キヤノン EOS R5|航空写真家がスチル&ムービーで徹底レビュー

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はじめに

 キヤノンのミラーレス一眼システムのひとつ、EOS RFシステムに待望の「5」が誕生しました。EOS R5は人気のデジタル一眼レフカメラ、EOS 5Dシリーズの流れを汲んだ高画素機。「5」というと三脚にガッツリとカメラを据え付けじっくりと風景写真を撮る…というイメージもありましたが、今回のEOS R5はシャッターの秒間コマ数や手ブレ補正の段数などの秀逸さを見ても、かなり動きモノに対応してきたなという印象を持ちました。そこで、動きモノである飛行機撮影においてEOS R5を徹底インプレッション。スチルだけでなくムービーについても、その劇的な進化をレビューします。

画素数&センサー

キヤノン R5で撮影した航空機_A50_001.jpg
■撮影機材:EOS R5 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:ISO100 F11 8sec 焦点距離135mm

 まずはスチル撮影にてそのポテンシャルを確認。EOS R5では新開発の有効画素数約4500万画素のフルサイズCMOSセンサーを搭載。EOS 5D MarkⅣが有効画素数約3040万画素、EOS Rが有効画素数約3030万画素なので、これらに比べおよそ約1.5倍の画素数を誇ります。その恩恵はまず飛行機撮影においては重要視されるディテール部分に表れますが、この写真でもドア付近の小さな文字やコックピットウインドウのリベット(鋲)部分まで精細に描き出されています。WEB上の軽い画像では分かりづらいですが、もう少しコックピットウインドウに寄った画になるとコックピットウインドウのリベット(鋲)のアタマがプラスドライバー対応であることまで分かります。

 ダイナミックレンジにおいても著しい進化が見られます。この写真ではボディ右側から照明を浴びていますが、ハイライト部分からシャドー部分に至る階調の滑らかさや豊かさに驚かされました。ローパスフィルターにて偽色やモアレが軽減されていますが、解像感のトレードオフもほとんど感じられません。ズームレンズで撮影された画にも関わらず単焦点レンズで撮影されたかのような空気感、解像感を得ることができました。

高感度

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■撮影機材:EOS R5 + RF24-105mm F4 L IS USM
■撮影環境:ISO6400 F4 1/1250sec 焦点距離47mm

 EOS R5の常用最高ISO感度は51200。有効画素数約4500万画素を誇る高画素機であるがゆえ高感度撮影において一抹の不安を感じていましたが、輝度ノイズ、カラーノイズともに高画素機にしてはかなりノイズが抑えられています。このあたりはセンサー性能とともに映像エンジンDIGIC Xの性能が大きく寄与している印象。写真はISO6400で撮影しましたが、機体のディテールがしっかりと残っています。

AF

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■撮影機材:EOS R5 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:ISO200 F8 1/1000sec 焦点距離500mm

 像面位相差AFの進化は日進月歩。ご多分に漏れずEOS R5のAFも目覚ましい進化を遂げています。飛行機撮影において一眼レフよりもミラーレス一眼が優れている点としてよく挙げるのが、ファインダー撮影時の測距可能エリアの広さ。機首部分などフォーカスを合わせたい場所が画面隅にくることが珍しくない飛行機撮影においては、この測距可能エリアの広さが重宝されます。EOS R5では顔+追尾優先AF使用で画面の最大約100%(縦)x約100%(横)を達成。対象レンズによるが、全画面でのAFを実現しています。1点AFや領域拡大、ラージゾーンなども設定可能で、この場合は対象レンズでないことやエクステンダー非装着など条件もありますが、画面の約100%(縦)x約90%(横)となります。測距輝度範囲は低輝度限界EV-6を達成。夜空の鈍く光る星でさえすぐに合焦したのには驚きました。約576万ドットの高精細0.5型EVFも優秀。ピントの山を非常につかみやすくなっています。

手ブレ補正

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■撮影機材:EOS R5 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:ISO100 F11 1/100sec 焦点距離500mm ※1.6倍クロップ使用

 EOS R5の目玉機能のひとつが強力に効く手ブレ補正機構。EOSシリーズとして初めてボディ内手ブレ補正機構が搭載されました。レンズにもよりますが、レンズに搭載された手ブレ補正機構(IS)との協調制御により最大8段分の補正効果を発揮。これだけの高画素機ですし、手持ち撮影の多い飛行機撮影ですから待望の機能が搭載されたとえいます。最も効果がわかりやすいのが駐機している機体の手持ち撮影。以前は三脚を使って長秒時露光で撮っていたシーンも手持ちで撮れる機会が増えました。動かない機体なら何秒というシャッタースピードでの手持ち撮影も視野に入るほど。シャッタースピードを上げられない中、せっかくの高画素機なのでISOを下げて積極的に高画質な写真を狙えるようになりました。こちらの写真も以前であればシャッタースピードを1/320くらいに設定し、ISOを800あたりにするか絞りを開放近くにして手持ち撮影しているところ。これが1/100で撮れるのですから嬉しいですよね。

連写

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■撮影機材:EOS R5 + EF600mm F4L IS Ⅱ USM x EX2
■撮影環境:ISO3200 F9 1/1600 焦点距離1200mm ※トリミング

 EOS R5は高画素機でありながら、カード書き込み性能などの高速化により電子シャッター使用時は最高約20コマ/秒、メカシャッターや電子先幕使用時は最高約12コマ/秒の高速連続撮影を実現。写真のように月にフォーカスを合わせ機体が超高速で横切るのを待つようなシチュエーションでは、秒間コマ数の多さに非常に助けられます。この写真では電子シャッターを使用し撮影。最高約20コマ/秒の性能をフルに出すには、絞り開放であることなど条件によるようだが、かなり高速連続撮影ができたため機体を真ん中にとらえることができました。

 ちなみにこの写真のように月と機体のサイズがほぼ同一で、超高速で機体が横切るようなシチュエーションである場合が、最もど真ん中に機体を止めることが難しくなります。逆に画面の中で機体が大きく月が小さい場合や、逆に月に対して機体のサイズが豆粒のような時、機体が真正面や真後ろに進んでいる場合などはそこまでコマ数がなくともOKですし難易度も下がります。

 ミラーレス一眼で写真のようなシチュエーションで撮る場合、EVFや背面液晶を見て月に機体が飛び込んでからシャッターを押していては間に合いません。一眼レフ機のOVFと違い「今」を映しているわけではないので、機体が飛び込みそうだと認識したら月に飛び込む前から連写を開始するのが成功の秘訣となります。

動画(記録画質の豊富さ)

■撮影機材:EOS R5 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:ISO100 F9 1/125sec NDフィルター使用 4K/120P ALL-i

 スチルカメラとしての扱いながらムービーについても妥協の無い尖った性能を持つのがEOS R5の特徴。さすがは「5」の系譜、スチルカメラながらその動画性能が多くの動画クリエーターの注目を浴びたEOS 5D MarkⅡの誕生を思い出しました。2020年7月現在、世界初となる8K/30Pでの動画撮影を実現するなど出し惜しみ一切ナシ。8.2Kオーバーサンプリング処理による、4K高画質動画や4K/119.88fpsでの撮影も可能となっています。動画記録サイズは8Kや4K、FHDを選べ、フレームレートや映像圧縮方式も選択可能。撮影するシチュエーションによって色々と組み合わせることができます。その他、8Kタイムラプス動画なども撮影可能。8K動画の1フレームを切り出し約3540万画素の画像として切り出すこともできます。

動画(AF)

■撮影機材:EOS R5 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
■撮影環境:ISO100 F13 1/60sec NDフィルター使用 4K/60P IPB

 AF方式はスチル撮影と同様に顔+追尾優先AFやゾーンAFなど色々と選択できます。機体真横を画面いっぱいに入れて追いかける場合はラージゾーンAF(横)、機体に寄って精密にコックピットウインドウにフォーカスを合わせたい場合はスポット1点にするなど、撮影シーンに応じて変更できるのが嬉しいです。サンプル動画のような離陸機を追いかける場合、肝となるのが動画サーボAFの性能ですが、一度つかまえたら離さない優秀なもの。動画サーボAFはカスタマイズできるのが特徴で、飛行機撮影においてはAF速度を上限の「速い(+2)」にし、機体の前に照明灯などが横切ってもそちらにフォーカスが持っていかれないように「粘る方向に(-2)」としました。

動画(高感度とその他性能)

■撮影機材:EOS R5 + RF24-105mm F4 L IS USM
■撮影環境:ISO16000 F4 1/60sec 4K/60P IPB

 今回はEOS R5の「素」の状態での撮影をテストするため、外部モニターやマイク、それにウインドウジャマー(ふさふさの風防)も装着せず三脚と雲台にカメラとレンズを装着して撮影。ほぼネイキッド状態での動画撮影としましたが、やはり機体を追いかけるような撮影では外部モニターがあった方が撮影しやすく、風の強い日はやはり外部マイクとウインドウジャマーの必要性を感じました。ただ、カメラを固定して撮影する際にはEVFや背面液晶で十分だと感じる場面も多く、またウインドウカット機能が装備されているので少々の風はカメラ側が制御してくれていることも感じることができました。この動画では高感度性能をテストしていますが、Web上で観賞するくらいの大きさであればISO16000でも十分。常用ISO感度25600までゲインしてもこの大きさではほぼディテールの損失を感じませんし、夜空の質感がここまで表現されるのかと感動しました。機体の強い光を真正面から浴びているためさすがにフレアが出ていますが、これは動画らしく動きを表現できているのでOK。レンズにある絞り羽根由来の光芒が美しく表現されているのもご覧頂けるかと思います。

まとめ

 EOS R5はキヤノン社がフルサイズミラーレス一眼のRFシステムにかなり情熱を注いでいることが確認できるカメラです。スチル、ムービーともにハイスペックな機能が惜しみなく投じられていますし、同社の未だ主力商品のひとつである一眼レフカメラシステムへの遠慮が見られない、はじめてのフルサイズミラーレス一眼カメラと言っても過言ではありません。

 冒頭でも述べましたが「5」シリーズというと風景など静物撮りのイメージもありますが、飛行機撮影など動きモノにも気兼ねなく投入できるカメラです。ISO100でバチッと撮れた画はまさに圧巻。その空気感、精細感に驚かれる方が多いのではないかと思います。先進的なスペックを持つムービーに関しても同様。バリエーション豊かな設定をシーンや目的に応じて細かく変更できるのが魅力です。スチル、ムービーともに「新しい世界」を見られるカメラですね。

■写真家:A☆50/Akira Igarashi
一瞬を切り撮ることを目的とする瞬撮系航空写真家。雑誌、WEB、テレビなど各種メディアに作品を提供するかたわら、航空会社やカメラメーカーなどの公式撮影も担当。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員。
・EOS学園講師

「EOS R5」はこちらの記事でも紹介されています

キヤノン EOS R5 レビュー|スチールも、ムービーも、ポートレートが俄然楽しくなる一台
写真家:大村祐里子
https://www.kitamura.jp/shasha/canon/eos-r5-20210710/

キヤノン EOS R5 × スポーツ|中西祐介
写真家:中西祐介
https://www.kitamura.jp/shasha/canon/eos-r5-2-20210617/

キヤノン EOS R5 × 鉄道写真|村上悠太
写真家:村上悠太
https://www.kitamura.jp/shasha/canon/eos-r5-3-20210217/

EOS R5・R6と他のカメラを比較

 「EOS R5・R6」と「EOS R」、「ソニー α7R IV」、「ソニー α7 III」の価格や主要なスペックの比較表をこちらのページで紹介していますので是非ご覧ください。

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