キヤノン EOS R5 × スポーツ|中西祐介
はじめに
初めまして。フォトグラファーの中西祐介と申します。今回はスポーツ撮影においてのキヤノンEOS R5レビューを行います。私は様々なスポーツを撮影する機会が多いため、これまで一眼レフのフラッグシップEOS-1D X Mark IIIをメイン機として撮影してきました。
今回、EOS R5を発売と同時に手に入れ、すぐに現場に投入しこれまで使い込んで見えてきた率直な感想をお伝えします。こちらのレビューでは私がライフワークにしている馬術競技を題材に、様々な角度からEOS R5を見て行きます。スポーツ撮影で一眼レフからミラーレスへの切り替えを悩まれている方のご参考になれば幸いです。
スポーツ撮影においてのAF性能
スポーツ撮影で最も大きな要素を占めるのはAF性能です。これまでEOS-1D X Mark IIIを使用しているためどうしても比較したくなります。AF性能で私が重要視しているのは下記になります。
1. AF開始から被写体を捕捉する初動のスピード
2. 継続した動きを追う場合にフォーカスを外してからのリカバリースピード
3. コントラストが低い被写体においての合焦確率
上記3つの点が揃っていれば撮影現場で戦えると思っています。
スポーツは相手が自分の思い通りに動いてくれませんし、撮り直しがきかないシーンがほとんどです。簡単に言えば一発勝負の世界と言えます。いかにイレギュラーな場面でも信頼が置けるのかを私は見ています。
ではR5はどうでしょうか。結論から言うとEOS-1D X Mark IIIと比較して遜色がありません。もちろん細かい部分ではEOS-1D X Mark IIIに及ばない点もありますが、ほぼストレスなく撮影が出来ています。上記3点は難なくクリアしていると言っていいと思います。EOS-1D X Mark IIIに及ばない点としては至近距離での上下左右の動きを捕捉する際にもう少し正確性、スピードアップが欲しいとところですが、こちらは開発発表がされているEOS R3に期待しましょう。
EOS R5ではメニュー画面からAF設定をカスタムできます。EOS-1D X Mark IIIと共通部分が多いので2台を同時に使っても違和感がありません。特にサーボAF特性はよく活用するメニューです。簡単に言えば車のギアを切り替えるようなイメージです。私は初動のスピードが速い方が良いのでCase3を基本にしています。
また一眼レフに比べてAFエリアがとても広いのもミラーレスのメリットです。一眼レフではファインダー中央付近に測距離エリアが固まるため、フォーカスエリア優先でその次にフレーミングとなるケースが多くありました。AFエリアの上に被写体が来なければフォーカスできないからです。
さらに瞳AFの使い勝手も私の想像以上でした。スポーツでは瞳AFは使えないだろうと思っていましたが、頭部認識にも対応しているため、ヘルメットや後ろ姿にも反応するようになり、競技によっては80パーセント以上瞳AF機能を使用して撮影しています。顔によれば瞳を検知し、引いていくと顔認識に切り替わりながら追い続けてくれます。瞳の検知する被写体を人物と動物で選択可能です。動物は種類によって眼の形や位置が違うため、得意な動物、苦手な動物がいるようです。今回の馬については横顔が正面かによって合焦確率が違いました。横顔の方が少し苦手かなという印象です。
もちろんEOS-1D X Mark III同様にAFエリアを1点から領域拡大、ゾーンAFと選択が可能です。私は一番よく使うのは1点プラス上下左右をアシストしてくれる領域拡大をデフォルトにしています。
動き続ける被写体を撮る場合、常にピントが合っている状態ではありません。フォーカスを外してしまうこともよくあります。そんな時にいかに素早く被写体にフォーカスを戻せるかのリカバリーする力も重要です。リカバリーする力が強くなければスポーツ撮影では使えません。その点もEOS R5はとても優秀でした。明るさが暗い場面、コントラストが低い雨天や曇天の日でもAFのスピードや正確性は快適な撮影環境をもたらしてくれます。
馬術では様々な被写体の動きをカバーしなくてはなりません。こちらに真っ直ぐに向かってくる直線の動き、障害物を飛越する上下の動き、それに加えて左右への動きもあります。また撮影場所から被写体までの距離も近い場所から遠い場所まで、次々に異なるシーンがやってきます。
同時に私が予測した動きと違うスピード、ルートで向かってくることもあります。そんな時は瞬時に相手の動きを見ながら次の予測をしてカメラを構えフレーミングをしてシャッターを切ります。そんな状況でもしっかりとついてきてくれるのは頼もしいです。
高い解像力、高感度性能
EOS R5を使う理由の一つに高い解像力があります。以前からAFが強くてスポーツに使える高画素、高解像度のカメラが必要と思っていました。主に広告媒体のような大きな印刷物や将来的に写真展などを目指す場合の作品撮影には必要な条件だったのです。
EOS R5を手にいれた数日後に大きな広告撮影プロジェクトがあり、その現場ではEOS R5がとても重要な役割を果たしました。有効画素数約4500万画素フルサイズCMOSセンサー、映像エンジン「DIGIC X」が作り出す映像はパソコンモニターにて等倍で確認する度に細かい質感まで忠実に再現してくれています。本当にすごいの一言です。他のカメラではこの感触は得られません。馬の肌の質感や現場で感じた光の色や匂いまでしっかり写真の中に落とし込んでくれます。もちろんEOS R5の解像度をフルに発揮するためにはRFレンズとの組み合わせが必須です。アダプターを使用してEFレンズを使用することもできますが、私はRFレンズをお勧めします。
また、広角レンズでメインの被写体を小さめに配置して風景の中に人馬がいる写真は、隅から隅までしっかり解像していることを求めるため、他のカメラでは代用がきかないと思っています。
高感度性能も魅力です。私は用途によって変えますが、基本はISO8000を上限にしています。場合によっては更なる高感度にすることもあります。特にナイター照明や屋内競技は想像以上に明るくないことが多くあります。被写体の動きを止めるために高速シャッターを切るためにはどうしてもISO感度を上げます。光の回り具合や条件によって変化しますがISO8000は十分実用範囲内と思って使っています。
快適な操作性
ここまでAF性能、高解像力、高感度についてお伝えしてきましたが操作性についても触れて行きたいと思います。どんなに高いハード面があっても操作性が悪ければ使い勝手に直結します。操作部分で私が一番大事だと思うのはボタンとダイヤル、マルチコントローラーです。ボタンの配置やダイヤルの使い勝手は快適です。EOS-1D X Mark IIIと併用していても違和感はありません。強いていうなら背面にあるサブ電子ダイヤルがもう少し大きければと思いますが……
スポーツ撮影で特に重要なのは、AFフレームを動かすマルチコントローラーではないでしょうか。メニュー画面のボタンカスタマイズでAFフレームダイレクトを選択すれば、他のボタンに触れることなくAFエリアを動かすことが出来ます。また、フォーカスエリアが素早く動いてくれるので被写体の動きを追いながらでもストレスがありません。
カメラを構えてほとんどのボタンが右側に集中していますので、右手でほとんどの操作が完了できます。撮影に入ったら少しでも余計な操作は省き撮影に集中したいところです。そういった点でもEOS R5はよく出来たカメラだと思います。RFレンズやコントロールリング付きアダプターを使えばコントロールリングに操作の割り当てが可能です。
まとめ(実践で使えるのか)
色々な観点からEOS R5を見てきましたが、正直に言ってスポーツに使えるカメラなのかというご質問をよくお聞きします。
私の率直な感想は「使えるカメラ」です。実際に私はスポーツの現場で使用しています。現在はEOS-1D X Mark IIIと併用しながら競技によってEOS R5をメインにすることが増えました。現時点では70パーセント以上がEOS R5をメイン機にしています。ミラーレスはシャッター音が小さいことも大きなメリット、音を出せないシーンもあるのでそんな時は電子シャッターを使います。
トータルバランスに優れているも大きな特徴です。これからますますEOS R5でシャッターを切ることが増えそうです。
■写真家:中西祐介
1979年東京生まれ 東京工芸大学芸術学部写真学科卒業。講談社写真部、フォトエージェンシーであるアフロスポーツを経てフリーランスフォトグラファーに。夏季オリンピック、冬季オリンピック等スポーツ取材経験多数。スポーツ媒体への原稿執筆、写真ワークショップや大学での講師も行う。現在はライフワークとして馬術競技に関わる人馬を中心とした「馬と人」をテーマに作品制作を行う。
・日本スポーツプレス協会会員
・国際スポーツプレス協会会員
~「EOS R5」はこちらの記事でも紹介されています~
キヤノン EOS R5 レビュー|スチールも、ムービーも、ポートレートが俄然楽しくなる一台
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https://www.kitamura.jp/shasha/canon/eos-r5-20210710/
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写真家:村上悠太
https://www.kitamura.jp/shasha/canon/eos-r5-3-20210217/
■更新
・2021年7月 7日:冒頭にキヤノンプロカメラマンセミナーの告知を追加しました。
・2021年7月19日:セミナー終了に伴い該当の告知を削除しました。