超広角レンズを使用したポートレートの撮り方|Rinaty
はじめに
皆さんは人物を撮影する際、レンズは何ミリを選びますか?
私は超広角レンズ(14-24mm前後)をよく使用しています。
超広角レンズは要らない部分が写りすぎてしまう、背景がボケなくて使いこなし方がわからない、歪みによって違和感が生じてしまうなど、いろんな悩みをよく聞きます。
しかし、私にとって超広角レンズは非日常の世界を作り出すための必需品。魅力や使い方を理解し、たくさんの方に超広角ポートレートに挑戦してみてほしいです。
歪みをあえて利用する
私は人物の全身を入れて撮る際に超広角レンズをよく使用します。縦構図で脚が画面の端に入るようにした場合、レンズの歪み効果によって脚を長く見せることができます。逆に中心部分は縮んで写るため、顔の部分は中心に配置すると小顔効果を得ることができます。
私は自分自身を撮影するセルフポートレート写真家として活動しています。しかし、モデルのような体型ではなく、身長も平均的で高くありません。そんな自分でもレンズの効果によって、小顔で脚が長く背が高いモデルのように見せることが可能になります。
こちらの作例ではカメラを膝よりも低い位置に設置し、全身が入るようにセッティングしています。そして枝垂れ桜や城跡のパースを画角に入れ込んでいます。
画角にギリギリ入らない位置にストロボを設置し、セルフタイマーのシャッターが切れるタイミングに合わせてスカートの裾を大きく揺らしています。欲しい情報を全て入れ込み、スタイルをよく見せられるのがこのレンズの一番の魅力だと思っています。
こちらの作品ではカメラをハイアングルで設置して撮影しました。
ハイアングルにすることによって鳥居、階段に落ちた桜の花びらを全て入れ込むことができます。そして裾が長いドレスを着用し、裾が画角の端に来るようにしました。こうすることでドレスの裾が広がっているように見え、脚は長く顔は小さく見えるようになりました。
この作品では、セルフタイマーのシャッターが切れるタイミングに合わせて桜の花びらを自分で投げて飛ばし、写真の中に動きを加えています。
レンズの近くに被写体を持ってきてダイナミックな構図を作る
広角レンズはレンズに近い被写体ほど大きく見せることができます。
私は超広角レンズを使用する際、手前に布や前ボケに使えそうなものを配置して視線導入に利用することが多いです。
この作例は北海道で撮影したセルフポートレート作品です。広大な珊瑚草畑が写るようにハイアングルでカメラを設置しました。珊瑚草と空の輝度差が大きかったためハーフNDフィルターでバランスを整え、衣装の肩の部分についている布を三脚、ライトスタンドにそれぞれ結び付けて引っ張り、風を味方にして撮影しています。
こちらの作例では地面に垂れ下がった桜の幹の上にカメラを設置し、巻物の先端を三脚に結んでいます。そして巻物を引っ張りながら桜の枝の下に潜り込んで撮影しました。
巻物によって生じるカーブを画角に入れ込むことにより、被写体により注目しやすい構図となっています。
この作品は大阪の新世界で撮影しました。ふぐの看板は現在撤去されてしまっており、二度と撮ることができない作品です。この撮影が終わった10日後に消えてしまい、撮りに行ってよかったと感じています。ふぐの看板が主役のため、看板の真下にややローアングルでカメラを設置し、扇子をカメラの前に広げて撮りました。扇子の扇状のラインがふぐの看板と被写体に向かって伸びており、視線導入として活かすことができました。
観光客が多いエリアで、写り込みを目立たなくする
こちらは京都の有名観光地、嵐山で撮影したセルフポートレートです。京都と言えば観光客がとても多いイメージがありますが、そんな場所でも超広角レンズがあれば、観光客がいないような状態で撮影することができます。
川沿いに座り、渡月橋と川、そして空が入る位置にカメラを設置し、画角に入らない位置にストロボを置いています。そして顔は手に持った月型のライトから発する光で照らしています。
渡月橋の上には多くの観光客がいますが、超広角レンズを使用した場合、遠くにあるものは小さく写る特性があるため、ほとんど見えない状態で撮影することができました。この日は台風の前日で雲の形が面白く、ハーフNDフィルターを使用して雲のディテールまでしっかり写しました。このように空を大きく写したい時にもおすすめのレンズです。
現場を広く見せる
こちらは6畳ほどの広さしかないコスモス畑で撮影したセルフポートレート作品です。
花畑で撮影するときは広角レンズではなく、望遠レンズを使う人が多いと思います。望遠レンズは花畑がスカスカな時に圧縮効果を活かすことで、花が密集して咲いているように見せることができる優秀なレンズです。
私は「空に向かって花を捧げる」という絵を撮りたいと思い、どこまでも広がっている広大な花畑を求めて現場に向かいました。しかし撮りたい色のコスモス畑の面積があまりにも小さかったため、アングルを低くし、コスモス畑の向こう側にある芝生がなるべく写らないように調整。また、カメラをコスモスに近づけて花を大きく写し、画面に占めるコスモスの量を補いました。白い大きな花を空に掲げた私が写っていますが、カメラから5m程度しか離れていません。レンズによって花を大きく写し、人間を小さく写すことによって、小さな花畑でも広く見せることができました。
こちらの作品は神戸のメリケンパークで撮影したセルフポートレート作品です。ここに行かれたことがある方はご存知かと思いますが、私が立っている場所は小さな塔の根元です。ローアングルでカメラを設置し、地面と塔のカーブの欲しい部分だけを切り取り、ラインを意識してポージングしました。
後日、私の父が同じ場所で同じようなポージングをした写真を撮ったので比較として並べてみました。同じ場所でも撮り方次第でこんなに違うのかと驚きました。
この作品と父の写真をSNSにアップすると、同じように撮る人が数十人も現れました。神戸に行かれる際はぜひ撮ってみてください。
おわりに
超広角レンズは使いこなしが難しいイメージがありますが、このように面白い使い方をすることができます。広範囲を写し込むことができるので、どの部分を入れてどの部分を入れないか見極めが大切です。そして普段目で見えている世界よりも広いため、最初は戸惑うかもしれません。ぜひいろんな場所に超広角レンズを持っていき、自分なりの構図を見つけることを楽しんでもらえたら嬉しいです。
■写真家:Rinaty
2021年よりフリーランスフォトグラファーに転身、大阪を拠点として全国で活動中。カメラマン・モデル・ヘアメイク・スタイリング・アートディレクションを全て一人でこなすセルフポートレート写真家として多くの作品を残す。フォトウォークやセミナー等の撮影イベントも多く開催し、上田安子服飾専門学校スタイリングフォト学科にて講師を務める。その一方でウェディング前撮り、成人式前撮り、プロフィール撮影、キッズ撮影、広告撮影、商品撮影など幅広く活躍している。
日本写真家協会 正会員・東京カメラ部2022 10選