【フィルムカメラ】コダック シグネット35&写ルンです撮り歩き撮影記
はじめに
皆さんこんにちは、写真家の虫上です。私は写真活動を初めて今年で早35年以上が経過しました。その間に時代が大きく変化したのは皆さんもご承知の通り、フィルムからデジタルへ移行した期間でした。フィルム時代には私も多くのフィルムカメラを所有していましたが、私の手元へ残したのはこの小さなKODAK(コダック)シグネット35とリンホフ カルダンE45という大型のカメラでした。なぜこの二台かというと、基本的にどちらも電池を使用しないメカニカルなカメラだということです。
さて今回はKODAK シグネット35を紹介したいと思います。また、今の時代に富士フイルムの写ルンですも未だ現役で流行っているそうなので、今回はその二台で岡山駅前のストリートを撮り歩きしてみようという企画を立ててみました。私一人では二台のフィルムカメラを区別して撮影するのは大変なのと、違う視点の写真が見たかったのでいつもPCC撮影会のアシスタントをお願いしているカメラ女子のhonoさんに写ルンですの担当ということで撮影してもらいました。
KODAK シグネット35の仕様&特徴
KODAK シグネット35は私がまだ生まれていない1951年に発売されたカメラです。既に72年も経っているカメラとは思えない特徴的な洒落たデザインで、外観がミッキーマウスに似ていることから巷では「ミッキーマウスカメラ」と呼ばれており、特にカメラ女子に人気があるようです。実は私が気に入っているポイントは、ライカのマークのようにも見える中央の赤いコダックマークだったりしますが(笑)。
レンズはEktar 44mm/f3.5で単層コーティングのようです。もちろんカラーフィルムのことなど考えられていないので仕方ないですが(笑)。写り自体は作例を見ていただけると判ると思いますが、ちゃんとピントが合っている部分は非常にキレがあるレンズだと思います。
絞り値は3.5,4,5.6,8,11,16,22の7段階、シャッタースピードは1/25、1/50、1/100、1/300の4段階とネガフィルムの撮影には十分かなと思います。ピント合わせはファインダー真ん中の黄色い二重像が一致したらピントが合う方式なのですが、この黄色い部分がとても見えにくいのが難点です。
写ルンですの仕様と特徴
こんにちは!写ルンですを担当したhonoです。写ルンですは、富士フイルムが1986年に発売を始めたレンズ付きフィルムです。いわゆる使い捨てカメラで、27枚しか撮影することができません。いくらでも撮影できるデジタルカメラが主流となる現在、撮影枚数に限りがある事で1シャッターへの気持ちをより深く込めることができます。
ISO:400
F:10
SS:1/140秒
と設定が決められており、撮影距離範囲は1m~無限です。
私は被写体以外のものは極力写したくないので、ついつい近づいてしまいますが、そうするとボヤけて写ってしまいますので注意してください。また曇りの時や、夕方くらいにはフラッシュを付けないと真っ暗に写ってしまいます。肉眼ではまだまだ明るいように見える時もフラッシュが必要な場合がありますので、心配ならフラッシュを使って撮影しておくのが安全です。
両方のカメラで同じストリートを歩き撮り!
▼虫上
まずこの写真が唯一、アシスタントのhonoさんと一致した写真でした。閉店したお店のテントなのですが、穴が開いている部分に室外機があるのがなんとも異様な感じでしたので思わず撮影しました。下の店名を入れず、主役のみを際立たせるのは私流でしょうか(笑)。
▼hono
撮影日は曇りでしたが、お昼には太陽が出てくれました。ちょうど建物の間から光が差し、古びたお店の屋根が照らされました。虫上先生は室外機に注目したそうで、同じ被写体でも人によって注目ポイントが違うのが面白いですね。
私は光に注目し、店名も「HIKARI」なので店名も入れて太陽が隠れる前にシャッターを切りました。写ルンですでは露出などの撮影設定は変更できません。その為、この写真は白飛びしてしまいましたが、それも写ルンですの味です。自分だけの表現をする為には、「良い写真」の固定概念を取り払う事が大事だと考えています。
虫上撮影
私の撮影スタイルは、太陽がある時は光と影に注目して撮影することが多いです。影の部分はほとんどが輪郭が滲み、アナログ的な雰囲気が出せるからです。この日は天候も良く、岡山の特産品である白桃の影が川のパイプに写りこんでいました。同時に背景の瀬戸大橋のように見える影を取り入れて撮影しました。
こちらも光と影を狙った作例です。なぜ?こんなところに?と疑問が湧くような場所が街中には溢れています。因みに左がデジカメで撮影した写真。右はシグネットで撮影した写真です。デジカメの作例は画面上、どこにもスキのない感じがして仕事にはいいのですが、フィルムカメラで撮影した作例は粒子はもちろん、背景のボケ味などが味わい深い感じになりますね。
上の2枚は時間をかけてきちんとピントを被写体に合わせた写真です。ピントの合った部分はとてもシャープなのに背景は優しいボケ具合です。改めてこのレンズの素晴らしさがとてもよくわかった写真です。
夕暮れ、散歩をする人がいましたのでとっさに撮影しました。奇跡的にピントが来ていたので良しとしましたが、ミラーレスのピントの早さに慣れているともたつきますね。
今回、撮り歩いた中で一番気に入った写真がこちら。凛とした力強い橋脚の一部分が印象的でした。後で調べてみるとなんと私が生まれるずっと前、1681年(延宝9年)に作られた橋脚の一部分ということで、隣を流れる旭川で平成になって見つかってここに展示しているそうです。
hono撮影
たまには自分を撮ろうと思い、鏡を探していたら面白く写る場所を発見しました。ガラス張りの建物の中には姿鏡がありました。ガラスと姿鏡に自分が写り、影分身のようになりました。
ガラスや水たまりなどにはあらゆる物が反射します。それも同じ水たまりでも、角度を少し変えれば写るものは変わり、1つの水たまりで何通りも撮影出来ることがあります。反射するものを見つけると注意深く観察し、しゃがんだりしながら色々角度を変えて良い写り込みがないか探します。ポイントは羞恥心を無くすことです。笑
こちらは、青みがかった建物から突き出している枝を撮影しました。不自然に突き出しているのが面白く、青い壁の色が冬の寒さを表現しているようで葉っぱの無い枝とも相性が良いです。
こちらは、人1人分くらいの細い路地を通っている時に見つけました。お店の裏を通っていたようで、お店のステッカーらしきものが貼られています。しかも頭上にあったのをたまたま発見。街中らしい写真になりました。
こちらは、確か歯医者の建物。四角い建物が多い中、丸いガラス張りの部分が特徴的でした。コンクリートの壁にはつるが生い茂っており、シックな雰囲気でした。コンクリートばかりを写すと息が詰まったようになるので、特徴的なガラス張りと空を入れて抜け感を作りバランスを取りました。コンクリートが左と下側、空が上と右側にくるように配置し、メインのガラス張りを中心に配置して目立つようにしています。
岡山駅からどんどん離れていき、京橋朝市の会場付近へ。橋の下を歩いている途中、ふと見上げると自転車や車が行き来していました。タイミングが来るのを待ち、自転車が来たところを見計らってシャッターを押しました。ちょうど自転車以外には何も走っていないタイミングで撮影し、スッキリとした写真になりました。空の空間を広く写すことで広がりを感じられる印象になります。
尚且つ、構図の下の方に水平ラインになる物(今回は橋)を入れると安定感が生まれます。空は季節や時間帯を表現するのにピッタリですので、効果的に取り入れたいです。今回はどんよりな曇り空でしたが、そんな雲をAdobe Lightroomでさらにコントラスト低めに加工し、冬の冷たくて静かな休日を表現しました。夕方に差し掛かる時間帯だったので結構粒子も出ていますが、デジタルには無い質感が出ていて一番お気に入りの写真になりました。
こちらは、橋の下を歩いている時に見つけた船のランプです。色々な色のランプが集まっているのが可愛くてシャッターを押しました。この写真は女子が好みそうな?写真になったかなと思います。白色ベースに明るい色が集まった写真になると、可愛らしい雰囲気になりますね。本当はもっとランプにズームしたかったのですが、出来ないので引き目で撮影しました。写真の下の方には、肌の色が写っています。写ルンですを握った時に、ちょうど指がレンズに被りがちなので注意です……
■フォトグラファー:hono
高校生の時にバイト代を貯めて初めてカメラとレンズを購入。当時好きだった野球観戦や家族旅行の時に使う程度だったが、それに加えて社会人になり1人でカメラ旅を楽しむようになった。そんな中、1人では表現の幅に限界を感じてフォトカルチャークラブに入会。講師の虫上先生に出会い、運良くアシスタントに。月1の教室でサポートをしながら参加者の皆様との交流を楽しんでいる。他にも気になったイベントなどを見つけるとカメラを持って出かけている。
PCC(フォトカルチャー倶楽部)アシスタント、フォトマスター2級
まとめ
いかがでしたでしょうか。久々にフィルムカメラを使用した感想としては、デジタルに慣れていただけにとっさの撮影ではとても使いずらいけど、1コマずつじっくりシャッタースピードや絞り、ピントなどを考えながら撮影する楽しみや現像後の出来上がりのワクワクする待ち時間などの感動がありました。また、このカメラを首からぶら下げているだけで視線を感じられる優越感も得られました(笑)。
写ルンですについては昔から良く知っていたのですが、当時はカメラを所有してない人やカメラを忘れた人向けの非常用記録カメラと認識していました。ですので、今回honoさんが撮影した写真を見ていると、作品撮り用として考えると独特の露出でとてもエモい感じに撮影できるんだなあと改めて感じました。どうりで今の若い人たちにも人気なのだと納得がいきます。皆さんも是非フィルムカメラがあれば撮影してみてくださいね。
■写真家:虫上智
1968年岡山県生まれ。高校を卒業後、写真家 緑川洋一氏に師事。地元のカメラ店で撮影業務などを学び2000年に独立。現在はスタジオ撮影、フォト講座、執筆、フォトコン審査、講演等を受け持つ。ライフワークでは心象風景、自然写真、水中写真を撮影。
日本写真家協会(JPS)会員、日本写真講師協会 認定フォトインストラクター、OM SYSTEMゼミ講師、フォトカルチャークラブ講師、フォトマスターEX(総合)一級