RAWってなに?カレー作りで解説するRAW撮影の旨味
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はじめに
皆さんは撮影する時、jpeg、RAWもしくは同時保存、どの記録形式で撮っていますか?デジタルを始めてまず疑問に思うのは「RAW」って何、という事だと思います。なんとなく周囲の声からRAWって良いものみたい、画質が優れているらしい・・・というふわっとした感覚でRAW撮影している人も中にはいるのではないでしょうか。
これからRAWについて解説していきますので、「ふわっと理解」とおさらばしましょう!
RAWについてストレートに解説すると専門用語や理系よりのとっつきにくい話になってしまうので、今回はみんな大好きカレー作りに例えて誰でもわかりやすくRAW撮影の利点について話していきたいと思います。
RAWって何??
RAWという言葉を辞書で引くと、「生の」「未加工の」という意味が出てくると思います。まさしくその通りで、シャッターを切ってセンサーが光を受け取っただけの、「まだ画像になっていない」状態を指します。
カレーを作る時、まずは買い出しに行きますね。お肉に野菜、こだわる人は色々スパイスなど厳選するのではないでしょうか。筆者は新大久保のスパイス屋で仕入れたりするのですが、買ってきただけではまだカレーはできません。まさにこの「素材の状態」がRAWなのです。
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ここからあれこれ調理してようやくカレーになるわけですが、この調理に当たるのが「現像+編集」(ここについては次章にて)だと思ってください。なので下準備である現像はいじりすぎないことがポイント。
RAWはセンサーで受け取った光を電気信号に変換しただけのデータで、まだ写真として認識できる段階ではありません。センサーが受け取ったデータ(素材)を変換(調理)して、初めて色のついたカラー写真(美味しいカレー)が出来上がるのです。
受光データの変換を「デモザイク処理」というのですが少し補足しておきます。小難しい話しはちょっと・・・という方は飛ばして次章に進んでください。
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冒頭の写真に「デモザイク処理」を施す前のデータを見てみましょう。中央部を拡大したものです。格子状に並んだセンサーのピクセルが見えますね。実は一つ一つのセンサーは、どの程度の明るさかという輝度情報しか記録できません。
カラー写真を得るために、それぞれにRGBのカラーフィルターをつけることで拡大図のようなデータを記録しています。レッドのピクセルだけを見ても明るさの違いしかありませんね。これをフルカラーにするために、隣り合うピクセルから一定のアルゴリズムで「このピクセルはほぼこんな色だろう」と置き換える作業を行います。それが「デモザイク処理」なのです。
デモザイク処理にも色々なアルゴリズムがあって、高感度撮影時に強いものや解像感を出すのに有利なものなど色々あります。
現像からプリントの流れ
ちょっとここで「現像」という言葉について触れておきましょう。デジタルを始めた時期によってソフトなどの周辺環境が異なるせいか、どこまでを「現像」というのか人にやって若干違いがあるように感じるので、ここでは統一させておきたいと思います。
撮影したデータからプリントまでの流れはだいたい以下のようになると思います。筆者はAdobe Bridge派なのでLightroom派の人は若干異なるとは思います。
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こうしてプリント用のデータを作り、プリントアウトして額装して以下のようになります。
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以上をまとめたのがこちらです。現像自体は筆者の場合、ホワイトバランスと明るさをちょっといじる程度なので30秒くらいです。
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現像(develop)という言葉はフィルム時代の名残だと思いますが、見える形に変えるということなので「変換」と称した方が良いのではと個人的に思っています。
これを明るい暗室こと「Photoshop」というキッチンで各々の味に料理(編集=レタッチ)していって、最終的な完成品となるわけですね。
jpegはレトルトカレー
ところでカレーを食べる方法って他にもありますよね。そう、レトルトカレーです。最近はレトルトでもなかなか美味しいものが増えてきました。まさにこれが「jpeg」なのです。これだけいうとこじつけ感があるので、しっかり解説していきましょう。
jpegデータも元を辿ればRAWと同じセンサーで受け取った光から生み出されているのですが、「レトルトカレー」に例えた通り、すでにカメラの中で調理されている状態です。それを担っているのが各社メーカーの画像処理エンジンです。
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jpegは汎用性の高い画像形式で、ある程度見た目は変えずに圧縮することで、ファイルサイズを小さくすることを目的としています。
圧縮を言い換えれば、ここまでは削って捨てても見た目はほぼ一緒ということなのでカットして小さくしようということです。当然捨ててしまったものは戻ってはきません。このことを一方通行の「非可逆圧縮」処理といいます。一方RAWデータは素材自体を保存しているので、そこから「何度でも」調理可能です。
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jpeg画像は手すり(画面左上)の部分がシャープ処理などで潰れている
最近は大容量のハードディスクも安くなりそこまでファイルサイズなど気にならなくなりましたが、デジタル黎明期ではいかに容量をおさえるかが大きな問題でした。
RAW形式のデメリットは間違って消去した時などの復旧がやや困難なことくらいでしょうか。なので大切な撮影の時は同時記録をオススメいたします。
jpegは画像処理エンジンの味付け済み
▼jpeg撮って出し
▼RAWストレート現像
各社オリジナルの画像処理エンジンによって味付け済みなのがjpegデータ。
想像してみてください、レトルトカレーから全く違うテイストのカレーに変えるのは大変ですよね。jpegは色調からシャープネスなど、すでに調理されているので編集できる幅が少ないのです。一度激辛にしてしまったものを甘くするのは至難の業。
一昔と比べjpegのクオリティもかなり上がりましたが、自分色にレタッチしていくのであればRAWデータにすべきです。
さらにはjpegとRAWのbit数の違いが大きな壁として存在しています。「bit数」はどれだけ細かく記録するかという違いです。jpegは8bitデータなのに対し、RAWは12から16bitで記録されます。8bitというのは2を8回かけた256段階で記録しているのに対し、16bitはなんと65536段階です!
例えば、空の微妙なグラデーションをjpegでは256段階でしか記録していないのに対して、RAWデータは非常に細かく記録されているので階調が豊かなわけです。白飛びギリギリでもRAWならデータが残っているようなケースもあり、ラチチュードの広さがあります。
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よく「FUJIFILMの色味が良い」、「SONYの青は・・・」などの話しを聞きますが、これには違和感を抱きます。どちらも元の素材は一緒なので、各社が持っている作り方のレシピ(処理エンジン)に則ってどう調理するかの違いでしかありません。Photoshopをある程度使いこなせれば、SONYで撮影してFUJIFILMっぽく調理することは可能なのです。
とはいえ、なかなか見事な職人が作ったものをうまく再現できないということだってあります。そういう時は同時記録して、各社秘伝の味を楽しむのもありだと思います。
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同じ現像データからでもこのようにまったく違った印象の写真に調理できます。ウェブなら気づかないことだと思いますが、特に展示会など大伸ばしをすると元データがjpegだと編集時に制限が相当出てきます。
RAWは将来のために
ここまでの説明だと、高画質のためにRAWで撮るべしとなりそうですが、筆者はもっと大きなものがあると考えています。
シェフである画像処理エンジンもデジタル黎明期から比べれば相当熟練され、A4くらいまでしかプリントアウトしないのであればさほど変わらないようになってはきました。
素材のまま保存しておくRAWデータの利点は、未来のためにあるのです。例えばこちらは1999年発売のキヤノン1Dで撮影したデータです。約420万画素しかありません。
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もしjpegで撮影していたらその時の画像処理で仕上げられたものしか残りませんが、RAWで撮影していれば今現在のAIが入った現像ソフトなどにより画質が向上して生まれ変わることができるのです。
スーパー解像度を使ってアップスケールし、最新のノイズ除去ソフトなどを施せば実質1680万画素あたりのデータにすることも可能です。
極端な話、買ってきた素材を冷凍保存しておけば100年後とんでもない技術が出た時にも適応させられるのです。
将来想像もつかない技術が生まれる可能性は無限大です。RAWで撮っておけばいつでも最新のテクノロジーが使えるし、自身の画像編集技術が向上すれば画質は年々よくなっていくことになります。
筆者もこの2004年あたりまでRAWの優位性をしっかり理解していなくて、jpegオンリーで撮影していたため、いま非常に後悔しております。SNSなど、小さなスマフォの画面であればRAW撮影の優位性は実感できないのですが、将来プリントすることなどあるはず。
カメラのポテンシャルを100%活かすためにも、ぜひRAW撮影を取り入れてみましょう。
■写真家:新納翔
1982年横浜生まれ。麻布学園卒業、早稲田大学理工学部中退。2000年に奈良原一高氏の作品に衝撃を受け、写真の道を志す。2007年から6年間山谷の簡易宿泊所の帳場で働きながら取材をし、その成果として日本で初めてクラウドファウンディングにて写真集を上梓する。2009年から2年間中藤毅彦氏が代表をつとめる新宿四ツ谷の自主ギャラリー「ニエプス」でメンバーとして活動。以後、現在まで消えゆく都市をテーマに東京を拠点として活動をしている。日本写真協会(PSJ)会員。