ネイチャースナップのすすめ|旧モデルで始める一眼レフ キヤノン EOS 6D

小林義明
ネイチャースナップのすすめ|旧モデルで始める一眼レフ キヤノン EOS 6D

はじめに

いまやスマホは生活の必需品となっていて、多くの人が持っていると思います。それと同時にスマホに搭載されているカメラで写真を撮るのも当たり前になりました。写真人口は圧倒的に増えている中、スマホではなくて一眼レフを使って写真を撮ってみたいと思っている人も多いでしょう。でも、最新のミラーレス一眼は、けっこう高価で簡単に手がでないところもあります。そこで、今回は中古の旧モデルを利用してちょっとお手軽に一眼レフで写真を楽しんでみようというお話です。

紅白のウメを青空バックで切り取った一枚。撮影したのは1280万画素モデルのEOS 5D。画素数的に少なく感じるかもしれないが、ウェブ主体の現在では4Kモニタにも十分な画素数で、トリミングを考えなければ実用性十分だ。
■撮影機材:CANON EOS 5D + EF180mm F3.5L マクロ USM
■撮影環境:F11 1/60秒 +0.3EV補正 ISO100 WB太陽光
温室のアンスリウムの上にいた小さなアリをクローズアップ。これは2110万画素のEOS 5D Mark IIで撮影。解像度が上がりアリの細かな模様もきちんと再現している。当時は雑誌の見開きページに使える解像度として2000万画素がプロ機の基準ともなっていた。
■撮影機材:CANON EOS 5D Mark II + EF100mm F2.8 マクロ USM
■撮影環境:F3.5 1/200秒 +0.7EV補正 ISO800 WB太陽光

旧モデルでは写真を撮れないのか?

最新のカメラはどんどん高性能になって魅力的なものばかりですが、カメラと名がつく以上、旧モデルでも写真は撮れます。よく勘違いされるのですが、一眼カメラを手にしたらすごい写真を簡単に撮れるというのは大間違いです。それなりに写真の理屈を理解して、きちんとカメラを扱えなければ、思い通りの写真を撮れません。

はじめて一眼レフを手にする初心者向けということで考えてみると、あまり余計な機能は必要なく、カメラの仕組みをきちんと理解できるものが適切だと思います。

ひとつの目安として、2000万画素程度の光学ファインダー一眼レフであれば、中古品でも2万円台からと手頃なものがラインナップされていて、性能も必要最低限を満たしているといえます。あとは必要なレンズを揃えることで、撮影を始めることができます。

候補にはいろいろなカメラがありますが、今回はおすすめできる一台として、キヤノン EOS 6Dを使って考えていきたいと思います。

ほんのり染まる夕焼け空のなか、ねぐらに向かって飛んでいくタンチョウ。背景を微妙にぶらすことで動感を表現している。このような表現となると、写真の仕組みを理解していることが大切だ。
■撮影機材:CANON EOS 6D + EF28-135mm F3.5-5.6 IS USM
■撮影環境:F8 1/200秒 +1.3EV補正 ISO800 WB太陽光
EOS 6Dは十分な性能を持ちながら余分な機能がなく、一眼レフとしてカメラの仕組みを理解するのに最適のデジタル一眼レフ。自分の意図を反映して写真を撮れるようになりたい人におすすめする一台だ。

ミラーレス一眼と光学ファインダー一眼の違い

ミラーレス一眼と光学ファインダー一眼の大きな違いは、ファインダーの見え方にあります。

まずミラーレス一眼の方では、撮影される状態を電子ビューファインダー上で映像としてほぼそのまま見ることができるメリットがあります。スマホに慣れた人はその方がわかりやすいと思います。また、ファインダー内で撮影後の画像やメニューなどカメラの設定を見ることができるのも便利です。デメリットとしては、電源を入れないとファインダー像が見えない、ファインダー像にタイムラグが発生するものもあるという面があります。

それに対して光学ファインダー一眼レフでは常にファインダー像が見えていて、見える像にタイムラグがないというメリットがあり、露光中は像が消える、実際に写る様子(露出やボケ具合)を把握するには慣れが必要というデメリットがあります。撮影後の画像やメニューの設定は背面液晶でしか見ることができません。

相反するメリット・デメリットですが、カメラの構造として絞りやシャッター速度、ISO感度などの基本的な部分は同じで、写真の理屈を理解して身につけていくには、ファインダー上で写る状態が見えない光学ファインダーの方が適していると私は思っています。

EOS 6Dで実写

2012年11月発売のEOS 6Dは、2020万画素の解像度と必要十分な機能を持っていて、フルサイズ一眼でありながら手頃な価格を実現したモデルです。中古では5万円以下で入手可能で、フルサイズ一眼入門としてヒットした名機です。入門機でありながらWi-FiやGPSも搭載されていて、今時の使い方にもマッチします。

実際にあらためてミラーレス一眼との比較を意識しながら使ってみて感じたのは、風景など動かない被写体を撮影するのには「これで十分」ということです。2000万画素あればA3ノビ以上の大伸ばしにも対応できますし、画素ピッチに余裕があるので高感度でのノイズも目立ちません。RAW現像をするにもパソコンへの負荷は少なく、扱いやすいデータサイズなのもいいところです。

ピント合わせもAFロックを活用することで自由な構図で撮影でき、不自由は感じません。測距点は中央のみクロスセンサーで周辺はラインセンサーなので、中央でピント合わせするのが速く正確です。ファインダー像も見やすくマクロ撮影でもしっかりピントを確認できました。

ただ、ライブビュー時のAFは遅いです。「クイックAF」にしても一度ミラーが降りてピント合わせを行うため像が消えるので扱いにくいところがあります。三脚を使う前提で、MFで像を拡大してピント合わせするのに利用するものと割り切る感じです。

朝日に染まる霧氷の景色。細部まできちんと描きたい風景撮影では高画素機の方が有利。そういう意味で2000万画素は必要条件とも言え、トリミングを考えずにしっかりフレーミングすれば、大伸ばしも楽しめる。
■撮影機材:CANON EOS 6D + EF28-135mm F3.5-5.6 IS USM
■撮影環境:F13 1/250秒 +0.7EV補正 ISO400 WB太陽光
海岸まで押し寄せた流氷。今シーズンの流氷は気温が高かったせいか荒々しさがなく、春の流氷のような穏やかな表情だった。しっかりパンフォーカスになるよう、絞り込んで撮影している。白い部分が多いので、しっかり露出補正をして氷の色を再現している。
■撮影機材:CANON EOS 6D + EF28-135mm F3.5-5.6 IS USM
■撮影環境:F13 1/125秒 +1.7EV補正 ISO200 WB太陽光
上弦の月が昇る頃、空を見上げると暈がかかっていた。画面に少し木立を入れることで、空の高さを表現した。EOS 6Dの高感度性能は定評があり、星撮影用の改造ベースとなって人気も高かった。ISO1600では、現在のモデルと遜色ない画質で撮影できる。
■撮影機材:CANON EOS 6D + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | ART
■撮影環境:F2 3.2秒 ISO1600 AWB
月明かりのみで湿原の景色を撮影してみた。しっかりと木の影が落ちていて、光を感じることができる。ピント合わせはライブビューで行っていたが、きちんとピントの判断もできて実用的だ。ISO3200でも十分なノイズ性能を保っていて素晴らしい画質だ。
■撮影機材:CANON EOS 6D + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | ART
■撮影環境:F8 30秒 ISO3200 AWB
早々と咲き始めたフクジュソウ。地面スレスレのアングルから撮影するため、ライブビューで構図を確認しながらピントもMFで拡大表示して行った。精密なピント合わせをするのにライブビューは便利で実用的だ。
■撮影機材:CANON EOS 6D + TAMRON SP AF90mm F/2.8 Di MACRO
■撮影環境:F2.8 1/320秒 +0.3EV補正 ISO200 WB太陽光
ライブビュー時のAFは「ライブAF」を基本として利用可能だ。ただ、速くはないので、慣れたらMFで行った方がいいかもしれない。風景など動かないものであれば、三脚を使って利用すれば使えるという感じだ。同時に露出シミュレーションも「する」にしておけば、撮影される露出が見えるので撮影イメージを掴みやすい。
Wi-Fiを搭載しているので、スマホとの連携が可能となっている。Wi-Fiをオンにしてからスマホと接続すれば、「Canon Camera Connect」アプリからカメラの画像を取り込んだり、リモート撮影などができるようになる。またGPSも搭載されていて撮影地情報を記録しておくことができ、気ままに撮影するネイチャースナップ向きだ。
「Canon Camera Connect」アプリ(iOS版)の画面。初めの接続はちょっと慣れが必要だが、一度繋いでしまえば動作も軽く、スマホに選んだ画像を転送できるので、SNSの利用なども簡単にできるようになる。

動きのある被写体では撮りたい瞬間に集中して撮影すれば、けっこう撮れるという印象です。そのためには被写体のことを知っていることが重要で、撮りたい瞬間がどのタイミングで訪れるのかを研究しておくことが必要だと思いました。さすがに測距点が11個と少なく範囲も狭いため被写体が画面の中央に寄ってしまう傾向があって、そこは現在のカメラの進歩を感じることになりました。

動き続ける被写体の時には、連写速度や連写できる枚数などもちょっと辛く感じるところがありましたが、ミラーレス一眼では無駄にシャッターを押していると感じることもあるので、レリーズする瞬間に集中して撮影する方がいいのかもと反省する次第でした。

また、動体撮影時にはファインダー像が常に見えているので、被写体を捉えるのが速く撮りやすかったです。ミラーレス機ではスリープからの立ち上がりの時間が意外とかかるので、咄嗟のときにはファインダー像が見えずに被写体を捉えられないこともあります。もっともスリープしない設定にしておけばいいのですが、長時間の待ち時間があると、バッテリー消費も激しく現実的ではないところがあります。

バッテリーの持ちは最新のミラーレスと比べてもEOS 6Dの方が圧倒的にいいです。だいぶ古くなったバッテリーでも全然減らず、今のミラーレスカメラがどんなに電力消費が多いか、あらためて認識しました。最新のLP-E6Pにも対応していて安心です。

雪の斜面をかけるエゾリス。こんなシーンも被写体を素早く捉えられる光学ファインダーの一眼レフだと狙いやすい。エゾリスの姿を追いかけられるかどうかはカメラマンの腕次第だ。
■撮影機材:CANON EOS 6D + TAMRON SP 150-600mm F5-6.3 Di VC USD G2
■撮影環境:F8 1/1250秒 ISO1600 WB太陽光
タンチョウのダンスする様子を写し止めていく。次の動きを予想しながら適切なタイミングでシャッターを押すことができれば、狙い通りの撮影ができる。連写に頼りすぎるとバッファが詰まって本当にいい瞬間を逃すこともあるので、使い分けるようにしよう。
■撮影機材:CANON EOS 6D + TAMRON SP 150-600mm F5-6.3 Di VC USD G2
■撮影環境:F8 1/1250秒 ISO800 WB太陽光
湖面を泳ぐカワアイサの群れ。先頭が夕陽の反射の中央に入ったところでレリーズしている。ネイチャースナップでは、こういったありきたりの景色の中から瞬時に絵になるイメージを予測し切り取っていく楽しさがある。
■撮影機材:CANON EOS 6D + TAMRON SP 150-600mm F5-6.3 Di VC USD G2
■撮影環境:F10 1/1250秒 +0.7EV補正 ISO200 WB太陽光
AI SERVOの設定では、1コマ目のレリーズ、連写中ともにピントを優先するようにしている。少なくとも1コマ目のレリーズはピント優先にしておいた方が失敗が少ないと思う。

お手軽に一眼レフを楽しむために

一眼レフはボディだけでなく、数あるレンズを撮影意図に合わせて使い分けるのも楽しみの一つです。レンズを変えることで撮れるイメージも違ってきますから、色々なレンズを使ってみてほしいです。新品では手がでないものでも、中古であればお手軽な価格のものもありますから、そういったレンズを狙うのもおすすめです。

今回紹介したEOS 6Dはシェアの高いキヤノンEFマウントですから、中古市場にもたくさんのレンズが流通しています。また電子マウントなのでミラーレス一眼に移行してもマウントアダプターでレンズを利用できる可能性が高いです。

最近はズームレンズが主流となっていますが、昔は一眼レフを買ったら50mmの標準レンズが付いているのが当たり前でした。50mmはフルサイズとの相性がよく、絞りを変えたりアングルの変化などでいろいろな表現ができるレンズなので、レンズの特性を理解するのにもいいです。機会があれば詳しくお話ししたいと思っています。

EFレンズでは、50mmF1.8という新品でもお手軽に買えるレンズがありますから、興味があればぜひ試してみてほしいです。

夕陽に照らされる寄せ氷。氷はそれほど大きくないので広角の画角で氷に近づいて形をきちんと見せると同時に、氷の上に夕陽の反射が入るカメラポジションを選んで撮影。景色に奥行きがあるのでF16まで絞り込んでいる。
■撮影機材:CANON EOS 6D + EF28-135mm F3.5-5.6 IS USM
■撮影環境:F16 1/200秒 -0.3EV補正 ISO400 WB太陽光
同じ寄せ氷を魚眼レンズで撮影。氷がより大きく見せられると同時に水平線の歪曲が地球の広大さをイメージさせる画面となった。レンズを変えることで違う表現が可能となるのも一眼レフの楽しみだ。
■撮影機材:CANON EOS 6D + SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE
■撮影環境:F16 1/100秒 -0.3EV補正 ISO400 WB太陽光
厳しく冷え込んだ朝に見られるフロストフラワー。大きな霜なので、結晶の形もはっきりと見える。マクロレンズで等倍までクローズアップしてその形をしっかりと見せられるようにした。軽量なマクロレンズはいつもカメラバッグに入れておきたいレンズだ。
■撮影機材:CANON EOS 6D + TAMRON SP AF90mm F/2.8 Di MACRO
■撮影環境:F14 1/100秒 ISO640 WB太陽光
お手軽に大口径レンズのボケを楽しめる標準レンズでハクチョウのポートレート。F1.4となると被写界深度は極端に浅く、AFでもピント合わせが難しくなるが、美しいボケは一眼レフならではの楽しみだ。
■撮影機材:CANON EOS 6D + EF50mm F1.4 USM
■撮影環境:F1.4 1/4000秒 +0.7EV補正 ISO200 WB太陽光 C-PLフィルター
ヒヨドリがナナカマドの実をついばんでいた。超望遠レンズがあれば、近づきにくい被写体をアップで撮影できる。現在スマホでは撮れない数少ないジャンルでもある。レンズの扱いは難しいが、使いこなせれば世界が広がる。
■撮影機材:CANON EOS 6D + TAMRON SP 150-600mm F5-6.3 Di VC USD G2
■撮影環境:F8 1/1250秒 ISO800 WB太陽光

まとめ

一眼レフを始めてみたいという人にとって旧モデルの中古カメラは大きな選択肢です。画素数が少なめのAPS-Cモデルなら、数千円でボディが手に入るものもあります。性能的にはやや不満を感じることもあると思いますが、ちょっとしたおもちゃ感覚で手に入れることもでき、レンズも1万円台から豊富に揃っています。

写真は写るのが当たり前になった現在、失敗を繰り返しながらいろいろなノウハウを身につけ、写真を勉強していくのは面白いです。

アプリで画像を加工するのではなく、いろいろ考えて自分でカメラを操作しながらシャッターを押した瞬間に作品を完成させる醍醐味を、一眼レフを手にして楽しんでほしいと思います。

 

 

■自然写真家:小林義明
1969年東京生まれ。自然の優しさを捉えた作品を得意とする。現在は北海道に住み、ゆっくりとしずかに自然を見つめながら「いのちの景色」をテーマに撮影。カメラメーカーの写真教室講師などのほか、自主的な勉強会なども開催し自分の視点で撮影できるアマチュアカメラマンの育成も行っている。

 

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