落下によりレンズ先端部(フィルター枠)にゆがみのあるジャンク レンズ「ミノルタ MC ROKKOR-PF 50mm F1.7」
はじめに
今回はジャンクコーナーで見つけた「落下によるレンズ先端部(フィルター枠)のゆがみありレンズ」のお話です。いろいろな場所や長年撮影をしていると、もしかしたら機材の落下を一度は経験した事をある方もいらっしゃると思います。筆者自身も何度もやらかしています。レンズ交換する際に手を滑らせレンズを地面に落下、山で足を滑らせ機材を地面に当ててしまったなど、撮影現場ではいろいろな事が起きてしまいます。
最近のオートフォーカスや手ブレ補正のあるレンズですと、落下をさせてしまうと衝撃で動作不能になってしまう事も多いのですが、古いマニュアルレンズなどではモーターや電子制御機能が無い為、比較的衝撃に対して丈夫なものがあったりします。落下などの症状が見受けられるレンズの注意点なども含めてご紹介します。
落下によるレンズ先端部(フィルター枠)の「ゆがみありレンズ」ってどんなの?
落下の形跡があるレンズなどは、少し扱いの難しいジャンルです。落下による損傷が目に見える部分だけでなく、目に見えない内部にも影響がある場合があるからです。それゆえ落下痕があるようなレンズなどはジャンク品として扱われている事が多いようです。
今回のように落下によるフィルター枠の歪み、変形で比較的程度の軽いものであればそのまま使用できるものは多いようです。対して落下の歪みがレンズのマウント側に影響してしまっているものは、カメラボディへの装着が困難になったり、ピントが合わなくなったりして使用するのが困難なものが多くなります。また、マウント面に歪みがあるレンズをカメラボディに装着すると、カメラボディを損傷する可能性も出てきます。歪みがあるようなレンズを購入する際には、この点に注意して購入が必要です。
●落下などの形跡があるレンズのチェックポイント
・ピントリングがスムーズに動作するか
・絞りリングおよび絞り羽根の動作
・レンズに傷などがないか
・レンズマウント面に歪みや、傷などがないか
今回のジャンク品、落下によるレンズ先端部(フィルター枠)の「ゆがみありレンズ」の「ミノルタ MC ROKKOR-PF 50mm F1.7」は、1970年代前半に発売された焦点距離50mmの標準レンズです。
レンズ的には大きな特徴はないのですが、オールドレンズ初心者にも扱いやすいクラシカルな描写をするレンズになります。また、中古市場で販売されている価格も5000円程度で購入できるものが多く、コストパフォーマンスも高いオールドレンズです。今回使っているものは落下レンズでフィルター枠に歪みがあるので、ジャンク品コーナーで1000円で購入したレンズですが、レンズにカビやクモリなどが無く光学的には程度のよいレンズになります。
ミノルタ MC ROKKOR-PF 50mm F1.7 | |
焦点距離 | 50mm |
レンズ構成 | 5群6枚 |
開放絞り | 1.7 |
最小絞り | 16 |
フィルター径 | 55mm |
絞り羽根枚数 | 6枚 |
最近接距離 | 0.50m |
マウント | ミノルタSRマウント |
重量 | 240g |
落下などによるフィルター枠に歪みのあるレンズを使用する点のデメリットは、フィルター枠が変形しているために、フィルター装着やレンズフードなどが装着不可になってしまう点と、場合によってはレンズキャップが装着できない場合がある点です。
今回の歪みレベルでは、フィルター装着不可、レンズキャップはとりあえず装着可といった程度になります。フィルター枠に歪みがある為、レンズキャップを装着しても密着しないので、レンズキャップが外れやすくなっている状態です。歪みなどがあるジャンクレンズを購入する際には、こういったデメリットもある事を理解して購入する必要があります。
今回使用したマウントアダプターは、オートフォーカスで使えるマウントアダプター「TECHART LM-EA9」とミノルタMD・MC・SRマウントに対応している「K&F Concept KF-SRM2」を合わせてソニーαで使用して撮影をしてみました。
ミノルタ MC ROKKOR-PF 50mm F1.7を使ってみる(屋内)
今回のジャンクレンズ「ミノルタ MC ROKKOR-PF 50mm F1.7」はフィルター枠に歪みはありますが、光学的にはかなり良い状態のジャンクレンズで、写り自体の影響はほぼ無い状態のレンズです。よって純粋に「ミノルタ MC ROKKOR-PF 50mm F1.7」の描写の味わいを得ることができています。
開放F1.7の明るさがあるレンズなので、その明るさのメリットを活かすためとオールドレンズらしい少しノスタルジーを感じる被写体を求めて、東京都墨田区東向島にある「東武博物館」に行ってみました。館内には古い汽車・電車などが展示されており楽しめる空間です。館内や展示車両内は少し暗めなので、明るい単焦点レンズは非常に強い味方になってくれます。
「ミノルタ MC ROKKOR-PF 50mm F1.7」の発色は、非常に落ち着いたニュートラルな色表現をするレンズです。オールドレンズを手軽に楽しみたいユーザーにとって扱いやすいので、オールドレンズ初心者にも手頃に楽しめます。
ボケに関しては絞り羽根の枚数が6枚なので、ボケの形自体はキレイではありませんが、このクラスのレンズとしては標準的なものです。今回撮影はしていませんが、夜景などの撮影で絞りを絞って撮影する事で、6本の光芒線を演出する事もできるので、クロスフィルターを使ったような効果の撮影をする事も可能です。
※現代のレンズでは円形のボケをキレイに表現する為に、絞り羽根の枚数がほとんど奇数の枚数になっているので、光芒線の数が絞り羽根の倍数になります。(例:絞り羽根7枚の場合光芒線14本)
ミノルタ MC ROKKOR-PF 50mm F1.7を使ってみる(屋外)
次に「ミノルタ MC ROKKOR-PF 50mm F1.7」で晴天の屋外での撮影をしてみました。フィルター枠が歪んでいるため「NDフィルター」や「PLフィルター」などが使用できないのがやや残念な場合もありましたが、まずまず順調に撮影を楽しむ事ができました。
しかし使用するカメラの機種によっては、シャッター速度の最高速の上限の関係で、絞りを絞って撮影する必要が出てくる場合もあります。特に快晴の屋外での撮影ではそういったシーンは多く発生しますので、こういった場合にフィルター枠に歪みがあるようなレンズは大きなデメリットになります。
屋外での撮影で空が入るシーンなど絞りを開けて撮影するような場合は、周辺光量の低下がはっきりと分かります。また輝度差の大きな部分では、パープルフリンジも発生しており、分かりやすく言えばオールドレンズらしい症状が明確にでているレンズです。「ミノルタ MC ROKKOR-PF 50mm F1.7」はキレイに写るレンズではなく、ニュートラルでクラシカルな描写をするレンズとして楽しむのが正解のレンズになります。
まとめ
大きな損傷があるレンズを使うのには抵抗やリスクがありますが、状態によっては問題なく使用できるものもあったりします。ジャンク品の購入、使用はあくまでも自己責任にはなりますが、問題なく使えた時はラッキーというぐらいの感覚で扱いましょう。今回の「ミノルタ MC ROKKOR-PF 50mm F1.7」は、フィルター枠に歪みが無くても、比較的安く買えるレンズです。オールドレンズらしいニュートラルなやさしい描写をする、オールドレンズ初心者にも扱いやすいレンズですので、気になった方は店頭で探してみてはいかがでしょうか。
■写真家:坂井田富三
写真小売業界で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ・ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・EIZO認定ColorEdgeアンバサダー
・ソニーαアカデミー講師
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