人気フォトグラファー中西学が教える腕時計の選び方 〈後篇〉G-SHOCK、スウォッチ、タグ・ホイヤー…コラボ物がズラリと並ぶウォッチ・コレクションを披露します!
はじめに
前篇では私の商売道具であるカメラと腕時計の合わせ方=スタイリングについて紹介させていただきました。前篇で書いたように、私はティーンエイジャー時代からファッションが好きでした。とりわけ1990年代後半から2000年代前半に世界的なブームとなった「裏原系ファッション」にハマっていたのです。
ご存じの方も多いと思いますが、「裏原=ウラハラ」とは裏原宿のことで、原宿駅から竹下通りを抜けた原宿通りやキャットストリート周辺を指すことが多いです。DJ/音楽プロデューサー/デザイナーの藤原ヒロシさんが中心人物で、彼らのショップがこのエリアに集中していたことから、いつしか「裏原系」と呼ばれるようになりました。音楽とストリートカルチャーがバックボーンとしてあり、いまやディオールやルイ・ヴィトンといったハイブランドも取り入れるストリートファッションの一大ムーブメントとなりました。中でもブランド同士が組織の枠を飛び越えて取り組むコラボレーションが特徴的でした。そんなストリートファッションへの愛着もあって、私の腕時計選びは「コラボ物」が中心。今回はそのコレクションの一部をお披露目いたします。
スウォッチ×ブランパン スキューバ フィフティ ファゾムス
前篇の記事でも、ライカ(Q2)と映画『007』の主演で知られる俳優のダニエル・クレイグ、そして写真家のグレッグ・ウィリアムズの特別コラボモデルを紹介。そして、『007』でダニエル・クレイグ演じるジェームズ・ボンドが身に着けている「オメガ シーマスター ダイバー300M 007エディション」をライカQ2のコラボモデルに合わせました。
そんなコラボ好きの私が最近とくに気に入っている腕時計があります。ユニークなデザインでコレクターも多い「スウォッチ」の新たなコラボモデル「スキューバ フィフティ ファゾムス」です。スウォッチが新たにタッグを組んだのは、世界最古にして最高峰の機械式ウォッチメーカーである「ブランパン」。同じスウォッチ・グループだから実現できたコラボとはいえ、スタイリッシュながら手の届きやすい価格帯のスウォッチと「価格が二桁違う」超がつくほどの高級な腕時計ブランドとのコラボには、胸躍る驚きがあります。
そして、チョイスされたのがブランパンの中でも屈指の人気ダイバーズウォッチである「フィフティ ファゾムス」という点が、さらに心を湧き立てるのです。
スウォッチは機械式ではなくクオーツムーブメントを採用しているモデルが圧倒的に多いのですが、ブランパンは機械式ウォッチしか作らないブランドなだけに、搭載しているムーブメントもクオーツではなく自動巻です。また世界初のダイバーズウォッチ「フィフティ ファゾムス」から派生したモデルとあって、91m防水を確保しているのも忘れてはならないポイントです。
新たに開発されたバイオ素材であるバイオセラミックのケースが特徴的な6色展開の「スキューバ フィフティ ファゾムス」シリーズから私が選んだのは「インディアンオーシャン」。くすんだグリーンのケースにブラックのベゼルは新鮮な配色です。前篇でも「ミリタリーが好み」と書きましたが、海中から引き揚げられた漁網をリサイクルして作ったNATOストラップは、グリーン、ブラック、オレンジの3色のラインが際立ち、その見事な配色のグラフィックに心を揺さぶられるのです。
●スウォッチ×ブランパン スキューバ フィフティ ファゾムス ケース径:42.3mm ムーブメント:自動巻 91m防水
スウォッチ×オメガ バイオセラミック ムーンスウォッチ コレクション
実は「スウォッチ×ブランパン」には先駆けとなるコラボレーションがありました。ブランパン同様スウォッチ・グループの中核ブランドであるオメガです。そして、このコレクションはオメガの代表的なモデルである「スピードマスター」がベースなだけに、2021年のローンチの際にはソールドアウドが続出、いまも人気が継続しています。
スピードマスターは1960年代にNASAの公式ウォッチとして採用され、月面着陸した宇宙飛行士の腕に巻かれていた「ムーンウォッチ」として名高いクロノグラフ。とくにアポロ13号の乗組員の命を救った奇跡の物語は映画化され、多くの人々の脳裏に刻まれました。また、スウォッチ版のネーミングが「ムーンスウォッチ」というのも洒落が利いています。
シリーズには全11モデルがラインナップされており、惑星をモチーフにしたデザイン。私が選んだ「ミッション・トゥ・サターン」は6時位置に土星の環が描かれたモデルで、サンドベージュとブラウンが織り成す色のトーンがシックな趣きです。
コレクションのリリース時には、「腕時計史上、最もエキサイティングなコラボ」と世界各国で絶賛の嵐。スピードマスターをモチーフに多彩なバリエーションを展開しているだけでなく、ストラップに「OMEGA」「SWATCH」そして「Speedmaster」のロゴが大胆にレイアウトされており、このコラボのユニークさを物語っています。
●スウォッチ×オメガ バイオセラミック ムーンスウォッチ コレクション ケース径:42mm ムーブメント:クオーツ 3気圧防水
タグ・ホイヤー×フラグメントデザイン
冒頭に書いたように、私は10代の頃から裏原系のストリートファッションにハマっていて、その中心人物だった藤原ヒロシさんを当時からリスペクトしていました。藤原ヒロシさんが主催する「フラグメントデザイン」がコラボしたナイキ、リーバイス、ルイ・ヴィトン等とのアイテムもこぞって購入。中でも気に入っているのが、2020年にリリースされたタグ・ホイヤーとのコラボモデル(世界500本限定)です。
タグ・ホイヤーは世界的な人気を誇るスイスのウォッチメーカー。とくにモータースポーツとの関係が深く、F1のモナコグランプリを始め、多くのカーレースでパートナーシップを組んでいます。また、モータースポーツで使用されるストップウォッチ付きウォッチであるクロノグラフモデルが高い定評を得ていることでも有名です。
そして、このコラボモデルはブラックの文字盤とベゼルにレッドのクロノ針がひときわ映えるアバンギャルドなデザイン。文字盤は装飾性を排し、あえて秒針を省いた「二つ目」のカウンターがクラシックさを演出しています。そして、文字盤上の4時と5時の間に「FRAGMENT」ロゴをレイアウト。ディテールの処理も抜群にうまいですね。
●タグ・ホイヤー×フラグメントデザイン ケース径:44mm ムーブメント:自動巻 100m防水
カシオ G-SHOCK
そして、最後にご紹介するのが、カシオの「G-SHOCK」です。私とG-SHOCKの出会いは偶然の出来事でした。高校生の頃、道を歩いていたら妙な形をした腕時計が道端に落ちていたのです。それを拾った私は交番に届けましたが、その後、落とし主が見つからず、数カ月後、そのG-SHOCKは私の所有物となりました。
そのような経緯があって、私はG-SHOCKの虜になっていきました。ただ、私は普段ほとんどG-SHOCKを身に着けません。撮影の仕事のときも、プライベートでも。着用せずに、ただコレクションするのが好きなのです。
そのため、私のG-SHOCKコレクションは木製の高級時計ケースに収めています。それも、入れっぱなしではなく、モデルを入れ替えて悦に入っています。実用時計であるG-SHOCKを使わずに飾るだけなんて……と奇妙に思われるかもしれませんが、そんなアンバランスさも気に入っているのです。
そして、G-SHOCKコレクションにおいても、私のコラボ好きの片鱗が垣間見えます。最近のコレクションでも日産GT-R(=写真左)や、ダウンジャケットで有名なイタリアのアパレルブランド「ヘルノ」(撥水性の高い「ラミナー」シリーズ)とのコラボなど、眺めているだけで楽しくなります。
では、時計ケースに収められたお気に入りたちをご紹介しましょう。右からダイバーズウォッチの「フロッグマン」イルカクジラモデル、初代フロッグマン限定モデル、初代モデルを復刻した40周年記念モデル クリスタライズド 、吉田カバン85周年記念のポーター×カシオ スペシャルエディション、シュプリーム×ザ・ノース・フェイス×カシオのトリプルコラボ、ポーター×カシオ コラボウォッチ…といった個性的な顔ぶれです。
今回は私のウォッチ・コレクションをご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?時計選びの基準は人それぞれ。どんな写真を撮りたいか、どういったカメラなら撮れるか、どのレンズが最適なのか。撮影機材をチョイスするときの悩ましさと楽しさは腕時計でも同様です。「弘法筆を選ばず」とは言いますが、道具を選ぶ楽しさ、所有する喜びはまた格別なのです。
撮影・ShaSha編集部
■写真家:中西学
岡山県出身。一般企業に勤めながら、独学で写真&動画を始める。フリーランス転向後、2011年からは自らの個展も開催。いち早くドローン技術を取り入れ、日本の絶景写真を撮り始める。2020年開催の個展「躍動」では富山県高岡市の伝統文化やそれを後世に受け継ぐ人々を中心とした撮影を行う。富山に限らず、日本の四季や伝統文化をオリジナリティ溢れる視点やカラーで表現するを常に意識し活動を行っている。2022年にはNetflixで展開中のULTRAMAN写真展「Inhnritance」開催。
Microsoft(MCT)
公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
dji CAMP Specialist
SONYαアカデミー講師
FUJIFILM Xフォトグラファー
DavinchResolve18 Certifild Trainer