キヤノン EF135mm F2L USM レビュー|まだまだ活躍してくれるボケ味美しいEFレンズ

はじめに
こんにちは。フォトグラファーの杉本です。
前回のCanon EOS 5D Mark IVに続いて、今回はEF135mm F2L USMのレビューを書いていきます。
Canonのカメラも数年前にミラーレスが発売になり、現在のメインマウントはRFマウントへ更新されています。しかしながら、EFマウントのレンズは良い状態のものが中古市場に多く存在します。マウントアダプターを使用すれば現行のミラーレス機でもまだまだ現役で活躍しますので、前回書いたようなレフ機で使用するのはもちろんのこと、高性能な最新機種との併用も選択肢として持っておくのは非常に有効だと考えています。
基本性能
名称からも分かる通り、135mmの単焦点レンズです。開放F値が2.0、フィルター径が72mmです。いわゆる大口径レンズに相当すると思います。中望遠レンズとしてそれなりの大きさもあり、重さも公式で約750mmと決して軽くはありません。ちなみに公式ページでは望遠レンズと紹介されています。僕自身はこの距離を中望遠だと思っていますからここでは中望遠レンズと呼ばせていただきます。ご容赦ください。
最短撮影距離は0.9mとそれなりに寄れない印象を持ちますが、そこは135mmという中望遠レンズの力でアップに写せますので、そこまで気にならないかなと思います。
特徴的なのは、その圧倒的なボケ味です。ボケがとても美しく滑らかで、このレンズならではの描写をします。また逆光性能もそれなりに良いのですが、発売が1996年と時間が経っていることは間違いないので現行の最新レンズに比べるとふんわりした印象になります。
従来であればデメリットになる点ですが、このレンズ特有の美しいボケとコントラストの相性がとても良いので、そこも含めて楽しめるおすすめのレンズです。
圧倒的なボケ味

■撮影環境:1/640 F2.0 ISO100
このボケ味こそが、このレンズ最大の特徴と言っていいと思います。前ボケのボケ量も去ることながら、ピント面から背景に抜けていく花の表情まで滑らかにボケています。強烈に輪郭が浮き出るようなボケ方とは違い、背景に馴染みつつも被写体の存在感を演出してくれるのが最大のポイントです。こちらの写真はそれなりに日が高い時間に逆光気味で撮影していますが、フレアやゴーストなどは出ていませんので、特別気を遣う必要がないのも心強いポイントです。また逆光での撮影時にはコントラストが低下しますので編集における自由度も高く、派手な白飛びや黒潰れだけケアしておけばご自身の世界観の演出がしやすいレンズだと思います。
構図の自由度が高い

■撮影環境:1/640 F5.6 ISO100
このレベルの中望遠レンズになると基本的には歪みを気にする必要はありません。レンズやカメラは光学機器ですから、厳密には歪みが一切発生しないわけではないと考えているのですが、目視でパッとそれを感じることはないというのが個人的な見解です。それゆえに画面の端っこに被写体を配置しても違和感がなく、背景の広大さや遠さを表現する時にはとても便利です。
またこの写真ではF5.6まで絞って撮影していますが、海の表情がしっかり残っています。一方で奥の方が波間の凹凸は残りつつボケてもいるという絶妙な雰囲気を醸し出しています。こういった表現はなかなか難しく、中望遠レンズならではのものだと思います。開放時の圧倒的なボケと裏腹に、絞り込めばしっかりとした解像度で写してくれるあたりはメーカーの技術の凄まじさを垣間見ることができるポイントです。
縦構図でピント面の浅さを使う

■撮影環境:1/320 F2.0 ISO100
こちらの写真は通路に立ってもらって、足元の土が写らないように撮影した写真です。手前から奥までボケが連続して続くようにして奥行きを見せつつ写真にインパクトがでるように撮影しています。縦構図にすることで長い距離(奥行き)を画角に収めることが可能になり、このレンズ特有のボケを存分に見せることができます。レンズ固有のボケに特徴がある場合には、縦構図で空間を埋めてあげることで面白い写真を撮ることができます。
花畑などではよほど通路の幅がない限りは花畑の真ん中に立っているように見せることもできます。実際に花畑に入ってしまうと、マナー的にNGなのはもちろんのこと、洋服に花粉がついたり、ピント面に花が入ってきて位置の調整が難しいので写真として残したいのであればこそ、通路に立ってもらった方が有効です。さらに中望遠レンズが持つ圧縮効果とボケで満たしてあげると素敵な写真が撮れるのでおすすめです。
ポートレートレンズとして

■撮影環境:1/500 F2.0 ISO100
あまり何も考えず撮影した写真です。そんなこというと怒られそうですが、この写真は良い光が当たっているな〜と思ってリアクションで撮影しました。背景が完全にボケています。でも立体感がこのレンズらしい写真になりました。バストアップと言わず全身にちかい距離で撮影しても開放だとこれだけボケてくれます。また背景に標識や電車の鉄骨、煙突と複雑なものが写っているので、レンズがどのようにボケるのかを見せるのにはとても良い写真だなと思って掲載させていただきました。個人的に舌を巻いたのは青い標識のボケです。輪郭が優しくなだらかにボケてくれているので、色の境目が綺麗でレタッチでも色と空の境目が痛んでいないあたりはびっくりしました。丁寧に写真を扱いたい人には強い味方になってくれると思います。
85mmや135mmはポートレートレンズと呼ばれることもありますが、このレンズも例に漏れずシンプルな撮り方をすると被写体の存在感を強調してくれます。背景を見せたくない場合や被写体の存在感で勝負したい場合にはストレートに撮ってあげると良いと思います。光の面白さや綺麗さなど、シンプルに見せるものを抽出できるのはとても助かるポイントではないでしょうか。
風景の中で撮る

■撮影環境:1/2500 F2.0 ISO100
僕が引きのポートレートと呼んでいる手法があります。このように背景をある程度見せつつその中に存在してもらうという撮り方です。このレンズで被写体や見せたい空間からある程度距離をとって撮影することで、背景は優しくボケつつもその存在感を残してくれます。その中でピントはしっかり被写体に当てて主役でいてもらうという撮り方です。これは中望遠レンズでF値が2.0だからこそ可能な撮り方です。もっと広いレンズでは背景が写りすぎてしまいますが、このレンズであればストーリー性を感じるような独特の写真へアプローチが可能です。

■撮影環境:1/1600 F2.0 ISO100
トップの写真の場所で、縦構図で撮影した写真です。こちらも背景の中で小さく存在していますが、構図的に人が主役でいてくれるようにしています。右下の空間が退屈にならないように手摺の影が伸びてくるのを待って撮影しました。また左上の花の前ボケを大きく使って光の反射をとりこんでいます。このように工夫や思いつきで様々なバリエーションにもアプローチできるので、引いて撮る写真はとても面白くアイデア一つで遊ぶことができます。135mmという数字だけを見るとどうしても応用の効きにくい印象を受けますが、撮る時の距離次第で無限の可能性を秘めているのでバリエーションで困ることはないと思います。
撮影時に注意すること

■撮影環境:1/1250 F2.0 ISO100
これは長いレンズ(僕は85mm以上のレンズ)を使う時に気をつけていることなのですが、よくボケるレンズというのはピントもシビアです。絶対に撮影段階でピントのチェックをすること。これを徹底しています。特に引いて撮影すると被写体が小さくなっていくので、AFが合いにくいシーンも存在します。時にはAFからMFに切り替えて手動でピントを合わせることもあります。現場ではピントの確認を徹底しましょう。
そしてもう一つ、広いレンズと比べればブレやすいです。基本的にはシャッタースピードは1/焦点距離の2倍を基準にします。このレンズでは135mmですから、135×2=270として最低でも大体1/300秒以上にはしたいところです。もしこれを下回るならISO感度を上げてでもシャッタースピードを確保します。1/100秒などではブレずに撮るのは難しくなりますので夕方や暗いシーンでは設定に気をつけてください。
ブレの対策

■撮影環境:1/3200 F2.0 ISO100
僕が行っているブレ対策を書いておきます。すでにやってるよっていう方もいるかもしれませんが、連写の2シャッター目で撮るというものです。最初にシャッターボタンを押した時にカメラが揺れてしまうことがあるので、長いレンズを使う時には連写モードにしておいて2枚目を本番と思って撮影しています。僕は基本的に連写はしないのですが、ブレ対策としてはとても有効だと考えていてこの方法を使っています。ISOを上げたくないシーンや、1/320秒のような境目に相当するシャッタースピードの時にはとても頼れる方法なので、知らなかったという方はぜひ試してみてください。1枚目はブレているけど2枚目はブレていないというケースがあると思います。
おわりに
このEF135mm F2L USMはRFマウントでさらに明るいf1.8がCanonから発売されています。そちらもとても良いレンズです。価格と使用頻度で相談ですが、今回紹介したこのEF135mm F2L USMはまだまだレフ機を使っている、あるいはアダプターを介してEFレンズを使用しているという方にはとてもおすすめできるレンズです。ぜひみなさん、使ってみてください。ものすごく美しく写る上に撮りやすいので驚くと思います。僕が一番最初に買ったLレンズです。本当におすすめです。ここまで読んでくださりありがとうございます。ではまた。
■写真家:杉本優也
東京都生まれ東京都在住。妻を撮影し続けている活動がテレビメディアに特集されたことを機に、フォトグラファーとしてのキャリアをスタートさせる。ライブ撮影やメーカーへの作例提供、機材レビューなどの活動をしている。