「セルフポートレート」の魅力|Rinaty
はじめに
初めまして、みなさんこんにちは!写真家のRinatyと申します。
みなさんは「セルフポートレート」を撮影したことはありますか?
セルフポートレートとは、簡単に言うと「自撮り」です。自撮りと聞くと、ほとんどの方はスマホを目の前に掲げて可愛いポーズで写るものをイメージされると思います。
対して私のセルフポートレートは、三脚やストロボをセットして一眼カメラで自分を撮影するスタイルです。私は普段、セルフポートレートをメインに撮影しております。今回はその魅力をみなさんにお伝えできればと思います。
「セルフポートレート」との出会い
私は学生時代に写真部に入り、そこで初めて写真を撮り始めました。最初は風景写真や実家の犬を撮影していましたが、私にしか撮れないものを撮ってみたいという気持ちが強くなり、ポートレートを撮り始めました。最初は学校の友達や家族にモデルになってもらって撮影していました。
そのうち、ストロボをなんとなく購入したところ、目で見えている世界とは違ったものを撮影できることに感動し、ライティングを独学で学び始めました。最初は操作がとても難しく、セッティングするのにかなり時間がかかってしまっていました。そのため、モデルになってくれる人に対して申し訳ない気持ちが強くなり、家のベランダで自分を練習台として撮り始めました。
元々自分の容姿が好きで撮りたいというのではなく、どんな時間や天候でもモデルになってくれる便利な被写体だったため、撮影し始めました。
こちらは私が人生で初めて撮影したセルフポートレート作品です。
夏休みの間に夏らしい写真を撮ってみたいと思い、近所の花屋さんでひまわりを購入し、わざわざ植木鉢に植え替えて撮影しました。構図や使っているアイテムなど、今見返すとツッコミどころが満載ですが、私にとって大切な一枚です。
また、こちらの作品は初めて雨の中で撮影した作品です。
ストロボを使うと雨を写すことができると知り、雨が降る夜に家のベランダで撮影しました。雨の中でストロボをセッティングするのはとても難しく、満足できる写真が撮れるまで4時間くらいかかってしまいました。撮影後は全身ずぶ濡れで、他の人にモデルをお願いしなくてよかったなと思いました。
本格的に自分を撮影し始めたきっかけ
その後何度も何度も撮影し、少し上達しましたが、あくまでも自分は練習台であり、SNSで常にモデルさんを探していました。ある時、大阪でキャンドルナイトというイベントが開催されており、写真を撮りに行きました。無数のキャンドルが街中に溢れていて、すごく綺麗だったのですが、キャンドルだけを撮影することがつまらないなと感じてしまいました。
期間限定のイベントだったため、モデルさんをすぐに呼ぶこともできない。だからと言って、その場で自撮りする勇気もない。それなら家で同じようにキャンドルを並べてセルフで撮ってみよう!と閃きました。100円ショップでキャンドルをたくさん購入してベランダに並べ、造花を頭に固定し、可愛いワンピースを着て夢中で撮影しました。
この時、撮影もモデルもヘアメイクもスタイリングもアートディレクションも、全て1人でやるって何て面白いんだろうと感じました。
私はモデル体型ではなく、美人なわけでもありません。それでも、自分が理想とする世界に入れた私のことはすごく素敵だなと思えました。自分で、自分のことを好きになれる写真を撮ることができるって素晴らしい。ポートレートは大抵、モデルやアシスタントなど多くの人が協力して一つの作品を作り上げます。もちろんそれも素晴らしい。でもそれは共同作品であって、私だけの作品ではない。最高に自分を美しいと思うことができる私だけの作品を作りたいという気持ちが強くなり、練習台ではなく、作品として自分を撮り始めました。
コロナ禍とセルフポートレート
セルフポートレートにどハマりし、週末の休日は三脚とカメラを持って必ずどこかに出掛けていました。そうしているうちに、突然コロナ禍が始まりました。
外に出てはいけない、人に会ってはいけない。写真を撮りに行ってはいけない。すごく息苦しい生活が始まりました。
SNSの中でも、リモートで写真を撮り合う人、オンラインで写真を学ぶ人、写真を撮ることを辞めてしまった人などたくさん見かけました。
私は家の中で自分を撮影し続けていました。
こちらは私のSNSのアイコンに使用している作品です。
コロナ禍の影響で卒業式などが中止になり、花屋さんが困っているというニュースを聞き、近所の花屋さんで薔薇の花を衝動買いしました。当時背景紙を持っていなかった私は真っ赤なワンピースを床に広げてその上に薔薇と一緒に横たわり、ハイベッドの金網の上にカメラを乗せて俯瞰で撮影しました。
こちらの作品は家のベランダで撮影しました。デザイナーのアリスガワアリスさんから星がテーマのドレスをお譲りいただき、ドレスの雰囲気に合わせてキラキラ光る小道具を集めて撮りました。
この作品を撮影している時に、窓を開けたお隣の住人の方と目が合いました。次の日、母から「お隣さんから「昨日娘さん、可愛いドレス着て写真撮ってましたね」って言われたよ。恥ずかしいからもうやめて!」と怒られました。しかし、コロナ禍で他に撮れる場所がなかったので、その日の夜も気にせず撮影しました。
家で撮ることに飽きてきた頃、祖父が残した空き家をDIYでマイスタジオに改造しました。
10年以上誰も手をつけていなかった廃墟。ボロボロでしたが、撮影したい思いが強かったため、遺品の処分から壁の塗装、天井の板を外すなど全て1人で行いました。
撮影できる場所がないなら作っちゃえばいいのです。そこで撮影した作品がこちらになります。
天井から布と花を垂らし、スモークマシンや定常光を使って撮影しました。
こちらの作品はマイスタジオのガレージで撮影しました。大量の紫陽花を購入し、子供用プールに布と水を入れて寝転んで撮影しました。花の位置の調節がとても難しかったです。体が冷えて凍えながら3時間撮影し続けました。
さいごに
このように私は本格的にセルフポートレート作品を5年間撮り続けています。
セルフポートレートは準備がとても大変です。ですがメリットがたくさんあります。
1人で作り上げたという達成感が大きく、自信に繋がります。
1人だと、スケジュールを調整する必要がありません。
写っている人が自分だから、コンテストなどに応募する際の肖像権の確認が必要ありません。
作品のクオリティを上げるために美意識が上がります。
満足がいくまで時間を気にせずに何度でも挑戦できます。
もし自分のことが好きになれない方、モデルに依頼することが苦手な方、写真の技術を上達させてみたい方はぜひ一度セルフポートレートに挑戦してみてほしいです。きっと、新しい発見があるはずです。
■写真家:Rinaty
2021年よりフリーランスフォトグラファーに転身、大阪を拠点として全国で活動中。カメラマン・モデル・ヘアメイク・スタイリング・アートディレクションを全て一人でこなすセルフポートレート写真家として多くの作品を残す。フォトウォークやセミナー等の撮影イベントも多く開催し、上田安子服飾専門学校スタイリングフォト学科にて講師を務める。その一方でウェディング前撮り、成人式前撮り、プロフィール撮影、キッズ撮影、広告撮影、商品撮影など幅広く活躍している。
日本写真家協会 正会員・東京カメラ部2022 10選