【オールドレンズ】ナチュラルな描写が魅力、緑のロッコール「ミノルタ オートロッコール PF 58mm F1.4」
はじめに
今回のオールドレンズのセレクトは、ミノルタの「オートロッコール PF 58mm F1.4」です。以前の記事でもミノルタのオートロッコール(55mm f1.8)を紹介しましたが、今回は58mmのF1.4のモデルになります。このレンズも、1961年から発売されたミノルタのフィルムカメラ「SR-1/SR-2/SR-3」のセット用レンズになっていたレンズです。
この頃のロッコールレンズは、カラーフイルム撮影に最適な2層のコーティング「アクロマティックコーティング」が施されています。このミノルタ独自のコーティングされたレンズは、レンズの反射した光によって緑色に見える事から「緑のロッコール」、「緑のレンズ」と呼ばれています。
そんな味わいのある「オートロッコール PF 58mm F1.4」の魅力とその実際の写りをご紹介いたします。
ミノルタ「オートロッコール PF 58mm F1.4」の魅力
緑のロッコールレンズ「オートロッコール PF 58mm F1.4」には、発売年度の違いによって4種類のモデルが存在します。基本的な仕様は変わっていないようですが、外観(表示・フィルター枠の仕様など)やレンズの大きさなども変更されています。
筆者が所有している2本の「オートロッコール PF 58mm F1.4」を比べてみました。左が前期型で右が後期型と言われるものになります。後期型になるとレンズの筺体サイズも少し小さくなっているのが分かります。筆者的にはフィルター枠の銀枠が好きなので、前期型を愛用しています。以前にレビューしたミノルタ「オートロッコール PF 55mm f1.8」も銀枠のついたものを愛用しています。
ちなみに、「オートロッコール PF 58mm F1.4」と「オートロッコール PF 55mm f1.8」を比較してみました。同じ標準のキットレンズですが、焦点距離も微妙に違うレンズです。大きさや重量などもそれほど違いが無いのですが、写りに関しては少し性格が違ってきます。「オートロッコール PF 55mm f1.8」は解像度の甘さや、周辺部の光量落ちが大きくオールドレンズらしい描写をしますが、「オートロッコール PF 58mm F1.4」は、「オートロッコール PF 55mm f1.8」よりも周辺部の光量落ちも少なく解像感も少し上回っています。
オートロッコール PF 58mm F1.4 | オートロッコール PF 55mm f1.8 | |
焦点距離 | 58mm | 55mm |
レンズ構成 | 5群6枚 | 5群6枚 |
開放絞り | F1.4 | F1.8 |
最小絞り | F16 | F16 |
フィルター径 | 55mm | 55mm ※後期型は52mm |
絞り羽根枚数 | 8枚 | 8枚 ※後期型は6枚 |
最短撮影距離 | 0.60m | 0.50m |
マウント | ミノルタSRマウント | ミノルタSRマウント |
ちなみに、レンズ名についている「PF」というのはレンズ構成を意味しています。最初の1文字目はレンズの群数で2文字目はレンズの枚数を意味しています。Pは5群、Fは6枚になるので、「PF」は5群6枚のレンズ構成となります。
▼ミノルタ オールドレンズモデル名
1文字目 | 2文字目 | ||
T | 3群 | C | 3枚 |
Q | 4群 | D | 4枚 |
P | 5群 | E | 5枚 |
H | 6群 | F | 6枚 |
S | 7群 | G | 7枚 |
O | 8群 | H | 8枚 |
N | 9群 | I | 9枚 |
J | 10枚 | ||
K | 11枚 | ||
L | 12枚 |
ミノルタの人気のあった一眼レフ機「SR-2」などの標準レンズとして発売されていた事もあって、現在の中古市場でも「オートロッコール PF 58mm f1.4」は数量も多くあり、程度によって値段のいろいろはありますが、非常にリーズナブルな価格で入手することができるレンズです。
今回使用したマウントアダプターは、オートフォーカスで使える「TECHART LM-EA9」とミノルタMD・MC・SRマウントに対応している「K&F Concept KF-SRM2」を合わせて、ソニーαで使用して撮影をしてみました。
ミノルタ「オートロッコール PF 58mm F1.4」で旅行スナップ撮影
所用で名古屋方面に行った時に時間があったので、以前から気になっていた愛知県犬山市にある野外民族博物館「リトルワールド」に行ってみました。広大な屋外の敷地に各国の伝統的な建物が展示されており、フォトジェニックな被写体も沢山あり、一日写真を楽しめるスポットでした。
さすがに半世紀ほど経過しているオールドレンズなので、コーティングの劣化やレンズ個体の状況の変化もあり逆光やサイドからの強い光には弱いです。今回の撮影では、オールドレンズらしい虹色ゴーストが盛大に発生するようなシーンもありました。虹色ゴーストをあえて発生させて、現代のレンズではできない撮影を楽しむのもオールドレンズの魅力の一つです。
「ミノルタ オートロッコール PF 58mm F1.4」は、背景のボケに関しては少しうるさい感じのボケをしますが、全体的に癖の少ない自然な写りをするのが特徴的なレンズです。
ミノルタ「オートロッコール PF 58mm F1.4」でお散歩スナップ撮影
「オートロッコール PF 58mm F1.4」を持ってご近所をお散歩しながら撮影をしてみました。普段から50mmの単焦点レンズを使用する事が多いのですが、この「オートロッコール PF 58mm F1.4」は焦点距離58mmと少し変わった焦点距離なので、使ってみると少し違和感を覚える人もいるかもしれません。
梅雨の間の晴れ間にアジサイを撮影してみましたが、このレンズは最短撮影距離が0.60mなので、もう少し寄れたらと感じる事があるかもしれません。逆光で虹色ゴーストを発生させて撮影すると、ファンタジーな印象で撮影することができます。
お散歩途中の参道で出会った猫ですが、オートフォーカスで使えるマウントアダプター「TECHART LM-EA9」を使用する事で、半世紀も前のオールドレンズで動物瞳AFを使用したオートフォーカスを使用することもできます。
チルト式液晶モニターのカメラでは、縦位置ローアングル撮影のマニュアルピント合わせは非常に困難な体勢で行うことになってしまいます。しかし、「TECHART LM-EA9」はオートフォーカスで撮影ができ、無理なくピント合わせが可能になるので、下の写真の様な写真も楽に撮ることができます。
撮影したデータを改めて見てみると、50年を経過したオールドレンズとは思えないほどのクオリティを維持しているレンズだと思います。現在のレンズと比べれば解像感も低く周辺の描写も大変甘いですが、それ故に自然な描写をしているのではないでしょうか。最新の高価な50mm F1.4レンズの1/20程度の価格で楽しめる「オートロッコール PF 58mm F1.4」は、お手頃なスナップレンズではないでしょうか。
まとめ
緑のロッコールレンズ、ミノルタ「オートロッコール PF 58mm F1.4」は、発売当時に非常に多く出回ったレンズですので、中古市場でもお手軽な価格で数多く見ることができます。ナチュラルな描写を好むユーザー、初めてオールドレンズを使ってみたい方、気楽にオールドレンズを試してみたいユーザーにおすすめのオールドレンズです。
■写真家:坂井田富三
写真小売業界で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ・ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・EIZO認定ColorEdgeアンバサダー
・ソニーαアカデミー講師