る木を中心に構図を作った。木の隙間に人がちょうど一人入って、右側にいい映り込みが出来た瞬間にシャッターを切った。カメラは地面と右側の壁にくっつけた状態。極端な位置で撮った写真は個性的になってくれる。

ハロウィーンのアメ横

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■撮影機材:ソニー α7R III + Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS

 ハロウィーンの時期にはじめてアメ横を通った。仮装している子供が沢山いたのだが、私の目に留まったのはこの提灯。同じ横縞模様の人がいたので、提灯を頭にすると面白そう。ギギギっと首が180度後ろ向きで撮ることに決めた。ここで大事なのはカメラの位置、距離を微調整して提灯と人の大きさに違和感を出さないこと。ファインダーで撮っているとこれができないのでライブビューで撮る。人は動くので難易度は高いが立体的にカメラを動かすいい練習にもなると思う。

お店の幟(のぼり)と縞々模様

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■撮影機材:ソニー NEX-5R + LAOWA 9mm F2.8 Zero-D
■撮影モード:ミニチュアモード

 不動産店舗によくある幟。これだけだと少し弱いのだが、横断歩道が近くにあったのでその縞々模様だといい絵が作れると考え、軽く何かしらの関連がありそうな人が来るのを待った。横断歩道の先にいい感じで赤いスエットの人が立ち止まってくれた。風があったので幟がはためいて、幟の2人にペットが入る位置で撮れたのがよかったと思う。

公園口

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■撮影機材:ソニー α7R III + Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS

 雪が降った翌日に公園口へ向かった。日差しが強かったので日傘の人も多かった。この場所でずっと被写体を待っていた訳ではなかったのだが、日傘の母親と子供が駅の改札から出てきたのが見えたので、軽く意識はしていた。目の前に近づいてきたところでこの形になった。後ろを歩く人の中にも日傘をさす人がいればそのまま撮っても面白かったが、そういう人は現れなかった。反射が少ないので普段あまり近づかない白い鏡面反射の大理石にレンズを近づけてみたら、光の強さの関係か、意外と綺麗な反射が見えた。これだけではちょっと弱いと思ったときは近くにある何かにレンズを近づけてみると更に良くなることが多い。

文化会館

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 有名な青と赤のドア。以前は近くから正面で撮ることしかできなかったのだが、上野駅が改装後は駅2階のテラスからこのように撮れるようになった。新しくできた施設そのものに興味はなくても、新しい視点で撮れることがあるので、あそこから撮ると面白くなるかもって思うことで、誰もまだ撮っていない角度からの写真を撮ることが出来ることがある。2階のテラスは屋根があるので雨の日でも撮りやすい。駅の改札から沢山の傘の人が出てくるのでお勧めだ。

あとがき

 上野のスナップいかがでしたか?
いろんな施設は新しくなってもなんとなく昭和の雰囲気が今も残っている。歩く人たちも公園ということもあって表情が明るく、楽しい瞬間が沢山ある場所だ。沢山の施設があり一周するだけでいろんな出来事に出会える。今日はうまく行かないな、と思ったら動物園や博物館に入ってリフレッシュもできる。最近あまりいいスナップが撮れていないなと思ったときに行ってみるといい場所なのかもしれない。きっといい瞬間に出会えると思う。

■写真家:富久浩二
日々の通勤風景を主に、いつも見ている変わりばえのない、しかし二度とやって来ない一瞬の情景を大切にし、ちょこっと人が入った物語りのある写真をテーマのもとに、人びとの優しく楽しい感情が伝わる事を目標に日々撮影している。子供の頃の目線、何と無く懐かしさを感じて貰える様に、ライブビューを使った低い目線、思い切って背伸びをした様な高さからの撮影が特徴的。

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