ステップアップしたいライトユーザーにもおすすめ|さらに多彩な機能を搭載したキヤノン EOS R6 Mark II
はじめに
今回ご紹介するのはキヤノンのEOS R6 Mark IIです。2020年に発売されたEOS R6の後継機で、EOS Rシリーズでは初となる第二世代のカメラになります。2年という比較的短いスパンで登場したEOS R6 Mark IIですが、旧モデルの良さを踏襲しつつ、しっかりとした進化を遂げています。
デザイン・仕様
高さ98.4mm、幅138.4mm、奥行き88.4mm、重さは約670g(バッテリーとカード含む)と旧モデルとほぼ同等のサイズ感です。EOS R6と比べて大きく変わったのは電源スイッチの位置で、サブ電子ダイヤル2と同軸に設置されました。更に前機種では独立していたマルチ電子ロックボタン(LOCK)が統合されています。マルチ電子ロックボタンは撮影中に意図しない設定変更を防ぐことを目的としているため、電源を入れる流れでLOCKに移行できるのは設定を固定して撮影する人にとってはありがたい変更点かもしれません。
この電源スイッチの位置変更に伴ってEOS R6の電源スイッチがあったカメラ上部左側は、静止画撮影/動画撮影切り換えスイッチに変更となりました。前機種ではモードダイヤルに搭載されていた動画切り替えが独立したスイッチになるというのは動画撮影への意気込みを感じさせますね。
ただし、EOS R6を使っていた人にとってはこのスイッチ位置の変更は操作性で最も戸惑うポイントかもしれません。実際、私自身がこれまでの習慣で電源を切ったつもりで動画モードに切り換えていただけということがかなり高頻度でありました。ですがこれに関しては使っていくうちに慣れていきますし、慣れると右手の操作のみで撮影に関連する設定変更がほぼ完結するので、操作性のスリム化としては実に合理的な変更であることを実感してもらえるでしょう。
モードダイヤルには新たに露出の値を自動、もしくは任意で設定できるFv(フレキシブルAE)や、さまざまな撮影シーンに合った設定を備えたSCNモード、スチールと同時にダイジェスト動画も記録するプラスムービーオート、多彩な世界観が楽しめるクリエイティブフィルターなどが搭載されました。これらはミドルクラスのモデルに搭載されている機能で、上位モデルではEOS R6 Mark IIが初搭載となります。
ボディ背面のボタン位置は特に変更はありませんが、ジョグダイヤルの形状が多少変わり、指当たりがソフトになったのは好印象です。
バランスの取れた画素数と高感度性能
EOS R6 Mark IIは2420万画素のCMOSセンサーを搭載しており、前モデルより約2割増しになっています。画素が上がると高感度撮影時のノイズが気になる人もいるでしょうが、EOS R6 Mark IIの高感度性能は非常に優秀といった印象を受けました。ノイズを感じさせない高感度時のなめらかな描写と、更に洗練された解像感とのマッチングによって気持ちの良い撮影結果を得られます。
お寺の境内にある大きな香炉に供えられたお線香を撮影しました。風にくゆる煙を捉えるために速めのシャッタースピードを選択したため、ISO8000とかなり高感度での撮影になりましたが、お線香の背後のシャドウ部や手前の前ボケなどにもノイズ感は一切なく、逆光に光る灰の質感もとてもなめらかに再現できました。
より細分化しつつ、精度も上がった被写体検出機能
これまで「人物」、犬・猫・鳥が対象だった「動物優先」、車・バイクが対象だった「乗り物優先」と大きく三つに分かれていた被写体検出機能ですが、EOS R6 Mark IIでは更に動物優先に「馬」が、乗り物優先に「鉄道・飛行機」が追加されました。更にそれら全検出対象をカメラが判別する「自動」も加わったことで、日常的なスナップ時の予期せぬ出会いも逃さず捉えられる確率が格段に高くなりました。
近所の馬事公苑にある馬の銅像で新しくなった「動物優先」をテスト。馬独特の顔の作りにも、しっかり瞳にフォーカスしてくれました。本物の馬でこの距離と位置で狙うのはとても無理ですが、そこは銅像だからこそということで。
深夜にキッチンカウンターに上ってモビールをロックオンしている次男猫を撮りました。背景が少し散らかっていたので目隠しがわりに露出をかなり落とした低輝度な撮影条件でも、しっかり瞳を捉えてくれました。またレンズとの8段分の協調ISのおかげで手ブレの心配も全くありませんでした。
プリンターの排紙トレイの下に陣取った次男猫。手前に障害物がある条件でしたが、かなり細かい格子状のトレイの存在も物ともせず、補足してくれました。
窓辺で2匹でくつろいでいたかと思ったら突然のジャンプ。とっさのことでしたが、瞬時に飛び越えられる長男の方にフォーカスポイントが移動したことで決定的瞬間を逃さず捉えることができました。
クリエイティブフィルターで日常をアートに
新たにモードダイヤルに加わった「クリエイティブフィルター」はEOS Kiss Mシリーズなどをお使いの方には馴染みが深い存在ではないでしょうか?これまでこれらのモードはエントリー機を中心に搭載されており、ハイエンドモデルに位置するEOS R6 Mark IIに搭載されたのは正直驚きでした。ですが、10種類の個性的なフィルターを通して見るといつもの日常も時にドラマティックに、時に絵本の中のような世界に変身させてくれる面白さがありました。
昼下がりのカフェで一休み中、真っ白な壁を前に何気なくキツネのポーズを「ラフモノクロ」で撮影。うららかな春の陽射しが差し込む店内が一気に不穏な雰囲気に変わってしまいました。
自宅のモビールを「水彩風」で撮影。物の輪郭はラインを引いたようにクッキリと描写され、水彩絵具で描いたようなやさしい色調にアクセントを添えています。いつもの我が家がまるで絵本のワンシーンのようになりました。
やわらかくも芯のある心地良い解像感
EOS R6 Mark IIを使い始めて一番違いを感じたのは解像感です。新しい35mmフルサイズCMOSセンサーを搭載したことで旧モデルに比べて画素数が上がったことも理由のひとつですが、新シャープネス処理によりEOS 5D Mark IV(約3040万画素)を凌ぐ解像性能を達成したと言われています。その良さを最も実感したのは、絞りを開けて撮影した時のボケのやわらかさと、芯のあるピントのシャープさの絶妙なバランスの取れた描写でした。自分の視力が良くなったのかと錯覚するほどのクリアな空気感は、EOS R6を超える一番の進化ポイントと言えると思います。
F1.8で捉えたヒゲの描写のコントラストが美しかったです。
ようやく満開に近付いた桜を撮りに行きました。手前の花びらのボケ具合も美しかったですが、桜の幹の質感には目を見張るものがありました。
19世紀に誕生したレンズがRFマウントで復刻しました。やわらかなボケが特長のレンズですが、EOS R6 Mark IIの解像感と組み合わさることでより深みのある描写を実現してくれました。
※こちらのレンズはキヤノンとライセンス契約を結んでおらず、レンズ側で設定する絞りの情報は画像に記録されないため「F0.0」と表記しています。
さいごに
前機種発売から約2年という短いスパンで発売されたEOS R6 Mark IIにマイナーチェンジでは?と感じる人もいるかもしれません。ですが、より多くの被写体をカバーできるようになった被写体検出機能の充実や、電子シャッター時の高速連続撮影のコマ数やシャッター速度の進化は動体撮影をする人の選択肢の幅を広げてくれますし、SCNモードやクリエイティブフィルターなどを搭載したことで、これらを楽しんでいるライトなユーザー層にもハイエンドモデルの魅力に触れるきっかけを作ったと言えるでしょう。決して気軽に購入を決められる値段ではありませんが、これから更に充実してくるRFレンズの良さを引き出すのにEOS R6 Mark IIの描写力は欠かせない存在になると思います。
■写真家:金森玲奈
1979年東京生まれ。東京工芸大学芸術学部写真学科卒業。東京藝術大学美術学部附属写真センター勤務等を経て2011年からフリーランスとして活動を開始。日常の中で記憶からこぼれ落ちていく何気ない瞬間や怪我と障害がきっかけで引き取った2匹の飼い猫との日々を撮り続けている。