【オールドレンズ】球面収差による優しいフレアが魅力的なレンズ 清原光学「キヨハラソフト VK50R 50mm F4.5」
はじめに
今回のオールドレンズのセレクトは、清原光学の「キヨハラソフト VK50R 50mm F4.5」です。このレンズは、以前に紹介したベスト判コダック(ベス単)を ベースに企画されたレンズ「キヨハラソフト VK70R 70mm F5」の第2弾のレンズで、使いやすい50mmという標準レンズ画角のソフトレンズになります。
VK70R同様に特徴のある描写をするレンズで、ピント合わせが非常に難しいレンズですが、ミラーレス機で使用する事によってこのレンズを簡単に楽しむ事ができます。特に点光源があるシーンでの独特な描写は、現代のレンズでは味わえない描写をします。そんな個性的な「キヨハラソフト VK50R 50mm F4.5」の魅力と写りを紹介します。
清原光学「キヨハラソフト VK50R 50mm F4.5」の魅力
清原光学のキヨハラソフトシリーズは、「ヴェスト・ポケット・コダック」というカメラのレンズを流用して他のカメラで使用できるように改造した、「ベス単フード外し」と呼ばれる軟焦点レンズを再現したレンズです。
※「ベス単フード外し」について詳しくは、下記の記事をご参照下さい。
今回の「キヨハラソフト VK50R 50mm F4.5」は、先に発売されていた「キヨハラソフト VK70R 70mm F5」では、風景写真を撮影するには少し望遠過ぎるという声を元に追加生産されたレンズです。
レンズ設計に関しては、「キヨハラソフト VK50R 50mm F4.5」はオリジナル(ヴェスト・ポケット・コダック)の構成を可能な限り再現したレンズ(一部硝材はオリジナルに似た硝材を使用)ですが、「キヨハラソフト VK50R 50mm F4.5」は、簡単な修正だけでは対応ができなかった為、レンズ設計は新たにし直したものと言われています。という事でその描写も完全に一致するものではありませんが、「ベス単」を味わえる50mmの画角になったキヨハラソフトは、とても使い勝手が良くなったレンズです。
清原光学「 キヨハラソフト VK50R 50mm F4.5」の基本的なスペックです。
焦点距離 | 50mm |
最短撮影距離 | 0.45m |
絞り開放 | F4.5 |
レンズ構成 | 1群2枚+保護ガラス1枚 |
絞り羽根枚数 | 10枚 |
フィルター径 | 40.5mm |
重量 | 約125g |
マウント | 各マウントあり |
発売 | 1987年 |
発売当時の価格 | 定価 35,200円 |
「キヨハラソフト VK50R 50mm F4.5」は、「キヨハラソフト VK70R 70mm F5」では使い勝手が悪かった絞りリングが改良されています。「キヨハラソフト VK70R 70mm F5」ではレンズの前面にあった絞りリングが、レンズ先端部の側面に移動しているため、絞り変更の使い勝手が向上しています。
また「キヨハラソフト VK70R 70mm F5」は絞り羽根がむき出しの状態ですが、「キヨハラソフト VK50R 50mm F4.5」では絞り羽根の前に保護ガラスが1枚入ったかたちになり、絞り羽根を保護するような状態になっています。
常用するレンズでも無かったせいか、中古市場でも比較的程度の良いものがお手頃な価格で購入できるキヨハラソフトですが、「キヨハラソフト VK50R 50mm F4.5」は「キヨハラソフト VK70R 70mm F5」よりも中古市場の流通が少ない感じです。
「キヨハラソフト VK50R 50mm F4.5」は各メーカーのマウントで発売されていました。筆者が所有している「キヨハラソフト VK50R 50mm F4.5」はペンタックスKマウントなので、今回はソニーα7R IIIに、焦点工房のマウントアダプター「K&F Concept KF-PKE.P」(ペンタックスKマウントレンズ → ソニーEマウント変換)を使用して撮影をしました。このマウントアダプターは実売価格で4,000円程度の価格で入手できる製品です。
オールドレンズを使って撮影する場合のカメラの設定やピント合わせなどのコツは、基本的にはこちらの記事をご参照ください。
清原光学「キヨハラソフト VK50R 50mm F4.5」で水族館撮影
「キヨハラソフト VK50R 50mm F4.5」を持って、年間パスポートを持っている水族館で撮影をしてみました。正直かなり暗いところなので動きのあるドルフィンショーはこのレンズの撮影には向いていませんが、ドルフィンショーのイルカまで5m以上の距離があるので、ピントは無限遠にした状態で絞りを開放でISO感度を上げて撮影をしてみました。
結果ドルフィンショーの照明の光や反射した水飛沫が、強い球面収差で現れるフレアと合わさって少し幻想的な描写をしてくれました。これは現代のレンズにソフトフォーカスフィルターを使用しても表現できない大きな違いです。
強い点光源の光が無い場合は大きなフレアが出てこないので、全体的に大人しめのソフトレンズの描写になります。様々な色合いの演出があるクラゲの水槽のコーナーで撮影してみました。強い球面収差で現れるフレアをとても印象的に描写することができました。
さらに静止画だけでなく、動画でも撮影してみました。LEDのイルミネーションの光の変化がとても印象的になっています。個性のある特徴的なオールドレンズでの動画撮影も、とても面白いと思います。
清原光学「キヨハラソフト VK50R 50mm F4.5」で都内スナップ撮影
次に撮影場所を屋外に移して、街中と公園でスナップ撮影をしてみました。お天気の良い日だったので、ソフト効果がより強調できる撮影になりました。特にハイライト部分の滲みは被写体を柔らかく演出してくれ、ファンタジー感溢れる写真に仕上がります。
50mmの画角は、よく使う他の標準レンズのオールドレンズと同じなので、筆者にとってはとても使いやすい画角で撮影を楽しむことができました。
「キヨハラソフト VK70R 70mm F5」で撮影した場所と、同じ場所の鉄道ガード下で撮影してみました。撮影したデータを比較してみても大きな違いを見つける事はできない感じです。電球の大きなフレアはほぼ同じ描写をするので、どちらのキヨハラソフトを選んでも、同様の描写を楽しむ事ができます。
「キヨハラソフト VK50R 50mm F4.5」は、絞りによってソフト量をコントロールするタイプのレンズです。通常はソフト効果を期待して使うレンズなので、絞りを絞って撮影する事はあまり無いと思いますが、絞った場合にどの様に写るか比較する為に撮影してみました。
【F4.5】
【F16】
絞りを一番絞ってF16で撮影をしてみましたが、このくらいまで絞りを絞るとソフト効果はほとんど無くなります。解像度が決して良くはないレンズなので、絞って撮影して普通のレンズの様な使い方はおすすめできません。やはり開放で撮影するか一絞り程度絞るぐらいが、このレンズの特長を最大限に楽しめる値だと思います。
まとめ
ソフトフィルターでは表現できない「ベス単フード外し」レンズの描写は、最近のレンズでは描写する事のできない幻想的な風景を魅せてくれます。周りの人とは違った写真を撮ってみたい、幻想的な雰囲気のある写真を撮ってみたいと思っている方はチェックしてみて損はしないレンズです。夜のスナップ撮影やイルミネーション撮影に持って行きたいレンズですね。
■写真家:坂井田富三
写真小売業界で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ・ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・EIZO認定ColorEdgeアンバサダー
・ソニーαアカデミー講師