キヤノン EOS R1|EOSシリーズ「1」伝統の実力をヒコーキ写真で検証

キヤノン EOS R1|EOSシリーズ「1」伝統の実力をヒコーキ写真で検証

はじめに

キヤノンのハイエンドミラーレス一眼シリーズ、EOS Rシステムの頂点に君臨する「EOS R1」が誕生。一眼レフのEOS-1D X Mark IIIの発売から約5年、EOS R3の発売から約3年、同社フラッグシップモデルが待望のデビューを迎えました。フラッグシップモデルを4000万〜5000万画素とする競合機もある中、有効画素数2420万画素としたこのカメラ。脈々と続く同社の「1」(Dsなど除く)伝統の、動体を確実に美しく撮り切るためのスペックとしてきたところに好感を持ちました。

外観と操作性

EOS R1の大きさは約157.6(幅)×149.5(高さ)×87.3(奥行)mm。EOS-1D X Mark IIIに比べて幅はほぼ同一で高さが減り、やや奥行きが増えています。EOS R3と比べると幅と高さが増え、奥行きがほぼ同一になっています。重さは本体のみ(以下同)約920g。EOS-1D X Mark IIIの約1250gより大幅に軽く、EOS R3の約822gよりやや重たくなっています。縦位置グリップ一体型の大きく重厚なエクステリアとは裏腹に「意外と軽いな」というのがはじめて持った時の印象。グリップの張り出しがしっかりあり、握りやすく、重たいレンズと組み合わせて手持ち撮影をしても安定感があり、素早く動く被写体もしっかりと追い続けることができました。

ボタン類の配置はEOS-1D X Mark IIIやEOS R3と大きく変わりはありません。しかし、トップエンドに君臨するカメラだけにその数は多く、様々な配慮がうかがえるところを見ても「1が帰ってきたな…」と思わせてくれます。カードスロットはEOS R3でCFexpress TypeBとSDカードとなっていたところを、CFexpress TypeBの2枚差しに。EOS-1D X Mark IIIと同様に変更されています。

電池はEOS-1D X Mark IIIやEOS R3と同様、LP-E19を使用。寒冷地で長期に渡り使用しましたが、とくに減りがはやいと感じることはありませんでした。エクステリアにはマグネシウム合金を採用。非常に高い剛性と軽量化を両立しています。堅牢性が高く、筆者の場合は大雪や雨の屋外で長時間使用しましたが、まったく問題ありませんでした。相変わらずの信頼性、安心感を頼もしく感じました。

キヤノン公式HPより

AF

■撮影機材:キヤノン EOS R1 + RF600mm F4 L IS USM + EXTENDER RF2x
■撮影環境:ISO800 F11 1/2500sec 焦点距離約1200mm(トリミング) 羽田空港

EOS R1はRシステムのカメラとして初のクロスオートフォーカス(以下AF)を実現。縦線と横線を検出する画素を規則的に配列することにより、トラッキング中でも最大約100%×100%の範囲でクロスAFが可能です。コントラストがあまり無い部分でも素早く正確に食いつくため、大幅な進化をすぐに感じました。大雪の日などは機体の前を降る雪にも機敏に合焦するため、AIサーボの乗り移り特性の設定を再考するほどでした。

被写体認識「飛行機」ももちろん搭載。機体が小さくてもコクピットの窓にフォーカスを合わせようとしてくれます。こちらの作品も、以前はフレームに飛び込む前の機体にONE SHOT AFでフォーカスを合わせ、置きピンのようにして撮影していたシーン。R1では月に画角をあわせ、AIサーボに設定し、機体がフレームインしてきたと同時にシャッターボタンを半押し〜全押しして撮影するという具合に変化しています。ただ、あまりにも慌ただしいので、プリ連写も設定しておくのがオススメ。プリ連写はシャッターボタンを押し込んだタイミングより、最大約20コマさかのぼって記録してくれるという機能です。

連写

■撮影機材:キヤノン EOS R1 + RF15-35mm F2.8 L IS USM
■撮影環境:ISO100 F13 1/1600sec 焦点距離約15mm 旭川空港

連写コマ数は使用レンズなど諸条件はありますが、メカシャッター、電子先幕使用時が最高約12コマ/秒。電子シャッター使用時は最高約40コマ/秒となっています。メカシャッターや電子先幕使用時、電子シャッター使用時ともにEOS R6 Mark IIと同等。しかし、電子シャッター時に連続で撮影できる枚数はR6 Mark IIに比べかなり多くなっています。

R1は積層型センサーの売りである高速読み出しが可能。ローリングシャッター歪みの少ない撮影結果を得ることができるため、R3同様に電子シャッターがデフォルトになっています。電子シャッターによるシャッタースピードの最速は1/64000秒。明るい環境下で絞りを開放で使いたい時などシャッタースピードの設定に冗長性が生まれます。

ブラックアウトフリーで連写中も機体を追いかけやすいのが特徴。デフォルトでは1コマ目のみブラックアウトするので、気になる方はメニューよりブラックアウトフリー表示「ON」を選ぶことにより、最初からブラックアウトしない状態で撮影することができます。

画質1

■撮影機材:キヤノン EOS R1 + RF24-105mm F4 L IS USM
■撮影環境:ISO100 F9 1/640sec 焦点距離約40mm 新千歳空港

センサーはキヤノン社で開発され生産される有効画素数最大約2420万画素の裏面照射積層フルサイズCMOSセンサーを搭載。様々な感度で色々なシーンを撮影してみましたが、高いレベルでバランスのとれたセンサーであることがわかります。裏面照射型のセンサーから生み出される画像はダイナミックレンジの広さも感じることが可能。シャドー部やハイライト部の階調も豊かに描き出してくれます。R1ではGDローパスフィルターを採用。偽色や輝度モアレを抑制しつつ、高い解像感を得ることができます。

画質2

■撮影機材:キヤノン EOS R1 + RF600mm F4 L IS USM + EXTENDER RF1.4x
■撮影環境:ISO6400 F4 1/6sec 焦点距離約840mm 新千歳空港

EOS R1は高感度領域でのノイズ量の少なさとディテールの残り具合のバランスが絶妙。常用感度を静止画の場合ISO100〜102400としていますが、思い切った高感度設定を使いやすくなり、新たな表現領域に踏み出すことができます。さらに、R1はニューラルネットワークノイズ低減を搭載。高感度で撮影された画像をさらに美しい画像へとカメラ内でブラッシュアップすることができます。

カメラ内アップスケーリングにも対応。EOS R1では画像の画素数をそれぞれ縦横2倍に拡大し、約9600万画素の画像をカメラ内で生成することができます。飛行機撮影は、とくに機体に寄った画像などで解像感が肝となる画もあるため、重宝するシーンも少なくありません。現在、R1ではJPEGとHEIF画像のみの対応となるため、個人的にはRAW画像にまで広げてほしい機能といえます。

ニューラルネットワークノイズ低減やアップスケーリングは新たなエンジンシステム、Accelerated Captureシステムのディープラーニング技術により実現。ハード面だけでなく、ソフト面の大幅な進化も感じることができます。

手ブレ補正

■撮影機材:キヤノン EOS R1 + RF70-200mm F2.8 L IS USM
■撮影環境:ISO4000 F2.8 1/20sec 焦点距離70mm 新千歳空港

フェンス際での撮影など手持ち撮影の多いヒコーキ撮影においては手ブレ補正効果も重要ですが、EOS R1ではボディー内5軸手ブレ補正機構を搭載。手ブレ補正機構を搭載したRFレンズとの組み合わせでは、カメラとレンズの協調補正により中央で最大約8.5段、周辺で最大約7.5段の手ブレ補正効果を発揮します。

静止画のスローシャッター使用時、例えば流し撮りの際などにその手ブレ補正効果を実感できますが、動画の手持ち撮影においてもその効果を十分に実感することが可能。夜間や三脚の使用ができない場所などで強い味方となってくれます。

まとめ

■撮影機材:キヤノン EOS R1 + RF70-200mm F2.8 L IS USM
■撮影環境:ISO12800 F3.5 1/20sec 焦点距離200mm 福島空港

フィルム一眼レフ〜デジタル一眼レフ〜ミラーレス一眼とハイエンドカメラの時代も流れてきましたが、現在、実現しうるであろう究極の高速性能で被写体を捕まえ、確実に美しく切り撮ることに特化したスペックは、まさにEOSシリーズの「1」の伝統を受け継ぐもの。確実性と高感度域でも美しいその高画質は、これからも失敗の許されないプロの報道カメラマン、スポーツや野鳥など動きの激しい被写体を撮る写真家の方に支持されてゆくと思います。

ヒコーキ撮影においても、またとない一瞬や難しい瞬間を確実に捉えようとするならR1をおいて他にはありません。究極の一枚を得た時「EOS R1で良かった」と思えるはずです。

 

 

■写真家:A☆50/Akira Igarashi
幼少の頃より山下清画伯に憧れ、またとない一瞬を追い求め全国の空港を放浪する瞬撮系航空写真家。雑誌、WEBなど各種メディアに出演、作品を提供するかたわら大手航空会社やカメラメーカーなどの公式カレンダーやオフィシャル撮影を担当。公益社団法人 日本写真家協会会員。「ニッポン全国空港放浪記」著者。

 

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