ネイチャースナップのすすめ|格安中古で学ぶ一眼レフの基礎【ピント編】キヤノン EOS Kiss Digital X / Kiss X2

はじめに
最近、昔のコンパクトデジタルカメラ(以下コンデジ)が人気とニュースになっています。一昔前の色味や画質がエモいということですが、コンデジではできることは限られています。最新のカメラは高画質が売りなので、昔の画質でもいいということであれば、せっかくですから一眼レフにも挑戦してみると面白いと思います。
今回は格安の一眼レフを使って写真を楽しんでみようというお話です。

■撮影機材:CANON EOS Kiss X2 + EF-S10-22mm F3.5-4.5 USM
■撮影環境:F11 1/50秒 ISO200 WB太陽光
格安中古で一眼レフを始めてみる
前回の記事では実用的な旧モデルの一眼レフを紹介していますが、ここではさらに格安で楽しめるデジタル一眼を対象とします。具体的には、キヤノンEOS Kiss Digital XやKiss X2といった中古で1万円以下のボディをお勧めしようと思います。この価格帯はセンサーサイズがAPS-Cとなりますが、コンデジより高画質です。
レンズとしては18-55mmと55-250mmといったダブルズームキットだったもので十分です。これらを揃えても、カメラのキタムラネットショップで探すと2万円程度で揃えることができます(2025年4月現在)。まずはこれらのレンズで撮影してみて、自分にとってどんなレンズが必要なのか探っていきましょう。
その他、記録メディアや予備のバッテリーなども必要になると思います。そのあたりはお店と相談してみてください。
Kiss Digital XかKiss X2か
これらの2機種はデジタル一眼レフがやっと一般的になりはじめた頃の入門機で、コンパクトで軽量なうえ十分な機能を持っていて爆発的にヒットしたカメラです。今回はこの2機種をお勧めしていますが、Kiss Digital Xは記録メディアがCFカードで今ではあまり使われていないこともあり、古いカメラのレトロ感を楽しみたい人向けといえるでしょう。
一方でKiss X2は、記録メディアが今の主流となっているSDカードなので最新のカメラにも使え、純粋に一眼レフの基本を学びたい人向けといえます。どちらか迷ったらKiss Digital X2にしておきましょう。

撮影準備
カメラを手に入れたら撮影準備です。バッテリーを充電しカメラに入れたら、メニューの「設定解除」から「カメラ設定初期化」を行います。中古の場合、前のユーザーの設定が残っていることがあります。カメラの初期化を行うことで、カメラを新品状態の設定に戻すことができます。続いて記録メディアを入れたら「カード初期化」をします。日付や時刻も設定しましょう。
最後にファインダーを覗いてみましょう。電源を入れてシャッターボタンに軽く押すと、絞りやシャッター速度などの数値が表示されます。この数字がはっきり読めるように視度調整をします。カメラのピントを肉眼でも確認するために重要な部分なので、きちんとファインダー像が見えるようにしておきましょう。調整してもはっきり文字が読めない場合は、メガネなどで視力を調節する必要があります。
これで撮影準備が整いました。



スマホからのステップアップその1
では、さっそく撮影に入りましょう。
はじめに撮影モードは「P」モードにしてみましょう。「P」モードは絞りもシャッター速度も自動的にカメラが設定してくれます。ISO感度はKiss X2では「オート」に。Kiss Xではオートがないので、ISO400か800にしておきましょう(簡単撮影モードではISO100-400相当で自動設定されます)。これでよほどのことがない限り、真っ白や真っ黒といった露出の失敗はありません。
ここからが本題で、一眼レフを使うためのその1としてAF(オートフォーカス)でピント合わせする方法を覚えましょう。スマホだと被写体にカメラを向ければだいたい撮りたいところにピントを合わせてくれますし、そうではなくても被写体の部分をタッチすればいいのですが、一眼レフでは測距点(AFフレーム)を使います。
ファインダーの中で見えている測距点をピントを合わせたい被写体に重ねて、シャッターボタンを半押しします。半押しというのはAFが動くまで軽く押すことです。ピントが合ったらシャッターボタンをより深く押せば撮影できます。ここまでは簡単ですよね。

でも、格安一眼レフでは測距点が画面全体にあるのではなく、画面の中心付近に数点(機種によっては多いものもある)と限られています。構図によっては被写体と測距点がうまく重ならないこともあります。そんなときには「フォーカスロック」という操作をします。
「フォーカスロック(AFロック)」はAFで一度合わせたピントを固定するものです。被写体と測距点を重ねてシャッターボタンを半押ししてピントを合わせるのはこれまで通りです。ピントが合ったらシャッターボタンを半押ししたまま構図を整え、最後にシャッターボタンを深く押します。これで思い通りの構図で撮影ができます。


■撮影機材:CANON EOS Kiss Digital X + EF-S55-250mm F4-5.6 IS
■撮影環境:F8 1/500秒 +0.7EV補正 ISO100 WB太陽光
基本的にはファインダーの中央にある測距点と被写体を重ねてピントを合わせ、フォーカスロックしながら構図を整えて撮影する、という一連の動きをスムーズにできるようになるのが理想です。
半押しを続けるというのがポイントで、構図を整える時に指が浮いてしまうことが多いため練習が必要です。一度指が浮いてしまうとまたカメラがピントを合わせ直すことになり、意図しない場所にピントが合ってしまいます。
シャッターボタン半押しの動作は、AFの動作以外にもカメラをスリープから復帰させたり、露出計のスイッチを入れるなどカメラ操作の基本とも言えるものですから、自分のカメラで半押しの感覚を覚えるよう練習しましょう。

■撮影機材:CANON EOS Kiss Digital X + EF-S55-250mm F4-5.6 IS
■撮影環境:F11 1/100秒 +0.7EV補正 ISO200 WB太陽光

■撮影機材:CANON EOS Kiss X2 + EF-S55-250mm F4-5.6 IS
■撮影環境:F16 1/100秒 +0.3EV補正 ISO200 WB太陽光
スマホからのステップアップその2
Kiss Digital XとKiss X2はともに測距点が9つあります。カメラの初期設定ではこの9つが自動的に切り替わる「自動選択」になっています。そのため、実際に使っていると中央の測距点でピントを合わせようとしているのに右下の測距点でピントが合ってしまうといったように、思った場所でピントを合わせてくれないことがあるかもしれません。
それでは不便ですから、任意の測距点を1つ選ぶようにします。測距点選択ボタンを押してから十字キーをつかって任意の1点を選びます。基本としては中央1点を使うようにしておくとわかりやすいです。構図を優先する場合は、被写体に一番近い測距点を使うといいでしょう。
将来、より測距点が多いカメラを使うときにはこまめに切り替えて使うことが必要になりますので、いまからきちんと測距点を切り替えて撮影できるように練習していきましょう。





■撮影機材:CANON EOS Kiss Digital X + EF-S55-250mm F4-5.6 IS
■撮影環境:F5.6 1/160秒 ISO100 WB太陽光

■撮影機材:CANON EOS Kiss X2 + EF-S55-250mm F4-5.6 IS
■撮影環境:F6.3 1/200秒 +0.7EV補正 ISO400 WB太陽光

■撮影機材:CANON EOS Kiss Digital X + EF-S18-55mm F3.5-5.6 IS
■撮影環境:F10 1/200秒 ISO100 WB太陽光
スマホからのステップアップその3
便利なAFですが、いつでも信用できるかというとそうでもありません。測距点に重なっているものに対してピントを合わせてくれているはずですが、何を撮影しているかカメラはわかっていないので、測距点で認識しているどこかにピントが合っているという状態です。
よくあるのが、被写体が小さくその後ろにピントが合っているといったものです。フォーカスロックに失敗した時も、意図しない場所にピントが合ってしまいます。

そういった失敗を防ぐために、本当に撮りたいものにピントが合っているかどうか、最終的には自分の目でも確認してからシャッターを切るようにしたいものです。また、どうしてもAFではピントが合わない時や、カメラを自分で操作したいとピント合わせをMF(マニュアルフォーカス)にしたときも、きちんとファインダーが見えている必要があります。
ここではじめに行ったファインダーの視度調整が重要になるのです。
スマホやコンデジと違う使い方として、あえてピンボケにしたい場合にMFにしてどの程度のボケ具合にしたいかを調節するためにもファインダーがちゃんと見えるようにしておくことが大切です。
一眼レフを使いこなすには、カメラ任せではなく、ひとつひとつ自分で確認しながら撮影していく癖をつけていきましょう。

■撮影機材:CANON EOS Kiss X2 + EF-S55-250mm F4-5.6 IS
■撮影環境:F5.6 1/250秒 +1EV補正 ISO320 WB太陽光

■撮影機材:CANON EOS Kiss X2 + EF-S55-250mm F4-5.6 IS
■撮影環境:F6.3 1/160秒 +0.7EV補正 ISO400 WB太陽光

■撮影機材:CANON EOS Kiss X2 + EF-S60mm F2.8 マクロ USM
■撮影環境:F2.8 1/500秒 -1EV補正 ISO200 WB太陽光

■撮影機材:CANON EOS Kiss Digital X + EF-S18-55mm F3.5-5.6 IS
■撮影環境:F3.5 1/1600秒 ISO100 WB太陽光

スマホからのステップアップその4
AFにもモードがあります。基本はシャッターボタンを半押しして、ピントが合うとピント位置が固定される「ONE SHOT」(AF-S、S-AFなどともいう)モードを使います。ピントが合わないとシャッターが切れないので、動いていない被写体を撮影する場合に、確実にピント合わせができるモードとなっています。
ただまったく線がないようなのっぺりした被写体や、極端に暗い時にはAFでピントが合わない場合があります。このときはシャッターを切ることができないので、近くにあるものでピントを合わせたり、MFに切り替えて撮影する必要があります。

もうひとつは「AI SERVO」(AF-C、C-AFともいう)モードで、測距点にある被写体にピントを合わせ続けます。これは、動いている被写体を撮影する時に使います。このモードではピントが合っていなくてもシャッターが切れるので、正確に被写体を追い続けて撮影することが必要です。フォーカスロックは使えません。
Kiss Digital XとKiss X2には「AI FOCUS」というモードもあり、カメラを購入した時の標準設定となっています。これは「ONE SHOT」と「AI SERVO」を自動的に切り替えてくれるものです。ただ、思い通りに切り替わってくれないこともあるので、あらかじめ被写体が動くものか動かないものかわかっている時は、自分でAFモードを切り替えた方が、確実に撮影できます。

■撮影機材:CANON EOS Kiss X2 + EF-S18-55mm F3.5-5.6 IS
■撮影環境:F9 1/200秒 +1EV補正 ISO200 WB太陽光

■撮影機材:CANON EOS Kiss Digital X + TAMRON 18-270mm F/3.5-6.3 Di II VC PZD
■撮影環境:F14 0.8秒 -0.3EV補正 ISO100 WB太陽光

■撮影機材:CANON EOS Kiss Digital X + EF-S55-250mm F4-5.6 IS
■撮影環境:F5.6 1/400秒 ISO100 WB太陽光

■撮影機材:CANON EOS Kiss Digital X + EF-S55-250mm F4-5.6 IS
■撮影環境:F8 1/1600秒 ISO800 WB太陽光

■撮影機材:CANON EOS Kiss Digital X + EF-S55-250mm F4-5.6 IS
■撮影環境:F8 1/1600秒 ISO400 WB太陽光

■撮影機材:CANON EOS Kiss X2 + EF-S18-55mm F3.5-5.6 IS
■撮影環境:F6.3 1/400秒 ISO200 WB太陽光
まとめ
シャッターを押せば簡単に写真が撮れるスマホやコンデジと比べると、一眼レフはいろいろ面倒な操作を覚えないとうまく使うことができません。それは言い換えれば、使いこなすことで思い通りの写真が撮れるようになるということです。
ピントの合っているところは、写真のなかで主役を表す重要なものでもあります。一眼レフはボケを活かせるカメラである反面、ピンボケも起きやすいのです。しっかりと主役にピントを合わせて何を撮ったのかきちんと伝わるようにしましょう。
ひとつひとつの操作の意味を考えながら丁寧に行うことで、自分がどんな写真を撮ろうとしているのかもはっきりしてきます。カメラの操作は写真を意図通りに撮るための儀式とも言えるのです。カメラのボタンなどを見なくても操作できるくらい練習をして、自分の体のようにカメラを扱えるようになりましょう。
■自然写真家:小林義明
1969年東京生まれ。自然の優しさを捉えた作品を得意とする。現在は北海道に住み、ゆっくりとしずかに自然を見つめながら「いのちの景色」をテーマに撮影。カメラメーカーの写真教室講師などのほか、自主的な勉強会なども開催し自分の視点で撮影できるアマチュアカメラマンの育成も行っている。