ボケってどうやってつくるの? そもそもボケとは?|カメラ用語を正しく理解しよう vol.3
はじめに
こんにちは! ShaSha編集部です。いつもご覧いただき、ありがとうございます。
ShaShaはご存じのとおりカメラやレンズなどの機材、また撮影方法などを写真愛好家の皆さまに紹介するサイトです。毎日更新される記事内では、少し難しい専門用語がたくさん飛び交っていますね。もちろん内容をすぐに理解できる写真上級者の方も多いかと思いますが「それってなんのこと?」と、?マークが出ている読者の方もいらっしゃると思います。
このシリーズではそんな初心者の方に、つまずきがちな写真用語をわかりやすく解説していきたいと思います。「なんとなくはわかってはいるけど……」という方も、用語をきちんと理解できると写真生活がますます楽しいものになるはずです。
もちろん中・上級者の方も、おさらいに是非読んでみてくださいね。
ボケってどうやってつくるの?
ポートレートや花の写真をはじめ、さまざまなシーンで美しくボケている作品をよく見ますよね。皆さんもあんな写真を撮ってみたいと思ったことがありませんか? どんなふうにすればボケが撮れるのでしょうか。今回はボケのつくり方について説明してきます。
ボケの効果と4大要素
このボケですが、作品にどんな効果をもたらすのでしょうか? 改めて見てみましょう。
●メインの被写体を際立たせる
●余計な情報をぼかすことですっきり見せる
●やわらかな雰囲気を出せる
●立体感を出せる
など
このような表現をしたい時、ボケは最大の効果を発揮してくれます。ポートレートや花の作品でよくボケ表現がされているのも納得ですね。
ボケをつくるためには、基本的に4つの要素が必要になります。
(1)焦点距離が長いレンズを使う
(2)レンズの絞りを開く
(3)被写体に近づいて撮る
(4)被写体から背景の距離が長い
以上のような条件の時にボケがつくりやすくなります。実際に作例で比べてみましょう。
(1)焦点距離
花にピントを合わせました。焦点距離50ミリのレンズより焦点距離150ミリのレンズで撮ったほうが、後ろの水面が大きくボケています。
(2)絞り
チューリップにピントを合わせ、レンズの絞りをF32とF5.6で撮ってみました。絞りを大きく開けたF5.6のほうが、後ろの植物がボケていますね。
(3)被写体(チューリップ)との距離
左はチューリップと距離をとってピントを合わせました。右はチューリップに近寄ってピントを合わせています。チューリップに近づいた右のほうが、後ろの植物がボケています。
(4)被写体と背景の距離
今度はチューリップにピントを合わせた状態で、後ろの植物との距離を変えてみました。左はチューリップに近づけ、右は遠ざけています。やはり右のほうがボケていますね。
このようにして撮ると、ボケがつくりやすくなります。
被写界深度は浅いほうがボケやすい
ボケのポイントのひとつである被写界深度(※1)は、浅いほどボケやすく、深いほどボケづらくなります。よって、焦点距離の長い望遠レンズはこの被写界深度が浅くなるためボケやすくなり、焦点距離の短い広角レンズは被写界深度が深くなるため、ボケにくくなるということです。
同じようにレンズの絞りは開くほど被写界深度が浅くなり、絞るほど被写界深度が深くなります。つまり絞りは開いた状態で撮るとボケがつくりやすくなります。
※1 被写界深度とはピントが合って見える部分のこと
さらに大きく美しいボケをつくるには
さらに大きく美しいボケをつくるためには、下記のような要素も見逃せません。
F値が明るい単焦点レンズを使う
F値は小さくなればなるほど被写界深度が浅くなります。F値が小さいということはレンズの絞りを開いて光を多く取り入れるということです。レンズに光を多く取り入れると収差や光の拡散具合が大きくなるなどの影響で、ピントが合いづらくなりボケがつくりやすくなります。単焦点レンズなどの直径が大きく明るい(=F値が小さい)レンズを使うと、その分大きなボケをつくることができるのです。
フルサイズ機を使う
同じ画角の写真を撮りたいとき、フルサイズ機とAPS-C機もしくはマイクロフォーサーズ機では、フルサイズ機のほうがレンズの焦点距離は長くなります。例えばフルサイズ機の焦点距離50ミリと同じ画角を得るには、APS-C機なら焦点距離33ミリ程度のレンズを使う必要があります。
前述のとおり焦点距離が長いレンズのほうがボケやすいので、センサーサイズがほかと比べて大きなカメラは、同条件でしたら焦点距離も長いレンズを使うことになります。フルサイズ機はボケやすいと言われているのはそのような理由がひとつにあります。
マクロレンズを使う
マクロレンズとは、被写体をアップで撮影することができるレンズです。マクロレンズは被写体にぐっと寄って撮影できるので、大きく写すことができます。その中にも撮影倍率というものがあり、等倍(1倍)は被写体の大きさのまま、0.5倍は被写体の半分の大きさと、倍率に合わせて映し出されます。被写界深度がとても浅いのでボケも非常に出しやすくなりますが、その分ピント合わせには注意が必要なレンズでもあります。
♪豆知識♪
ボケ写真を撮りたいときには、カメラは絞り優先(Av,A)モードにしておくことをおすすめします。絞りを設定すると、あとはカメラがシャッタースピードを調整してくれますよ。
ちょっと難しい話。錯乱円とは?
そもそもボケとはなんなのでしょうか? 被写体にピントを合わせた時、ピントが合っている部分はイメージセンサーやフィルム上で点に写りますが、ピントが合わなかった部分はぼやけて円に写ります。この円の部分がいわゆる「ボケ」です。点がボケて円になっているのです。すなわち「ボケ」とはピントが合っていない部分のことを指します。
そして、この円を錯乱円と言いますが、ピントがずれるほど錯乱円が大きくなりボケも大きく、逆に錯乱円が小さいほどボケが小さくなります。この錯乱円には境界線があり、ピントが合っていると許容される錯乱円(許容錯乱円)以内の範囲を被写界深度と呼びます。ですから、実はピントが合って見える部分も、よく見ると小さなボケになっていたりするのです。
いろいろな種類のボケがある
ボケにもいくつかの種類があります。状況によって使いこなせるようになると、どんどん作品のバリエーションが増えますよ。
後ろボケ
被写体の背景がボケている状態を指します。ボケの中でも一番オーソドックスなもので、背景をすっきりとさせてメインの被写体を浮き上がらせることができます。ポートレートでよく使われる手法であり、シチュエーションに左右されずつくり出すことができます。
前ボケ
メインの被写体の前で別の被写体がボケている状態です。全体がソフトな雰囲気になり、花の写真などでよく見かけます。柵など、手前の邪魔な被写体をぼかして存在感をなくす効果もあります。
玉ボケ
光源がボケている状態のことを指します。太陽の光やイルミネーション、花火、水滴などが光に反射している被写体をぼかすと、ボケが丸く写ります。オールドレンズなど絞り羽根枚数が少ないものは、角がカクカクして多角形に写って面白いです。
星形やハートなど形のあるボケもつくれる!
形がくり抜かれたフィルターをレンズにつけると、その形のボケをつくることができて、とてもかわいいです。フィルターは紙を使って自作することもできますよ。
さいごに
ボケはどのようにすればつくることができるのか、ご理解いただけたでしょうか。まずはご自身の機材で練習してみましょう。イメージ通りのボケがつくれるようになったら成功です! もっと追及したい方はボケが美しく出るレンズがたくさんありますので、ぜひ試してみてくださいね。
いかがでしたか? 理解できた方も、そんなこと知っているよという方も、なにかしら参考にしていただけたら幸いです。
それでは今日も楽しく撮影に出かけましょう! カシャカシャ!