キヤノン EOS R5 レビュー|スチールも、ムービーも、ポートレートが俄然楽しくなる一台
はじめに
2020年7月30日に発売となったキヤノンのフルサイズミラーレスカメラ「EOS R5」。今回は、EOS R5を使ったポートレート撮影で、本機の魅力をご紹介します。撮影日は、天気が良い日ではありませんでしたが、湿度ある空気感もまたいいなと思いながら撮影しました。
EFマウントのレンズを活かせる
筆者は、ずっとEOS 5Dシリーズを仕事用のカメラとして使い続けてきました。EOS R5に替えて良かったと思うことのひとつに、「マウントアダプター EF-EOS R」をつければ、EFマウントのレンズをEOS R5に装着できる点があります。
写真家にとって、何よりも大切な「作風」。それは、機材がもたらしてくれる場合も多くあります。筆者にも「自分らしい」と思う写真を撮るために欠かせないレンズが何本かありますが、それらはいずれもEFマウントのレンズです。写真家は、自分らしい表現ができるレンズに合わせて他の環境を整えていくのが通常なので、急に新しいカメラやレンズを導入すると、戸惑ってしまうことがあります。筆者は、最新のボディーであるEOS R5に、自分らしい表現のできるEFマウントのレンズを装着できるところが大変ありがたいと思っています。
そこで今回は、大好きなEFマウントのレンズと、RFマウントのレンズを混ぜて使ってみました。
EOS R5×シグマ 50mm F1.4 DG HSM|Art
ポートレート撮影で頻繁に使うレンズは2本あります。そのうちの1本が、シグマ 50mm F1.4 DG HSM|Artです。画角的に大変使いやすく、寄ってよし、引いてよしの万能レンズです。スチールも動画も、この1本で撮影を完結することがあるくらいです。ピントが合っている面はかなりシャープに写っていますが、光の選び方によってはフワっと柔らかい描写にもなるので気に入っています。
EOS R5×タムロン SP 85mm F/1.8 Di VC USD (Model F016)
よく使うレンズのうちもう1本は、タムロン SP 85mm F/1.8 Di VC USD(Model F016)です。「自分らしい」描写という意味では、ナンバーワンのレンズです。歪みが少なく、背景も大きくボケるので、ポートレートでモデルさんをしっかり捉えたいときに使っています。
ボケは甘さを感じさせない程度にやわらかく、いつも写真に優しさを添えてくれているような気がします。筆者が撮影したポートレートはどこかソフトな感じがしますが、それはこのレンズの個性から来ているように思います。いずれのレンズも、EOS R5に装着して使うようになってから、高精度なAFのおかげできっちりとピントを合わせられるようになったので、EOS 5Dに装着していた頃よりも重宝しています。レンズ資産を活かせるEOS R5、本当にありがたいです。
EOS R5×キヤノン RF15-35mm F2.8 L IS USM
ポートレート撮影で最近よく使うのは、キヤノン RF15-35mm F2.8 L IS USMです。35mm判換算で焦点距離50mmや85mmの写真だけだと、ちょっと画角が狭いような気がしてしまいます。そんなときにRF15-35mm F2.8 L IS USMを使うと、パースの効いた一枚が撮れるので、組写真にしたときに緩急をつけられます。
また、このレンズはRFマウントゆえEOS R5との相性がとても良く、AFは精度も速度も優れています。フレーム内で人物の顔が非常に小さく写っていたとしても、しっかりと顔にピントが合います。カメラ内レンズ光学補正によって歪曲収差はかなり抑えられるので、広角レンズだとあまり意識せずに使えます。ただ、広角側でぐっと寄りすぎるとさすがに歪みが目立ってしまうので、特にポートレートでは注意が必要です。
シャッタースピードが遅くても安心な手ブレ補正効果
EOS R5にはEOS初の、ボディー内5軸手ブレ補正機構が搭載されています。IS非搭載のレンズと組み合せた場合でも広角側から望遠側まで最適な5軸手ブレ補正が効くので、EFマウントのレンズを使ったときでも手ブレ補正の恩恵を受けることができます。EOS 5DシリーズやEOS Rのときよりも、撮影していて「ピタッ」と止まる感触があるので、シャッタースピードが遅くても安心して撮影できるようになりました。
上の写真のように、暗いトンネルの中でシャッタースピードが低速になっても、安心して撮れます。手ブレ補正機構によって、納得できる写真が撮れる割合も過去と比べて、びっくりするぐらい上がりました。
ポートレートに心強い高速・高精度なAF
EOS R5のAF精度は、EOS Rよりも格段に速く、そして高精度になったように思います。特に人物検出の精度は信頼に値するレベルで、フレーム内で人物の顔が小さくなってしまった場合でも、しっかりと検出してくれます。そのため、EOS R5を使うようになってから、ピント合わせはカメラにほぼおまかせ状態です。結果として、より良い画作りに集中できるようになりました。
上の写真のようにレンズと被写体の間に傘があるような場合でも、液晶モニター上で人物をタッチすれば、すぐにピントを合わせられます。ピント合わせに関しては相当ストレスフリーなカメラだと言えます。
また、EVFもかなり見やすく、雨の日の繊細な光もEVF越しにきちんと捉えることができました。
EOS 5Dシリーズの操作系を継承
EOS R5は、EOSの上位機種の操作系を継承しているところがありがたいです。筆者は仕事柄、EOS R5とEOS 5D Mark IVを併用して撮影することがあります。そんなときに、どちらの機種でも慣れ親しんだ操作ができるので、カメラが変わっても手間取ることなく、画作りに集中できます。
雨の日もへっちゃらな防塵・防滴構造
EOS R5のボディーには防塵・防滴構造が施されています。動きが制限されてしまうので、筆者は雨の日でも撮影時にあまり傘を差しません。しかし、今回のような雨の日でも、防塵・防滴構造のおかげでカメラが濡れることを気にせずに撮れてありがたいです。ちなみに、過去にEOS R5で何度も豪雨の中撮影をしましたが、不具合を起こしたことは一度もありません。
ロー・ハイアングルが楽になるバリアングルモニター
バリアングルモニターにもよく助けられています。上の写真のようなローアングルでも、バリアングルモニターで画角を確認しながら撮影できます。また、筆者はあまり身長が高くありませんが、そんな筆者でもバリアングルモニターを下に向けて腕を上げれば、楽にハイアングルで撮影することができます。
スチールのように撮れるムービー
上の動画は、4K DCI(4096×2160)/29.97fps/IPB/Canon Logに設定して撮影しました。個人的にはこの設定をよく使います。カメラも熱くなりすぎず、ある程度長時間撮れるからです。この設定だと、自身のスチールの雰囲気のまま映像が撮れるので、EOS R5に変えてから俄然動画撮影の意欲が湧くようになりました。
また、この日は雨だったのでジンバルを使わず手持ちで撮影しました。動画撮影でも強力な手ブレ補正が効いている印象です。雨の日の雰囲気と女性のしっとりした感じが伝わったら嬉しいです。
まとめ
EOS R5はポートレートのスチール・動画撮影ともに向いているカメラだと思います。最新のレンズを使用しても良いですし、EFマウントのレンズをお持ちの方はその資産を活かせばより良い作品をつくれます。
カメラをEOS R5に替えてから、撮影が楽しくて仕方がありません。正直、もう1台欲しいと思える、そんなカメラです。
■写真家:大村祐里子
1983年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒。クラシックカメラショップの店員を経て、写真の道へ。福島裕二氏に師事後、人物撮影をメインとし、雑誌・書籍・Webでの撮影・執筆など、さまざまなジャンルで活動中。
趣味はフィルムカメラを集めて、使うこと。 2020年3月に『フィルムカメラ・スタートブック』(玄光社)を出版。
「EOS R5」はこちらの記事でも紹介されています
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https://www.kitamura.jp/shasha/canon/eos-r5-2-20210617/
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https://www.kitamura.jp/shasha/canon/eos-r5-3-20210217/