第20回 秋山庄太郎「花」写真コンテスト 入賞作品展 開催記念特集|世代を超えて作り上げてきた”美”の写真展
はじめに
2024年3月22日(金)~3月28日(木)の期間、新宿 北村写真機店 6F Space Lucidaにて『第20回 秋山庄太郎「花」写真コンテスト入賞作品展』を開催する。
本写真展はその名の通り「花」を撮影した写真のみがエントリーでき、今年で20回目を迎える由緒あるコンテストの入賞作品展だ。毎年、全国各地から多くの作品が応募されており、展示されている入賞作品はどれも優雅で撮影者が”美”を追求し熾烈な競争を制したハイレベルな作品だ。
なぜ本コンテストの入賞者がこれほどまでに”美しさ”を追求した作品を撮ることができるのか?
その背景には花写真ブームの先駆け的存在であり、元祖花写真家ともいうべき故 秋山庄太郎 氏(1920-2003)の熱い思いが詰まっているからであろう。今回の特集では秋山 氏の経歴や思い、開催している写真展の見どころをご紹介しよう。
秋山庄太郎という写真家
秋山庄太郎 氏といえば紫綬褒章や旭日小綬章の受章をはじめ、日本写真家協会、日本広告写真家協会、二科会写真部の創立会員。日本写真芸術専門学校校長、日本写真協会副会長、全日本写真連盟総本部顧問などを務め、今日の写真文化の礎を築いてきた巨匠だ。
― 秋山庄太郎
1920年、東京・神田に生まれる。早稲田大学卒業。映画雑誌社写真部勤務等を経て、フリーランス。昭和を代表する女優・原節子をはじめ数多くの女性ポートレートを手がけ活躍。
1960年代後半から「花」をライフワークとして取り組んだ。2002年、本コンテスト創始。2003年、東京・銀座の写真賞選考会場で急逝。享年82。
もともとは女性ポートレート撮影を中心に活動し「讃婦人科」の異名をとっていた。撮影が始まる前から被写体と和やかに会話し、最も良い表情を引き出しながら撮影することで知られる。当時の週刊誌や月刊誌では引っ張りだこで一時は20誌もの連載を掛け持っていたほどである。
「美しきをより美しく」
秋山 氏はポートレートの仕事の傍ら「花」の撮影をライフワークにしていた。自身が生花店へ足を運び、たとえ同じ種類の花だとしてもフォトジェニックなものを1本1本を丁寧に吟味した。ポートレートを撮るときと同じく”最も美しく見えるアングル”を探求し続けたという。
「花」写真コンテストの開催
自身の作品づくりや撮影をしていく一方、さまざまな写真団体への協力を惜しまず、写真コンテストの審査や指導など写真愛好家の育成も熱心に行うなかで秋山 氏はこんな言葉を残している。
「アマチュア畏(おそ)るべし」
これは依頼仕事での撮影で時間など何かと制約を抱えたプロに対して、アマチュアのほうがこだわりを追求できる姿を見て、自身を含めプロへ警鐘を鳴らす言葉となり、同時にアマチュアにとってはひとすじの光明になった。
その後2002年に運営協力していた町田市フォトサロン開館3周年記念にあわせて、写真芸術の振興や社会福祉支援を目的に本コンテストを創始。「花」をテーマとして上記の思いからプロ・アマを不問の全国公募と設定した。
なお本コンテスト発足当初は入賞・入選作品を病院のラウンジや新生児室、高齢者介護施設などへの巡回展示や貸出からスタートし、現在はグランプリ及び特選の計10作品と秋山庄太郎作品(各1点)を2か所の福祉施設等に寄贈している。
今回の見どころ
本写真展では入賞の全100作品のうち、グランプリ・特選・準特選の計50作品が展示されている。秋山庄太郎写真芸術館主任学芸員 齋藤智志氏にコンテストの印象や今回受賞した作品について伺った。
「年代的にはシニア世代やベテランの実力が光る作品が多く見られました。その一方で、若い世代の応募や受賞も増えました。今回、準特選以上は10代2名・20代3名、入選は10代4名・20代2名が受賞しています」
受賞した作品について
こちらの写真は今回のコンテストで栄えあるグランプリを受賞した『或る大地』だ。齋藤 氏に本作品がグランプリに輝いたポイントを解説いただいた。
「審査委員会の講評では、花びらを大地に見立てたダイナミックな意欲作であり、今までにない個性的な表現が感じられると評価されています。撮影者の研ぎ澄まされた観察眼と多彩な発想を表現する高い技術力のある作品が多く見られるなか、特に優れた作品として受賞となりました」
おわりに
秋山 氏が2003年に急逝後も秋山庄太郎写真芸術館をはじめ、秋山 氏の写真芸術に理解ある団体や組織が引継ぎ、年1回を目安に開催してきた。多くの方が「花」と向き合い、”美”を追い求めたことで多様な個性を持つ作品が受賞するなど回を重ねるごとにレベルアップしている。
秋山 氏は生前、本コンテストについて「応募作品のレベルが高く、日本で有数の写真コンテストになるだろう」と語っていたそうだ。
その言葉通り、花写真の世界がますます広がりを見せていることが体感できる展覧会となっている。どなたでも無料で入場できるのでぜひご覧いただきたい。
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