ネイチャースナップのすすめ|超望遠ズームレンズを活用しよう
はじめに
最近は300mmを超える焦点距離を持つズームレンズがいろいろ発売されています。望遠になるほどレンズは大きく重くなるので、そんなレンズ使わないと思っている人も多いかもしれませんが、私にとってはなくてはならないレンズとなっています。今回はそんな超望遠ズームの魅力について解説したいと思います。
超望遠ズームレンズの特徴
今回紹介する超望遠ズームレンズの定義として、望遠側が300mmを超える焦点距離を持つズームレンズとしてお話をしていきます。メーカーによって少しずつ焦点距離は違ってきますが、100-400mmや150-600mmのような焦点距離を持つズームレンズです。
400mmや600mmの単焦点レンズと比べると、レンズの目指す方向性が違っていることが分かります。多くの単焦点レンズは大口径で高画質となり、写り重視です。超望遠ズームは利便性を重視していて、開放絞り値がやや暗いものが多く、望遠側でF6.3やF8ということがほとんどです。単焦点レンズより1段から2段以上暗くなっています。その分、レンズはコンパクトになり重量も軽いものが多くなります。最短撮影距離ではズームレンズでは2m前後と短いものが多く、幅広く使うことができます。
なによりも価格差が圧倒的にあり、高画質な単焦点超望遠レンズが現在100万円を越えるのが当たり前になった今、超望遠ズームレンズではその1/4から1/3程度とリーズナブルなところもユーザーとしては歓迎するところです。
超望遠ズームを使うようになったワケ
超望遠ズームレンズが一般的になったのはここ10年ほどではないでしょうか。私もそれまでは超望遠レンズは500mmF4の単焦点レンズを使っていました。大きく重く、手持ち撮影はできないことはありませんでしたが、一日振り回していると肩が凝り腰が痛くなる感じでした。
本格的に超望遠ズームに移行したのは、大ヒットした150-600mmが発売されてからで、いまでは単焦点レンズは使わなくなりました。
その理由は北海道でいきものなどを撮影していると、予想以上に近くにやって来ることもあって、単焦点レンズでは画面からはみ出したり近すぎてピントが合わないこともあるからです。ズームレンズならズームすれば画角の調節も簡単ですし、けっこう近くでもピントが合うことから、超望遠ズームを常用するようになりました。
たしかに画質だけを考えれば単焦点レンズの方が優れていますが、それ以前に良いシーンがあっても撮れなければ意味がないので、撮れることを優先した結果です。森のなかを歩くときにもレンズがコンパクトで持ち歩きが苦にならないですし、撮影の幅も広がりました。
花や虫の撮影にも
意外と便利に思っているのが、花や虫の撮影にも超望遠ズームが適しているということです。ものすごく小さい被写体だとやはりマクロレンズが必要になりますが、ちょっと大きめの花や虫では、離れたところから撮れるので、マクロレンズよりも楽に撮れると感じています。
超望遠ズームレンズは最短撮影距離が2m程度となっていて、思っている以上に被写体と離れたところから撮影できます。むしろ、こんなに離れないとピントが合わない、と感じるかもしれないので、感覚的にその距離感を身につけることが必要です。
自然のフィールドでは被写体に近づくことが難しい場所も多く、そのようなところでは離れたところから撮影できるので、大活躍してくれます。植物園などでも柵の中の花などを撮るときには、手軽に引き寄せることができて便利です。
最大撮影倍率は一般的な0.3倍程度です。バラやアゲハチョウくらいの大きさだと程よい大きさで画面に納めることができます。もう少し小さい被写体の場合は画面構成を工夫したり、フルサイズ機の場合はAPS-Cにクロップしたりすれば十分撮ることができます。
また、一般的な虫や花の撮影で利用されるマクロレンズと比べると、画角が狭いことで背景の整理をしやすかったり、大きボケを作りやすかったりするといったメリットもあります。そのほか背景を引き寄せたり、玉ボケなどを大きく見せることができるなど、超望遠を使うメリットはかなり大きいと感じています。
▼150mmで撮影
▼600mmで撮影
使いこなしのコツ
超望遠ズームレンズを使いこなすコツは、ブレを防ぐことにあると感じています。ほとんどのレンズが手ブレ補正機能を搭載していますが、それは気休めと考えて、ていねいにブレを抑えてシャープに撮ることを意識しましょう。
そのためには第一に、ISO感度を高く設定することです。高感度ではノイズが出て解像感が低下するから使わないという人もいますが、ぶれてしまったら良い写真も台無しです。私は手持ち撮影が多いので、1/500秒を目安に最低シャッター速度を設定しています。動きのある小鳥などでは1/1000秒以上にしておくと被写体ブレもある程度おさえることができます。ISO感度はオートで、機種によってISO感度上限を3200~12800に設定しています。
次にあまり絞り込まないようにします。400mmや600mmといった焦点距離になると、もともと被写界深度が浅くなっていて、少し絞り込んだくらいでは被写界深度の変化はあまりなく背景のボケ具合が変わる程度です。絞り込むとシャッター速度も遅くなることから、開放絞りから1段絞る程度で撮影することが多いです。ただ、背景の雰囲気をある程度見せたいときには思い切ってF16などまで絞り込むこともあります。
近くで撮影する場合は、自分のレンズの最短撮影距離を把握しておく必要があります。2m程度でも意外と被写体から離れているものなので、その距離感を身につけておくと慌てずに撮影できます。
遠くの景色やいきものなどを引き寄せるときには、空気の揺らぎにも注意が必要です。気温が高く湿度があるときは、たいてい空気が揺らいでいるせいでピントが合っていないような写りになってしまいます。風が強いときには意外と大丈夫なこともあり、経験から撮影できる空気の状態や距離などを把握することが大切です。
400mmまでか600mmか?
超望遠レンズを使ってみようかな、と思ったときに悩むのが、100-400mmクラスにするか150-600mmクラスにするかだと思います。これは使用目的によって違ってくるので、まずは何を撮りたいのかをはっきりさせましょう。
鳥やいきものなどを撮りたいのであれば600mmまで必要です。個人的にはもっと焦点距離が長くなってくれないものかと思っています。風景が中心であれば400mmまででも十分だと思いますが、太陽や月も撮るのであれば、600mmまであった方が有利ですね。ボディがAPS-Cやマイクロフォーサーズであれば、400mmでも600mmやそれ以上の画角と同等になりますので、そのあたりは考慮しましょう。
▼C-PLフィルターなし
▼C-PLフィルターあり
花の撮影に使うことを想定しているのなら、C-PLフィルターが使えると色をきれいに再現しやすくなるので、フィルター径のコンパクトな100-400mmクラスの方がいいと思います。600mmクラスの場合、基本的にはフィルター径が95mmやそれ以上のものになり、そうなるとC-PLフィルターが非常に高額だったりそのフィルター径が発売されていないこともあります。
最後はあなたの体力です。超望遠ズームはコンパクトとはいえ、1kg以上の重さがあります。重いものは3kg近いものもあり、持ち歩くことができなければ宝の持ち腐れになってしまいます。可能であれば、実際に店頭や知人の持っているレンズを手にとって判断してください。
まとめ
超望遠ズームレンズがいろいろなシーンで活躍してくれることがお分かりいただけたと思います。人間の視点は超広角から超望遠まで幅広く変化しますので、視点を限定しないためにも超望遠ズームレンズを活用して、撮影の幅を広げてみましょう。ちょっと重たいレンズですが、しばらく持って歩いていると、慣れてきますよ。
■自然写真家:小林義明
1969年東京生まれ。自然の優しさを捉えた作品を得意とする。現在は北海道に住み、ゆっくりとしずかに自然を見つめながら「いのちの景色」をテーマに撮影。カメラメーカーの写真教室講師などのほか、自主的な勉強会なども開催し自分の視点で撮影できるアマチュアカメラマンの育成も行っている。