コンパクトでコスパGOOD!優しい描写が魅力的な大口径レンズ|七工匠(しちこうしょう)7Artisans 85mm F1.8 AF ニコン Zマウント

水咲奈々
コンパクトでコスパGOOD!優しい描写が魅力的な大口径レンズ|七工匠(しちこうしょう)7Artisans 85mm F1.8 AF ニコン Zマウント

はじめに

フルサイズ機対応の大口径レンズ「七工匠 7Artisans(セブンアーティザン) 85mm F1.8 AF」のラインナップに、新たにZマウントが加わりました。今回は、本レンズの魅力をポートレートでレビューいたします。

驚きのコンパクトさ!

■撮影機材:Nikon Z 8 + 七工匠 7Artisans 85mm F1.8 AF
■撮影環境:絞りF1.8 1/320秒 ISO640 AWB ピクチャーコントロール:ポートレート

まず、85mmの中望遠画角とF1.8の大口径レンズなのに、そのコンパクトさにとても驚かされます。最大径約72mm、長さ93mm(マウント部除く)で、レンズ単体なら手のひらに収まる小ささです。

重さは約452g。上から、下から、隙間からと、ポートレートにしてはアクティブに動き回って撮影することの多い筆者には、ありがたい軽さでした。

手に馴染むシンプルなデザインで、絞りリングのトルクは粘りのある重めタイプ。ここが軽いと、撮影時に手が当たって知らないうちに絞りが変わっていた!なんてこともあるので、筆者は重めタイプが好みです。

優しいボケ味と奥行き感を作り出してくれる急激なグラデーション

■撮影機材:Nikon Z 8 + 七工匠 7Artisans 85mm F1.8 AF
■撮影環境:絞りF1.8 1/200秒 ISO400 WB:5200K ピクチャーコントロール:ポートレート

レンズ構成はEDレンズ2枚、高屈折レンズ2枚を採用した7群10枚構成。ピントの合った箇所はシャープながら、ボケ味は最近のレンズにしては珍しく、かなり柔らかいです。

絞り開放時の、ピント面からボケへのグラデーションの山は、ジェットコースター的な急激タイプです。ピント面から外れた箇所はガクッと勢い良くボケ始めるので、ドラマティックな画を作りやすいです。

たとえば、片方の目にピントを合わせてもう片方の目をボカすことで、アップのシーンでも、顔だけで奥行き感を作り出してくれます。この描写とボケ味の柔らかさの相性がとても良く、ふんわり優しいムードのポートレートが好きな筆者としては、絞りたくなくなるレンズでした。

静かで素速いAF

■撮影機材:Nikon Z 8 + 七工匠 7Artisans 85mm F1.8 AF
■撮影環境:絞りF1.8 1/200秒 ISO400 AWB ピクチャーコントロール:リッチトーンポートレート

AFはSTM(ステッピングモーター)を採用し、静かで素速いピント合わせが可能です。AFが苦手な暗いシーンや強い逆光時でも、Nikon Z 8の顔検出、瞳AFが問題なく使用できました。

絞り羽根枚数は11枚で、光のにじみやボケのグラデーションを自然に描いてくれます。半逆光時のハイライト部のグラデーションは、ポートレートにピッタリのナチュラルさで感動しました。

強い逆光時に現れるドラマティックなフレアー

■撮影機材:Nikon Z 8 + 七工匠 7Artisans 85mm F1.8 AF
■撮影環境:絞りF1.8 1/200秒 ISO400 AWB ピクチャーコントロール:リッチトーンポートレート

ポートレートは逆光の状態で撮ることが多いのですが、撮影者が眩しくない程度の逆光や半逆光での状態では、ピントのシャープさとボケの柔らかさのバランスが程良く、大半の方に好まれる描写だと感じました。

ところが、撮影者が眩しいほどの強い逆光の状態や、レンズに直接光が当たるような状態で撮影すると、オールドレンズのようなフレアーが発生することがあります。これが面白い!

画面全体に紗がかかった描写になり、いわゆるソフトフォーカスフィルターを使ったようなムードになります。かといって、肌や髪の質感が大きく損なわれる訳ではなく、綺麗に描いてくれています。どんな状況ならこの現象が現れるかを色々試してしまうほど、このドラマティックな描写がお気に入りになってしまいました。

どんどん持ち出して使える、良コスパレンズ

■撮影機材:Nikon Z 8 + 七工匠 7Artisans 85mm F1.8 AF
■撮影環境:絞りF1.8 1/200秒 ISO400 AWB ピクチャーコントロール:ポートレート

85mmのポートレートにピッタリの焦点距離で、F1.8の開放値なのに、6万円ちょっとで買えてしまうレンズなので、中望遠画角が好きな方、ポートレート用のレンズが欲しいけど、どれを買っていいか迷っているポートレート初心者の方には、とりあえず買って使ってみることをお勧めします。

あまりにも高価過ぎて、持ち出すのに躊躇してしまうレンズでは買う意味がないし、いいレンズだけど、重くて大きくて使用頻度が少ないようでは、せっかく所持しているのにもったいないですものね。この描写性能で、この価格帯のレンズは希少です!

明暗のコントラストが綺麗!

■撮影機材:Nikon Z 8 + 七工匠 7Artisans 85mm F1.8 AF
■撮影環境:絞りF1.8 1/200秒 ISO640 AWB ピクチャーコントロール:ポートレート

撮影最短距離は0.8mなので、ポートレート撮影をしている限りは、問題を感じません。撮影最短距離を超えて撮影したくなることは、ほぼないでしょう。寄りも引きも描写は綺麗ですが、明暗のコントラストが綺麗なので、顔や髪の質感が楽しみで、今回は特に寄りのカットが多くなりがちでした。

ポートレート撮影には必要十分な、優しい描写が得意なレンズ

■撮影機材:Nikon Z 8 + 七工匠 7Artisans 85mm F1.8 AF
■撮影環境:絞りF1.8 1/200秒 ISO400 AWB ピクチャーコントロール:リッチトーンポートレート

七工匠(しちこうしょう)は、写真愛好家のレンズ開発プロジェクトから始まった中国深センのレンズメーカーで、コスパの良い、質感の高いレンズが多く販売されているのですが、MFの製品が多くもありました。

そのなかで、中望遠画角のAFレンズを発売とは、なかなか攻めているなと思ったのですが、使ってみると納得の性能。多分、本レンズの4倍以上の価格の、同スペックのレンズとAF速さ比べをしたら、それはさすがに性能の差が出るかもしれません。ですが、これだけテンポ良くポートレート撮影ができるなら、もう必要十分だと思いました。

優しめの描写が得意なレンズなので、カリッとした描写よりも、オールドレンズ的なふんわりボケ味が好みの方にお勧めしたいレンズです。

 

■モデル:大川成美
https://x.com/NaRu_0320
https://www.instagram.com/naru_coco/

 

■写真家:水咲奈々
東京都出身。大学卒業後、舞台俳優として活動するがモデルとしてカメラの前に立つうちに撮る側に興味が湧き、作品を持ち込んだカメラ雑誌の出版社に入社し編集と写真を学ぶ。現在はフリーの写真家として雑誌やWEB、イベントや写真教室など多方面で活動中。興味を持った被写体に積極的にアプローチするので撮影ジャンルは赤ちゃんから戦闘機までと幅広い。日本写真家協会(JPS)会員。

 

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