オールドレンズを始めよう!撮影編
はじめに
こんにちは!フォトグラファーの鈴木啓太|urbanです。長年オールドレンズやフィルムを中心にポートレート、スナップ、家族写真を撮影しております。今回はオールドレンズを始めよう!シリーズ第三弾として、いよいよ撮影編に入っていきます。本編では主にポートレートにおける撮影方法を解説します。基本的なオールドレンズの撮影方法はマスターできるかと思いますので、張り切っていきましょう!
オールドレンズで使うべき撮影モードは?
オールドレンズをデジタルカメラで使う場合の撮影モードは、まず、絞り優先AEを試してみましょう。オールドレンズの絞りはマニュアル操作となるため、絞りを電子制御するプログラムAEやシャッター速度優先AEは使用できません。レンズの絞り操作やピント合わせなど、シャッターを切るまでにかかる操作が多いため、絞りでボケ値を決定し、露出はカメラに任せる絞り優先AEがスムーズです。
マニュアルモードが使える方は、まず、絞り優先AEでラフに撮影し、継続して撮りたい被写体が見つかった場合、逆光などやや難しい光線状態の場合にマニュアルモードに変更し追い込むという方法がおすすめです。オールドレンズの描写はレンズに入る光量が重要で、レンズの向きを何度も変更することが多く、その度に露出が大きく変わります。したがって、マニュアルモードの「自分が考える適正露出を決定した上で、オールドレンズの描写を追い込んでいく」という撮影方法が非常に有効なのです。
カメラの画像仕上げスタイルの設定
カメラには写真の彩度を上げる風景モードや、カメラが持つ基本の発色となるスタンダードモードなど、独自の色(スタイル)が用意されています。オールドレンズで撮った写真をRAW現像でコントロールする人、JPEG撮って出しで使う人でその設定は変わってきます。仕上げモードはモニターの出力画像にも影響するため、RAWで撮影する人にとっても重要です。
僕はモニターの出力画像はやや派手な方が撮影時のテンションが上がるため、主にスタンダード(愛用のα7 IVではクリエイティブルックのFL)を使用しています。本設定はJPEGにのみ効果があり、RAW画像には影響を及ぼさないため、RAWで現像する方は好みのモードを選択していただいてOKです。
オールドレンズの描写は液晶モニターを使って見つけよう
オールドレンズの使い方やカメラの設定が一通り済んだら、いよいよ実践に入りましょう!
オールドレンズの描写には順光や斜光で効果が現れるにじみや、逆光で効果が現れるフレアやゴーストがあります。これらの描写はデジタルカメラのEVFやモニターに反映され、目視することが可能です。カメラの使い方は人それぞれですが、僕はファインダーをあまり覗かず、カメラを胸から腰のあたりで構えモニターを見ながら撮影することが多いです。オールドレンズの描写は光の角度によって、出たり出なかったりとかなり繊細です。ファインダーを覗きながらでは、その描写を探し当てることは難しいのです。
その点、モニターを使うとカメラの取り回しが良くなるため、ゴーストなどを見つけやすくなるというメリットがあります。お目当ての描写が現れたら、被写体を構図に入れ撮影する、もしくはファインダーに切り替えて撮影するのも良いと考えます。モニターの利用は、特にオールドレンズ初心者の方に非常に有効な撮影方法なのです。
オールドレンズポートレートの撮影方法
ここからは、オールドレンズを使った実際のポートレート撮影方法を紹介します。撮影の基本となる屋外での順光~斜光と逆光~半逆光の撮影方法、屋内での自然光を使った撮影方法を説明していきます。
屋外撮影における逆光~半逆光での撮影
ポートレート撮影はモデルの顔に不必要な影が落ちない、逆光から半逆光での撮影が基本となります。これらの撮影は、フレアやゴーストを誘発させ、オールドレンズの撮影とも相性が良くなります。ですが、フレアやゴーストは強い光源を必要とするため、逆光下ではモデル前面の光量が不足しがちになることも。その場合、レフ板で光を当てる、光の反射がある位置にモデルを移動させるなど、光のコントロールが必要となります。
逆光で輝度差が大きくなる場合はモデルの体の向きを少し傾け、半逆光にすることや白い壁に寄せて光の反射を利用するなど、その場の光を読むことで結果は大きく変わってきます。撮影で最も時間をかけるべきは光の向き、量、質を見極めることです。
また、オールドレンズでの撮影は光の角度が特に重要になります。光が高い位置にある場合、レンズに入る光の角度が急すぎてオールドレンズの描写を出すことは困難です。フレアやゴーストを出したい場合は、夕方の日が傾きレンズに入る光の角度が緩くなるタイミングを狙う必要があります。
逆光撮影の基本的な形です。太陽とモデル前面の輝度差が大きいのですが、レフ板がなかったため、あえてモデルの顔は写さず雰囲気のある写真に仕上げています。
屋外撮影における順光~斜光での撮影
順光や斜光での撮影は、光のコントロールによってモデルの顔に適度な陰影を与えることができ、逆光とはまた違ったドラマチックな写真になります。オールドレンズの描写ではにじみと場合によってはフレアも利用できるシーンです。コントラストも増すため、メリハリのついた写真となります。
これら描写はレンズによっては発生しないため、基本的には光と影を使った撮影を試みるのが良いでしょう。特に街中の木々の木漏れ日、人工物が作り出す直線的な影は、クールなポートレートとの相性が良いです。オールドレンズ的な楽しみは少ないですが、光を操る面白さは逆光以上で、僕は特に斜光を好んで使います。逆光よりも難易度は高いのですが、斜光はライティングの基本でもあるため是非使いこなしていきましょう。
鼻の部分にループ状の影ができる、自然光での斜光ライティングです。瞳にキャッチライトが入りにくい光の角度のため、モデルに白いマスクを直視してもらい、キャッチライトを作っています。
屋内撮影における自然光での撮影
スタジオを中心とした屋内ポートレートでは、基本的にストロボや定常光などのライティングを行って撮影をします。ですが、オールドレンズを使う場合、繊細なライティングを心掛けないとストロボ光などでオールドレンズの描写が打ち消されてしまうことがあります。
自然光が入るスタジオなどでは、自然光を中心としたライティングを行いたいですが、曇りの場合などは光量が足りず、顔の陰影が付きすぎるといった事象も発生します。そのため、カポックと言った大型なレフ板を使う、白い布や壁などに反射した光を補助光にするなどで光を補う必要があります。屋外の自然光よりも光はコントロールしやすいですが、天候によっては光量不足にも陥るため、ストロボなどのライティング機材を取り入れていき、独自のオールドレンズ×ライティング方法を編み出していきましょう。
窓から入る自然光を使った例です。撮影者側にレフ板を立てて、髪の毛~肌の部分のシャドウを起こしています。
白い台が自然光を反射し、顔を明るくしています。白い壁や布等を使って光をまわすテクニックのひとつです。
まとめ
さて、いかがだったでしょうか。今回は、本格的な撮影に入る前の、オールドレンズの撮影方法についてまとめてみました。特にポートレートにおいてはフレアやゴーストを活かした撮影方法を取り入れたいという方も多いと思いますので、本内容を参考にしていただければ幸いです。
もし、オールドレンズに興味を持っていただけたのであれば、僕が執筆している「ポートレートのためのオールドレンズ入門」そして「ポートレートのためのオールドレンズ撮影マニュアル」に数多くのオールドレンズの作例と詳細な設定等解説を載せておりますので是非ご覧ください。また、実践的な撮影方法が知りたい場合は、僕が講師を務めるオールドレンズワークショップ「フランジバック」にもご参加いただければ嬉しいです!では、次の記事でお会いしましょう!
■モデル:小夜(@sayo_oo_)
■フォトグラファー:鈴木啓太|urban
カメラ及びレンズメーカーでのセミナー講師をする傍ら、Web、雑誌、書籍での執筆、人物及びカタログ撮影等に加えフィルムやオールドレンズを使った写真をメインに活動。2017年より開始した「フィルムさんぽ/フランジバック」は月間延べ60人ほどの参加者を有する、関東最大のフィルム&オールドレンズワークショップに成長している。著書に「ポートレートのためのオールドレンズ入門」「ポートレートのためのオールドレンズ撮影マニュアル」がある。リコーフォトアカデミー講師。